昨日というより今日である、福島沖でかなり大きめの地震があった。とは言え。耐震基準がきっちり決められている現在の日本であれば、あの程度の地震では大きな被害は出ない。「その程度の常識」はある。だが、日頃の会話の中で地震が怖いねという私の発言が重なると、あなたは地震恐怖症かと疑われる場合がなくもない。しかし、多くの人が持つ「その程度の常識」がいつでも通用すると考えているあなた方に対して危機感を感じているのである。私から見れば、あなた方が地震不感症であるように見える。
南海トラフで発生すると予想されている大地震、津波が何分後に来るとか、津波の高さが何メートルになるとか、何万人死ぬとかいう事とは別次元の怖さがあることに気付いていない人がほとんどである。私は大津波が問題ではない、何万人死のうと大した問題ではないといっているわけではない。それらは極めて大きな問題である。しかし、もっと厳しいに違いない大きなリスクがある。令和6年に内閣府が出した南海トラフ地震での被害予測は250兆円から300兆円なのだが、読んでみたら余りに楽観的過ぎるように感じた。
https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg/pdf/3_sanko.pdf
2018年に土木学会も南海トラフでの巨大地震の被害予想を出しているのだが、大まかな値として1500兆円以上になると試算している。1500兆円というお金がどれほどのものか、冷静に考えると背筋が寒くなる。昨年の日本のGDPは 600兆円弱である事を考えれば、全日本人が2年半の間飲まず食わずで働いた時の値に相当する。さらにこの地震、日本で大きな割合のGDPを稼ぎだしている関東・静岡・名古屋から大阪に至る工業地帯を壊滅に近い状況に追い込むと予想されている。幸運にも津波で生き残った人が働こうと思っても、家も、生活のインフラも、移動手段も、働く場所も失われているのみならず、生存者に必要な水と食糧さえ供給されないだろう。因みに阪神淡路大震災の被害額が約10兆円、東日本大震災の被害額は18~25兆円を考慮すれば、1500兆円という被害が如何に大きなものであるか分かってもらえるかもしれない。
さらに首都直下型地震が南海トラフ地震と連動する可能性が囁かれている。この地震による地震の被害予想は、先の土木学会の試算によれば800兆円を超える。1500兆円、800兆円という値は土木学会の試算であるため、幾分かの水増しがあるかもしれない事を考慮しても、尋常ではない被害となる事は否定できない。万一、この二つが連動した場合、南九州から関東、東北に至る太平洋側が被災する事になる。多分被災者は7,000万人を超えるだろう。
被災者への支援、これは期待できない。被災地区に住む7千万人の人々に必要な支援を日本海側の人々が担えるのかと考えれば甚だ心もとない。はっきり言えば不可能である。鉄道が機能を失い、道路は寸断されているるであろう。空港も機能不全となるであろうし、能登地震で見られたように港湾施設も破壊された状況で、どうやって支援物資を運ぶのか。そもそも支援物資を作っていたのが被災地域なのである。
外国からの援助?、被災した直後であれば人道的立場からという美名の下にいくらかの支援が期待できるかもしれないが、1,000兆円を超える巨大な損害の前ではスズメの涙にもならない。少し時間が経つと復興利権を狙った災害便乗型資本主義(ショックドクトリン)の草刈り場になると予想できる。日本人は冷酷な外国資本の下で酷使される原住民の位置づけになるだろう。
1.000兆円を超える膨大な損害を抱えただけでなく富の生産基盤を失った国家に、食糧を売ってくれる国、原油を売ってくれる国があるだろうか。食糧を買っても物流が停止している、原油を買っても精製施設が動いていない。火力発電所も被災しているため電気もない。もし万一幸運にも、原子力発電所が壊れていないとしても、送電線は寸断されているに違いない。東北大震災の時、被害は大きかったが関東から大阪に至る工業地帯が生き残っていたため、円の暴落は起こらなかったが今回は円の暴落が起こるだろう。我が国の国際的購買力が地に落ちるのである。その際にアメリカという国家が日本の持つメリカ国債の売却を認めるとは思えない。日本国民は塗炭の苦しみを味わう事になると思う。
岸田政権が進めている移民政策、彼らにも言い分がある事は幾分認めるとしても、大地震の発生と同時に国内にいる移民のグループが何らかの形で騒動を起こす事は否定できない。埼玉県川口市の状況をみればわかるように、大災害とともに移民政策のデメリットが噴出し、警察力では対応できないほどの社会不安が発生するだろう。
こうした未来から逃れるためには、国家として貴金属の備蓄を充実させる事、備蓄を含めた食糧政策を実施する事、防災事業を速やかに実施する事、長期的には工業生産基地の分散を行う事、日本海側が安全とは言わないが日本海側への投資を増やしバランスの取れた国土整備を行う事などを早急に実施すべきと考えているが、今の政府にそれを望むのは難しい。本来の意味での国土強靭化政策は必要なのである。
何でこんなことを書くのか、南海トラフ地震の前兆となるかもしれないスロースリップが宮崎県沖で発生しているだけでなく、日向灘でかなり強い地震が何回か発生しているからである。政府が官僚だけ連れて岡山に逃げる用意をするのではなく、国土全体を考えた政策を実行する事を願っている。事は国民に一週間分の水と食糧の備蓄を求めるような次元の話ではないのである。
ではお前に何が出来るという質問とも批判ともつかない問いを発する人がいる。至極残念だが、基本的には何も出来ない。南海トラフ地震においては、当地でも震度5~6程度の揺れが予想されている。私自身が被災者になりかねない。もし家が壊れずに残った場合、ジャガイモやサツマイモを栽培して数人分程度の食糧なら生産できると思うが、それを配送するための物流が動いている保証はない。それ以上に地震の発生時期が植え付けの時期の合致する保証もない。米が作れれば良いのだが、トラクターや管理機など農業用機械の燃料が入手できる保証はない。種もみの入手さえ難しいだろう。現在の農業は石油がなければ成立しないのである。食糧不足で困る人々の前に耕作放棄地が広がるという皮肉な風景が見られる可能性が高い。
ただ一つ供給できるかもしれないものは、長寿命の野菜の種かな。カボチャやダイコンなどの種については、数年分の備蓄を持っている。万一の場合、欲しい人達に配布するつもりである。ただ、現在の野菜類はF1種である場合がほとんどであるため、継続的に栽培が可能かどうかはやってみないと分からない。