歴史生物学 TCA回路への異論 3

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 前回まで、ざっとではあるがTCA回路を構成する化学反応について生物有機化学の立場から描いてみた。解糖系に次いで、本来ならペントースリン酸回路についてもそれなりの論証が必要だと思うが、これはまた後でと云うことにして、再度図-2を見ながらTCA回路ついての議論をはじめよう。

図-2 一般的教科書に示されているTCA回路

 1937年といえば、そろそろ第二次世界大戦に向かい世情がキナ臭くなっていた頃である。この年、盧溝橋事件が発端となり日本と中華民国との間で日中戦争が勃発している。ヒンデンブルグ号の事故もこの年だし、いわゆる化学界ではウォーレス・カロザースがナイロンの特許を取得している。TCA回路は、この1937年にドイツの化学者Hans Krebsが発見した”代謝系であり回路”である。彼はこの功績により1953年にノーベル生理学・医学賞を受賞したのだが、今年で発見から84年が経っていることになる。「我々は、摂取した栄養素からいかなるメカニズムでエネルギーを獲得するか」という問題に対し、84年前に、あの回路を構築した彼の非凡な能力には脱帽するしかない。間違いなく、20世紀の生化学という学問における1つの金字塔であろう。

 1970年に行われたインタビューの中で、多くの優秀な科学者達がそのエネルギー獲得メカニズムの解明に失敗したにもかかわらず、彼が成功した理由について尋ねられたとき、Krebsは次のように答えている。

 「私は、生きている細胞で起こっている化学反応を解明しようという一人の生物学者の視座に立っていました。故に、生物における化学反応と細胞活動とを総合的に関連づけることに習熟していたのです。生物学者の視座から、細切れの情報をジグソーパズルのように組み合わせ、欠けている断片を探すことにより合理的な代謝過程像にたどり着こうとしたのです。

 従って、食物の燃焼の中間段階に関与しうるどんな小さな情報も見逃さなかった。トリカルボン酸回路の概念を最初に発見するのは誰か、の決め手となった重要な要因は、多分、この視座の違いだったと思います。」

(Krebs, H. A., “The History of the Tricarboxylic Acid Cycle” Perspect. Biol. Med., 14, 154~170 (1970). より引用 但し、言葉を補いながら我田引水的に意訳している)

 ここには、非常に重要なことが書かれていると思う。1つは細胞で起こっている化学反応(酸化反応を意味する)を生物学者の視座から見たということ、すなわち視座・視点の重要性を述べている点である。いま一つは彼自身も気付いていなかったであろう拘束条件である。最初に述べてあるように、「細胞で起こっている一連の(酸化)反応を合理的な代謝過程として記述」しようと考えた時点で、すでに目的の経路は「酸化反応であるという拘束」と「エネルギー産生系であるという拘束」の下にあったのである。これは批判ではない。彼の業績のすばらしさを十分に認めた上で、彼が生きていた時代に生化学という学問が持っていた枠組み(パラダイム)について述べているにすぎない。彼は、目的とする代謝系は食物の燃焼の中間段階に関与する酸化系であり、エネルギーを産生する系であるというパラダイムの下に、研究で得られた知識の断片を布置していったのである。

 さて、彼がそのようなパラダイムの中ににいたという視座に立ってTCA回路を眺めると、この回路はいくぶん奇妙である。よく見て欲しいのだが、この回路に於いて酸素は全く関与しておらず、通常の意味における酸化は起こっていない。もちろん、基質レベルでの酸化が起こっているではないかという反論が現時点では成立する。しかし、Krebs が研究に用いていたのはワールブルグ検圧計であった。発生した二酸化炭素をKOH溶液に吸収させ、ここでの体積減少を酸素の消費として見ていたのである。酸素の消費を伴わない酸化という概念を持ってこの系を考えたわけではないと推測される。

    つまり、彼は酸化的リン酸化、すなわち電子伝達系を含めた形でTCA回路を見ていたのである。彼が構築した余りにも美しいTCA回路は、多くの現象を考える上で非常に有益であった。しかし、その美しさと有益さが、この系を疑ってみるという意識の形成を阻害し続けたように感じる。その結果、TCA回路を酸化的代謝系と捉える考え方は、現代まで延々と引き継がれてきたようだ。

