ゆっくり冷静に判断

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 世の中、森友学園の件で大騒ぎなのだが、何度となく役人と交渉した経験からすればあのスムースな認可はまずあり得ない。役人側に何らかの圧力があったとしか思えない状況である。とはいえ、状況証拠では政治家は捕捉できない。現権力者であればなおさらである。最初にこの事件を聞いた時、森元総理が関わっているのかと思ってしまったが、森元ではなく森友だった。失礼しました。この話については、今しばらく情報のチェックを続けるとして、チョットだけ他の件で書いてみたい。

 世の中、不可解な事件がいくつもある。解決していないというか、事件があったことさえ消えかけている事件である。私は色々な事件が起こった時、あまり拙速な判断はしないことにしている。森友事件の報道は今の所まだ少なく、マレーシアでの金正男殺人事件がTVだけでなく新聞を騒がせているが、殺人の方法、VX、ドッキリTVの真似などと騒ぐ前に、被害者が本人かどうかの確認が先決であろう。タイの新国王が派手な入れ墨をしているが、金正男氏もそうではなかったか?倒れている被害者の腹には入れ墨はなさそうである。まあ、こんなことはネットにも書いてあるだろう。それからVX、引きのいいドラフトと防護用の装備は必要でしょうが、純度の問題を抜きにすれば、さほどの腕がなくても合成できるのでは。原料は某試薬会社で売っています。国家的バックアップがないと作れないと決めつける方が、推論の自由度を損なうでしょうね。

 キアッソ米国債事件、こう言われてああそうかとわかる人はあまりいないが、2009年6月3日イタリアとスイス国境にあるキアッソ駅を経由して、スイスへ入境しようとしていたスーツ姿の日本人2人組(財務省職員2人という説と財務省職員1人と宮内庁職員1人であったという説が流れていた)が、額面5億ドル249枚および10億ドル10枚など、総額1,345億ドル相当の巨額の米国債を隠し持っていたため、イタリアの警察に逮捕された事件である。日本円にして約13兆円の米国債である。2人のうち1人は、武藤敏郎氏の義弟である山内恒夫氏である。武藤氏と言えば、大臣官房総務審議官、主計局長を経て、大蔵事務次官、そして、2003年3月から日本銀行副総裁となった人物である。これには武藤氏の関係者ではないとする説もある。私にはわからない。ただ当時の中川財務大臣が、アメリカの意向に逆らって動いていた形跡があり、これがその後の酩酊会見(某新聞社の女性社員がワインにハルシオン盛ったという説も)、さらには心筋梗塞といわれる急死事件に繋がっているとの説もある。マスコミはこれら米国債を偽物であるとして報道を打ち切ったが、どこか腑に落ちないため時々ネットをさまよっている。

 10年経たないと見えてこない事件の背景なんて、よくあることです。ケネディ暗殺事件なんて、事件が起こったのが1963年11月22日、でも事件の最終報告書が公開されるのは2039年です。日航機123便の墜落事故も、いまひとつ腑に落ちない。墜落地点の確定が何故あんなに遅れたのか、客室乗務員の話と事故調の話がどうも噛み合わない、ボーイング社が何故あんなに早く過失を認めたのかなど、腑に落ちないことは山ほどある。別に自ら真相解明に向かって活動していないのだから、わからなくて仕方がない。あの事故の数日前にあの飛行機に乗った人間としては、どうしても気になるのです。日々、納得できない事件に関してはノートに書き出して、時々眺めながらその時点からの考察をする。ボケ防止の頭の体操です。

 そんなことは横に置いて、安倍首相に関して納得のいかないことを少しだけ。昨年末にプーチン大統領が来日、山口での首脳会談は成功裏に終わったと報道された。しかし、北方領土はそのまま、経済協力として3,000億円を日本が拠出し4島における日露両国の特別な制度のもとでの共同経済活動を行うとの合意をしたという内容だったと。それから2ヶ月程度しか経っていないのに、ロシアのショイグ国防相は北方領土を含む島々に、軍の新しい師団を配置すると発表した。ロシアは対日対話が活発化する中においても、北方4島を自国の領土だとして、この地域の防衛力を強化する姿勢を鮮明にしているわけだ。あれ、首脳会談は成功したのじゃなかったの? 3,000億円、まさかロシア軍の配備費用になったのでは?? どうもわからん!