  最初からあまりに鬱陶しい議論をすると、訪問者が減るかもしれない。商用サイトではないし、アフィリエートで何か売ろうと考えているわけでもない。訪問者が減ったところで痛くも痒くもないが、読んでくれる人が多いのはやはり励みになる。アクセス解析をしたところで、誰が訪れているかなど分かるはずもなく、大まかな数字が得られるだけである。現在のところ、月に約 500 人のヒトが訪れ、1日当たり15 Mb程度の文書が読まれている。古希を過ぎた老爺が作り、大手のサーバーにも載せていないサイトとしては上出来だそうだ。

 それにしても世の中が落ち着かない。多分、コロナ以前の世界には戻れないだろう。バイデンの影の薄さは隠すべくもないし、習近平もどこで何を考えているのかなかなか見えてこない。あれほど世界を騒がせた金正恩もどうしているのか。カナダのトルドーは何をするつもりなのだろう。総じて、すべての政府がコロナ危機を煽り立てて国民を恐怖の坩堝に追い込むことで正常な判断力を奪い、この混乱に乗じて平時ではありえない政策を遂行するだけでなく、情報をコントロールして政府の権限を強める方向に動いているようだ。

 日本もまた同じである。いやいや、我々が暮らしていた世界がこれほどまでに脆弱なものであったのかと、改めて愕然としている。政府が政府として機能しない、科学が科学として機能しない、マスコミがマスコミとして機能しない世界に住んでいるようだ。よほど、冷静に事の成り行きをみていないと、○○真理教に飲み込まれてしまう。小此木さん、何があったのだろう。河野さん、そこまで断言したら、それがデマでしょう。忽那さん、新聞ジャック凄いな、焦っておられるのかな。JR東海、リニア−どうなる。オリンピックの強行は、もしかしたら何かのスピン?ワクチン擬、ロットによって副作用が違う?

 ニイニイゼミが鳴き始めた。ホオジロも高らかに歌っています。トビとカラスが戯れています。近くに巣があるらしいイカルが、怒らずに涼しい声で鳴いている。一日のうち半分の時間を、世の汚濁とは無縁な世界で暮らしています。これが精神安定剤になっているのだろう。雨が降らないため育てているナスとトウガラシが青息吐息の状態、さすがに見かねて水をやりました。300Lタンクで2回だから600Lか、井戸水で料金が安いから出来る話で、都会ではまず不可能でしょう。テントウムシダマシによるナスの食害が酷くなってきたので、明日は仕方なくアディオン乳剤でも撒くことにしよう。アディオン乳剤、ピレスロイド系の殺虫剤です。

歴史才物学 TCA回路への異論 4 に続く

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歴史生物学 TCA回路への異論 2

 さて、次の反応からが、常識的に見た本来のTCA回路を構成する反応群である。図-5から図-8に反応機構を描いておく。

図-5 アセチルCoAから2-オクソグルタル酸まで

 最初の反応はアセチルCoAがオギザロ酢酸と反応してクエン酸を与えるのだが、この段階で起こる反応は、解糖系の中で出てきたアルドール縮合と同じメカニズムを持つ。エノール化したアセチルCoAがカルボニル基に戻ろうとしたときに生じる炭素アニオンがオギザロ酢酸の2位のカルボニル基に付加し、クエン酸とCoAのエステルが生じるが、このチオールエステルはすぐに加水分解を受けクエン酸が生じる。最初の縮合反応をクライゼン縮合と書いてある場合もあるが、本来のクライゼン縮合は2分子のエステルからβ-ケトエステルを与える反応であるから、アルドール縮合タイプの反応としておいた方が無難かもしれない。

 このクエン酸から水分子が脱離してcis-アコニット酸が、cis-アコニット酸に脱水反応の場合とは逆向きに水が付加すると、イソクエン酸となる。イソクエン酸はNAD+を酸化剤として基質レベルでの酸化を受け、オギザロコハク酸が生じる。オギザロコハク酸は脱炭酸反応を受けやすいβ-ケト酸の構造を持つため、1位のカルボキシル基が二酸化炭素として脱離し2-オクソグルタル酸を与える。但し、この2-オクソ、2-オキソ或いは2-ケトグルタル酸という名称は、我々の世代にはちょっとだけ違和感がある。我々はα-ケトグルタル酸として教わってきた。郷愁が少しだけ邪魔をしているだけである。

 図-6には、2-ケトグルタル酸からスクシニルCoAまでのメカニズムを示しているが、これは先に言ったとおりピルビン酸からアセチルCoAへの変換メカニズムと同じであるため説明は省くことにする。

図-6 2-ケトグルタル酸からスクシニルCoAまで

 図-7においてはスクシニルCoAが遊離のリン酸による求核置換を受けSuccynyl phosphateを与えるが、この非対称酸無水物は非常に反応性が高いため、GDPの末端のリン酸残基による求核置換反応をうけ、GTPとコハク酸(Succinic acid)となる。コハク酸は、補酵素であるFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)の存在下に脱水素を受け、還元型FADとフマル酸を与える。蛇足だが、フマル酸は高校の科学の授業においてcis-trans異性について学ぶときにtrans体の例として取り上げられている化合物である。

図-7 SuccinylCoA からフマル酸まで

 図-8は最終段階に入って、フマル酸にエノラーゼと呼ばれる水付加酵素が働いて、リンゴ酸となった後、リンゴ酸の2位の水酸基の部分がNAD+の存在下に基質レベルでの酸化を受けオギザロ酢酸とNADH+H+を与える反応を示している。ここにおいてアセチルCoAの2個の炭素原子はCO2へと酸化され、次の電子伝達系で酸化されATP生産に関与する還元型補酵素{3x(NADH+H+)とFADH2}が生成する。

図-8 フマル酸からオギザロ酢酸まで

 CoAやNAD、あるいはFADの構造式が幾分難しそうに感じるかもしれないが、ナニそれは慣れに過ぎない。それぞれの構造式を一日に10回ほど描くことを10日も続ければ、殆どの人が描けるようになる。この構造を描けるようになって初めて、補酵素としての機能が理解できる。例えば、図-5においてNAD+がNADH(本当はNADH+H+と描くべき)に還元されると共に、イソクエン酸がオギザロコハク酸に基質レベルでの酸化を受けるのだが、一寸だけ違和感を覚える人はいないだろうか。この反応においてイソクエン酸の水酸基の根元に位置する水素が、水素アニオンとしてNAD+のピリジン環の4位の炭素を攻撃している。

 生物の体はその大部分が水である。今まで述べたすべての反応が水中で起こっている。さて、水素アニオン(水素化物イオンといったほうが良いのかな)は水中で安定に存在し得るのか。あまり安定ではない。還元剤として良く使われるLAH(リチウムアルミニウムハイドライド)、塩基として使われるNaH(水素化アルミニウム)などから発生する水素アニオンは、水があると激しく反応して爆発的に燃える。NaBH4(水素化ホウ素ナトリウム)から発生する水素アニオンは幾分マイルドで、含水メタノール中での反応に使われることがあるとは言え、さほど安定であるとは言えない。その水素アニオンが我々の体の中で実に効率的に移動しているのである。何故そんなことが可能であるのか。簡単な話で、酵素の活性部位において反応する化合物の反応部位が近接するように制御されていること、そして活性部位の周りをアミノ酸の疎水性の残基が取り囲み、反応する部位が無水状態になっているからである。

 昔ある女性研究者と話をしていた時、(反応とは関係ありません)、一寸だけ姑さんに対する愚痴を聞いた。「私、上品でしょう、言いたくてもクソババ」なんて言えないんです。だから心の中で「おクソババ様と敬語」を付けて呼んでいます。「おクソ」か〜、2-オクソグルタル酸を思い出した。ああ、皮膚の酸化が進んでいるんですね。あとはご想像に任せます。やはり、α-ケトグルタル酸が無難で良いな。