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170302-00000577-san-eurp

 トランプ大統領が就任後、安倍首相が嬉々として会いに行ったのだが、皆目会談の中身が見えてこない。エアーフォース1に乗っただの、フロリダの別荘でゴルフをしただの、見つめあって握手をしただの、下らない報道ばかりである。その直前には50兆円あるいは70兆円の(GPIFの資金)をアメリカ労働者の雇用改善に使うなどなどというニュースが流れていたのに、まったく報道がない。トランプ大統領の笑顔が不審に思えるのは仕方ない。

1日経ったらニュースが出ていた。100兆円だって!

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170301-00000566-san-bus_all

 とはいえ、マスコミはトランプー安倍の蜜月関係を賛美する報道であふれていた。大成功であるという。TPPの件、トランプを説得したの?強行採決までしたのに。マスコミも、一言も問わない。さて、トランプ大統領はやりたいようにやっているように見える。政策自体には疑問を感じる場合はあるが、公約通りだから仕方のない面もあるだろう。批判は批判としてすれば良い。選挙中、TPP絶対反対と言っておきながら、TPP絶対推進といわれるよりまだマシだと思ってしまう。それはそうと、2月24日アメリカのホワイトハウスは、ショーン・スパイサー報道官による非公開の報道ブリーフィングから、大統領の政策を批判している複数の報道機関を閉め出したそうだ。あれ蜜月関係にあるはずの日本の報道機関、それも安倍首相を支持している報道機関も排除された。なぜ?

 日本でエンゲル係数が上昇している。アベノミクスの成功で、景気は良くなっているそうなのだが? 当初はトリクルダウンによって、一般人にも景気回復の余禄が回ってくると言われたが、そうでもないらしい。そんなことは起こらないと竹中君が言ってしまった。トリクルダウン、もう死語です。世の中デフレではない状況まで来たが、デフレ脱却を目指すなんて不可解な発言が出るほどだ。通常、貧困化が進むとエンゲル係数が上がる。お金は日本人のために使ってくれよ思うのだが、今の政権は外国のために大盤振る舞いを繰り返している。政府関係者が言ったのかマスコミが作ったのか不明だが、日本におけるエンゲル係数の上昇は、国民がグルメになっただけでなく外食が増えたことが原因だそうだ。でも、外食産業も不況だという。グルメとは縁のない粗食の私にとっては、全くもって不可解である。

 政治には関わりたくないが、時として腹ふくるる思いが嵩じてこんな文章を書いてしまう。ほっこりほっこりした、温和な社会を願っています。

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春の兆し

 今日、庭に植えてあるスウィートスプリングにウグイスがやって来た。かなり強めに剪定をしておいたため、見つけやすい。まだ囀りはしなかったが、もうすぐだろう。クリの畑に来るウグイスは下手な囀りを始めている。家の周りではコカワラヒワの群れがキリキリとかわいい声を上げている。この群れは、昨年植えていたヒマワリの種を食べ尽くしたグループであろう。

 数日前にはイカルがやって来た。私のお気に入りの小鳥である。まだ囀りには早い季節だと思うのだが、澄んだ声で「蓑笠着いー・・・みのかさきいー」と一声鳴いて飛び去った。そのせいかどうかはわからないが、今日は午後から雨である。そういえば、日本人とポリネシアの人々は鳥のさえずり、虫の声を言語脳である左脳で聞き、その他の民族は音楽脳である右脳で聞くという。東京医科歯科大学の角田忠信教授であったと記憶しているが、この方が書かれた「日本人の脳」の中に書いてあった。そのため、日本人は鳥の囀りを「聞きなし」という方法で把握できるという。

 いまの日本野鳥の会は少しならず金儲けに走っているようで好きになれないが、1970年台までのこの会は、唯々鳥が好きという風情の中西悟堂氏が会長をされていた。悟堂氏が書かれた定本野鳥記 (全8巻別巻1 春秋社 )は、小児喘息で外に出られない時期のわたしにとってはバイブルにも比すべきものであった。この本を通していくつもの聞きなしを知ったのだが、今となってはどの聞きなしがこの本由来の記憶であるかは分からなくなっている。

 例えばツバメ、電線に止まってグチュグチュと囀るのだが、これを「土食って虫食って渋〜い」と聞きなせば、彼らの行動と相まってそう言っているような気になってくる。確かに言語脳で受け取っているのだろう。あまりに単純な囀りであれば聞きなしは擬音語にならざるを得ないが、適当な長さの囀りには色々な聞き方がある。これから囀り始めるホオジロ、「一筆啓上つかまつり候」、「源平つつじ白つつじ」と聞くのがオーソドックスだが、近年は「札幌ラーメン味噌ラーメン」とも聞くらしい。ウグイスに対しては、「ほう法華経」というそのままの聞きなしをする。メジロに対しては「鳥兵衛,忠兵衛,長忠兵衛」、「チルチルミチル青い鳥」などという言葉を当てている。

 友人たちにこうした聞きなしを教えたのだが、なかなかうまく覚えてはもらえない。生活に必要ではないからであろう。覚える必然性がないのである。ところが面白いことに、我々の生活に関連のある聞きなしにすると、記憶率が向上する。例えばヒバリ、多くの人がヒバリの声を聞いても鳥が鳴いているとしか表現しない。しかし、ヒバリの鳴き声を「日一分,日一分,利取る,利取る」と教えると、覚えてくれる人の割合は間違いなく上昇する。ローンを抱えている人にとっては切ない囀りかもしれない。センダイムシクイ、この鳥はチヨチヨ・ビーと鳴くのだが、昔は「鶴千代君ー」と聞いていたという。歌舞伎「伽羅先代萩」由来の聞きなしだが、現代では幾分通りが悪い。世のおじさんたちに対しては「焼酎一杯グーイ」というのが好評である。我が家にも5月の始め頃に時々やってきて、早朝から「爺や爺や起きー」と鳴く。

 もっと面白いのは、この鳴き声の聞きなしに少しエロチックな色合いを与えると、記憶率が劇的に上昇することである。例えばアカハラ、「キョロン・キョロン・チー」と鳴くのだが、これを「カモン・カモン・チュー」と教えると、アカハラは覚えないにしてもカモン・チューだけは覚えてくれる。サシバを知っている人はあまりいないと思うが、一部の人には渡りをするタカとして人気が高い。近頃は見かけることが少なくなったが、別名を「キンミー鷹」というようにキンミー、キンミーと鳴く。しかしキンミーではインパクトがない。そこでこれを「キス・ミー」教えればやはり覚えてくれる。間違いなく覚えてもらえる鳥はコジュケイである。ちょっとした藪の中で「ちょっと来い ちょっと来い」と大声でしつこく鳴き続ける。もちろん「ちょっと来い」で十分に印象的なので、それ以外の聞きなしが必要とは思わないが、これを「ペチャパイ・ペチャパイ」と教えれば、記憶の定着率は100%になる。されど、覚えるのはペチャパイであってコジュケイではない。ただ教える相手を選ばないと恨まれる恐れがあるため、教育には注意が必要だ。

 別に、こんなことを書く予定ではなかった。ただ、聞きなしという現象が日本人に特徴的という議論があるということを書きたかっただけである。しかし、例外のない規則はないという言説があるように、やはり例外はあるようだ。先に述べたコジュケイ、英国においては「Peaple’s qeen, Peaple’s qeen」と鳴くという話を聞いている。

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クスの木搬出

2月14日

  前日の夜、N耕作舎さんから電話があった。明日10時にクスノキを搬出するという。では、役には立たないが立ち会いましょうという話になり、14日は7時前に起きた。別に強調するほど早起きしたわけではないが、通常よりいくぶん早い。起きて、薪ストーブの灰を片付け、ようやく薪に火をつけた時に、今から行きますと舎長がやってきた。計画より2時間以上早い。いくぶん怠惰な私に較べ、このあたりのヒトは朝が早いし仕事の開始も早い。

伐採した2本のクスノキ(2年前)

 画面で見ると大した大きさには見えない。周りにもっと大きな木があるではないかと思われるかもしれないが、その通りである。ただ、この2本の木が、ワラビ畑の日照時間を著しく短くしていることに問題があったのである。もっとも、周りの木も、時期を見て切らねばならないことは間違いない。

     そういうわけで、私も朝食抜きで山まで駆けつけた訳だが、すでに二人の人がいらない枝を落としユンボでの搬出にかかっていた。

1本目のクスノキ搬出

 どう頑張っても4人で持てるようなものではない。足元は霜が降り、地面は凍りついている。これが溶けると地面がゆるゆるになり、ユンボもトラックも動けなくなる。それ故に、時間を前倒ししたのだろう。

2本目のクスノキ搬出

 上の写真が2本目のクスノキを吊り下げたところである。見りゃ分かるって。それはそうだが、この木は1本目の木より1割方小さい。それでも、バケットを伸ばした状態で釣り上げようとすると、ユンボの方が浮きそうである。四苦八苦しながらも搬出は終わった。木を積んだトラックもなんとか道路に出ることができた。時刻は9時30分である。10時に会う約束の仕事が、9時半に終了した。さて、この後何をしようか?

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過剰と蕩尽 30

AMP生合成

まず、AMP生合成の図を示す。但し、この図が本当に妥当かどうかの検証は後回しにする。

Inosine 5′-monophosphateからAdenosine 5′-monophosphate(AMP)までは、ほんの 2ステップの反応である。Inosine 5′-monophosphateの1位と6位の間で起こるエノール化で生成するエノール性水酸基がGTPによってリン酸化されて、反応性の高いエノールリン酸エステルが生成する。活性化された6位の炭素をアスパラギン酸のアミノ基が求核敵に攻撃してAdenylosuccinic acidが生成する。Adenylosuccinic acidはフマル酸を脱離しながら6-アミノプリン、即ちAMPへと変換される。エノールリン酸エステルが直接アンモニア−例えばグルタミンの加水分解産物−と反応すれば、簡単に作れるのではないかと思わないでもないが、実際がこうなっているのであればこれが正しい。更に、アスパラギン酸の炭素鎖はフマル酸へ変化することなく受け継がれているので、炭素原子を失ったわけではない。フマル酸からリンゴ酸、オギザロ酢酸を通って、容易にアスパラギン酸の再構成が起こることを考えれば、この系はそれなりに合理的なのであろう。

とは言っても納得したかといわれれば、どこか納得はしていない。気にくわないのは、AMP生合成においてGTPを消費する段階が存在することにある。生物にとって、GTPとATPはエクイバレント即ち等価なエネルギー媒体として考えられている。よりエネルギーの低い段階にあるAMPの生合成にGTPが必要であるとすれば、そのGTPの由来は何処にあるかなどと考えてしまうのである。とはいえ、Inosine 5′-monophosphateまでの合成系においてもATPは何分子も使われていることを考えれば、この時点での懐疑には殆ど意味がないことには気付いている。

現在の生物のエネルギー代謝においてはATPがその大部分を担っている。何故ATPがそれほど重要な役目を担うようになったのかという疑問とともに、ADPではだめなのかとか、Adenosine 5′-tetraphosphateやAdenosine 5′-hexaphosphateなどという可能性はなかったのかと、あれこれ夢想してしまう。この疑問の根源にはATPがいかなる理由で生物に選ばれたのかという問いが存在するようだ。私の直感は、ATPの方がGTPより生命活動の根元にあるとしているが、ここでこの話に深入りしても長くなるばかりなので、ひとまず次に進めよう。

GMP生合成

次は当然GMPの生合成の話となる。この図の正当性も後で考えることにしよう。

Inosine 5′-monophosphateからGuanosine 5′-monophosphate(GMP)の生合成も2段階で起こっている。イノシン-5-リン酸の2位の炭素にIMP dehydrogenaseのシステイン残基のSH基が求核的に付加する。この付加に伴って生成したエノール性水酸基がケト形に戻るとき、図に示すような電子の移動が起こり、2位の水素が水素アニオンとしてNADP+のピリジン環4位に付加すると、酸化された形で基質酵素複合体が形成される。このES complexの2位の炭素上に水の付加が起こったあと酵素残基が脱離すると2-3位でエノール化したキサンチンが生成するが、すぐにケト形へ異性化してXanthosine 5′-phosphateへと異性化する。次にまたもやグルタミンの出番だが、グルタミンを給源とするアンモニアがプリン環2位の炭素に付加、脱水、エノール化というとおかしい−エナミン化という言葉は余り聞いたことがないにしろ、とにかく3位にアミノ基が結合したGuanosine 5′-monophosphateとなるわけである。

核酸の生合成へ流入するためには、上記で得られた二つの化合物のそれぞれに、あと2分子のリン酸を結合させる必要があるのだが、その結果得られる化合物であるATP、GTPは高エネルギーリン酸結合を持つ。ATPを例に取れば、

  •  ATP + H2O → ADP+ Pi    ΔG = −30.5 kJ/mol (−7.3 kcal/mol)
  •  ATP + H2O → AMP+ PPi   ΔG = −45.6 kJ/mol (−10.9 kcal/mol)

従って、このエネルギーをどこから持ってくるのかというのが問題になるだろう。先にちょっと述べたがAMPからATPの生合成のエネルギーをGTPに頼るわけにはいかないだと思う。万一それが事実だとしても、GMPからGTP生合成に必要なエネルギーはなにに依存するかという問題に転化するだけであり、これはこれで悩ましい問題である。これは、高エネルギー結合を持つ核酸生合成の原料分子と生物活動のエネルギー通貨といっても良いATP生合成の問題と直結する問題であることから、後でまとめて考えることにする。

さて、先に示した図は二つともに、AMPとGMPの生合成を生物有機化学が好きなオタク視座から見たものにすぎない。従って、生合成全体を見る総合的視点を甚だしく欠いているわけだ。そこでだが、AMP生合成とGMP生合成について、少しばかり全体像を眺めてみることにする。まだATPにもGTPにもたどり着いていないのに、全体像を見るというのは尚早と思われるかも知れないが、そうしないと話を続けるのが余りにも錯綜してしまうという現実があるからである。

まず、プリン代謝に関して3枚の図を示すことにする。出典はKEGGであることはいうまでもない。

プリン代謝系の Reference chart http://www.genome.jp/kegg-bin/show_pathway?org_name=map&mapno=00230&mapscale=&show_description=show

この図は、通常の代謝マップに記載してあるものであり(勿論代謝マップを描いた人もそのことは承知の上である。そのため、この図を動物、植物、微生物と分割して掲載している場合もある)、この図を見てあれこれと軽率に語るのは余りにも危険である。前にも述べたが、この図は、調べられた生物の代謝系を重ね合わせて反映させた TIC (Total ion chromatogram)と同質ものである。従って、ある生物がこれらの代謝系のすべてを持つわけではない。では、ヒトやシロイヌナズナはこの中でどの代謝系を持つのか?

Homo sapiens のプリン代謝系 http://www.genome.jp/kegg-bin/show_pathway?org_name=hsa&mapno=00230&mapscale=&show_description=show
Arqbidopsis tharlana (シロイヌナズナ)のプリン代謝系 http://www.genome.jp/kegg-bin/show_pathway?org_name=ath&mapno=00230&mapscale=&show_description=show

原図を参照してほしいが、この二つの生物においては一つの反応にいくつもの酵素が重複して関与している場合が多い。それらのすべてを包含した説明をせよと望まれても、それは人間業ではできない相談になりそうだ。ただ、ADP riboseからAMP或いはGMPまでの代謝には、然程の複雑さはない。これが、AMP或いはGMPで一端話を止めた理由であるとともに、そこまでの化学反応の図の正当性を担保すると考えたわけである。その後の代謝をいま少し分かり易く述べるためには、代謝が放散する前の原初的生物の系を参照するのが一つの方法となると考えた。そこで原核生物である真正細菌と古細菌のそれぞれの系統樹において、根元に近い位置にある2種の原核生物のプリン代謝系を見てみることにする。1つは真正細菌であるThermotoga maritima MSB8の持つプリン代謝系であり、いま一つは古細菌である Pyrodictium delaneyiの持つプリン代謝系である。

Thermotoga maritima MSB8P の持つ Purine metabolism    http://www.genome.jp/kegg-bin/show_pathway?tma00230
Pyrodictium delaneyi の持つ Purine metabolism  http://www.genome.jp/kegg-bin/show_pathway?pdl00230

この2種の細菌の代謝系はかなりよく似ているだけでなく、真核生物の代謝系に比して非常にシンプルな系となっている。これら原初的原核生物の系が、進化の伴って複雑化したのであろう。Pyrodictium delaneyiの系において、GMPとGDPをつなぐ酵素が欠けている点で解釈に困る所はあるが、この2種の原核生物の系を敲き台として話を続けることにする。

過剰と蕩尽 31 に続く

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2月6-7日

 朝、電話をもらった。山の隣の果樹園の持ち主Nさんからである。今日は風も弱いし暖かいから、「例のクスノキを切りましょうよ」というお誘いである。我々が手入れしている果樹園は昭和30年代に開墾されたものである。 従って開墾から60年近い時間が経っている。私の畑にある「例のクスノキ」も、大きさから見て樹齢は60年を超しているらしい。このクスノキに全く恨みはないけれど、大きくなりすぎて周りの日当たりが悪くなっていた。数年前から切らざるを得ないなと思いつつも、一人では手に負えないためそのままになっていたものである。

 Nさんはハンターでもある。散弾銃ではなくライフルの所有者であり、山仕事で私などとは隔絶した知識と技術を持っている。更にNさんの友人であるYさんも援軍として現れた。この方もハンターで、毎年北海道までエゾシカを撃ちに行くという強者である。まず木に登って片側の枝を落とし、重心を倒す方向にかけてやる。倒す側の根元に受け口と呼ばれる切り込みを入れる。勿論、チェーンソーを使う。受け口の中央より少し高い位置を決め、反対側から追口と呼ばれる切れ目を入れていく。この時、木のできるだけ高い位置にロープを架けてトラックで引っ張りながら、倒れる方向がずれないように制御するのだが、地形上トラックを倒す側に配置できない。仕方なく別の木に固定した滑車で方向を変えて引っ張ることにした。二人とも撃った鹿を藪や林の中から引っ張り出すために、多種多様なロープ・滑車・車載クレーンなどの機材を持っている。その機材をフルに使っての作業である。最初の1本を切るのに2時間ほどかかった。

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1本目のクスノキ 直径は85cm位である
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1本目の切り株 株本は直径1mを越える

 次の1本も同じ手順で切った。かかった時間はやはり2時間ほどで午後4時を過ぎていた。その後、倒れた木から枝を落とし1m程度の長さに切っていったのだが、最後までは終わらず日没となった。疲れて無理をしても危険なので、残りは明日に持ち越すことにした。と書けば、私も働いたように聞こえるが、実質の作業は殆ど2人の援軍が行ったことである。その割にはとても疲れた。こんなことばかりしているため、ブログの更新が遅れ気味になっている。気にはなっているが、薪の収集などこの季節にしかできないことが山積している。

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2本目のクスノキ 大きそうに見えるが1本目殆ど同じサイズである
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大きさの比較のため飼い犬をいっしょに撮影 この犬の体重は、約 15Kg である

 翌日早朝に、N耕作舎から「今日、堆肥をお持ちします」との電話があった。まず2トンを柿畑に降ろしてもらい、次の2トンを山の畑に運んでもらった。殆ど臭いのない熟成の進んだ堆肥である。ホームセンターなどで売っているものの中には、発酵が足りずべっとりしたものがあったりする。それに較べるとこの堆肥は良さそうで気に入った。その後、この舎長と少し世間話をしていたのだが、昨日我々が切ったクスノキの幹がほしいという話になった。楠は腐りにくいので、いま建てようとしている四阿の柱としてそのまま使いたいという。こちらとしても、そんな形で利用してもらえるのであればその方がありがたい。解体するにはもっと刃の長いチェーンソーを買わねばならないという現実的な問題もあるが、せっかく大きくなっていた木である。そのままの形で生かす方法はないかと思っていたところなので、一も二もなく譲ることで話がついた。

 我が家のウッドデッキから見ると、正面の山の山頂付近に立派な農舎(人が住めそうな)見えるのだが、会話の中でこれがN耕作舎さんの所有であることが判明した。その農舎の横に170mの井戸を掘ったので、風呂場も作るそうだ。あなたは堆肥を購入した客だから、この農舎を使って良いというところまで話が広がった。東の空に登ってくる月を見るにはこの上ない場所、仲秋の名月が楽しみになってきた。しかし、一献傾けた後どうやって家に帰れば良いかは問題である。まあその時はイノシシと鹿を見ながら泊まることにしよう。

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望遠で撮った農舎(我が家のウッドデッキより)

 明日からはしばらく寒いそうだが、農業機械・器具類の展示会が宮地嶽神社の駐車場で行われる。余りに寒いようであれば農作業を控え、展示会に出かける予定である。寒さがもう少し長引けば、ブログの続きがアップできるかも知れない。

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