 次回から、今までの解釈を無難に信じている方々にとっては意外に感じるであろう批判を始めることにする。面白いか面白くないかは各人の受け止め方次第だが、主流の考えに背き足下を掘り続けてきた結果を書くことになる。天の邪鬼的な感性しか持たない私にとっては非常に楽しい作業であったようだ。 

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歴史生物学 TCA回路への異論 1

 いま、世の中ではクエン酸健康法というものが流行っているようだ。クエン酸を飲むと、血液の浄化、血管の強靱化、腎機能改善、血圧の正常化、排泄排便障害の緩和、体内老廃物の排泄、中性脂肪とコレステロールの抑制、免疫力の向上、糖尿病の予防、諸臓器への正常な酸素の供給、弱アルカリ体質化、自然治癒力の向上・・・・・と 、何が何か分からないが万能の効果が得られるという。生きていく上でのエンジンであるクエン酸サイクルが十分に機能すると、体の各細胞が活発に働き、健康と美が得られるらしい。???

 でもね、何にでも効くと言われるものは、何に対しても効かないのが世の常である。マスコミがどこからか引っ張り出してくる医学博士達が語る世界は、私にはからきし不可解な世界である。近年流行の「血液さらさら」だって、本当にさらさらになったら怪我しても血が止まらない。世の中のかなり多くのお父さんたちが服用している「ワルファリン」は血栓塞栓症の治療や予防に使われている薬である。このワルファリン、ムラサキウマゴヤシ(マメ科植物)を醗酵させたときに生成するジクマロールが、ウシの出血を止まらなくする原因であることをヒントに開発された農薬で、長い間「殺鼠剤」として使われてきた。いや、いまでも殺鼠剤である。この話をすると、あの医者はおれに殺鼠剤を飲ませているのかと怒る人がいるのだが、その通りである。まあまあ、あんたの薬がネズミにも効くと思いなさいと笑って答えているが、この薬、実は血液の凝固を押さえてさらさらのままにするのである。(図-1)

 図-1 ジクマロールとワルファリンの構造

 ワルファリンをネズミに食べさせると、網膜での出血が止まらなくなる。このため目が見えなくなり明るいところに出てくる。明るい所に出てくれば、猫などの天敵に遭遇する事故に遭うわけだ。天敵に襲われなくても、さらさらな血液ゆえに腹腔内での出血が止まらず最終的には死亡する。「血液さらさら」が死の原因になるわけだ。人においても、ワルファリンを飲んで交通事故でも起こしたら最悪である。怪我からの出血が止まらない。手術が出来ない。つまり世の中、中庸が一番で、血液は「適切にサラサラ」かつ「適切にトロトロ」であることが正常なのである。この言い方は間違いかな?「流れるべき時に流れ、固まるべき時に固まることが求められている」としておこう。そういえば近頃、核酸も販売ネタに使われるようになってきた。

 また初めから脱線してしまった。ここでは常識的なTCA 回路の解釈に批判を加えようと思っている。TCA 回路はクエン酸回路という別名を持つことから、クエン酸健康法の話へと脱線しただけである。さて、TCA回路はクレッブス回路、クエン酸回路、トリカルボン酸回路、TCAサイクルなどという多くの別称を持ち、内容は殆ど理解されていないにもかかわらず、知名度だけは異常に高い代謝系である。この点で解糖系によく似ている。まず、図-2に通常描かれているTCA回路図を示す。

図-2 一般的教科書に示されているTCA回路

 実はこの程度の図であっても構造式が難しいという理由で、ほぼすべての学生には不評である。理系に来ている学生にさえ不評なのだから、一般の人たちに不評なのは当然であろう。こんなん見たら、頭が痛うなるわと関西弁風に否定されてしまうのである。でも、しかし、そういって否定する人たちが、クエン酸健康法に嵌まりまくっているというこの矛盾は実に悩ましい。グダグダと理由も原因も述べず、効く効く催眠術を使う詐欺師等の勝ちということか。

 まずTCA回路と呼ばれている代謝経路について、常識とされている解釈に関する知識を持ってもらわないと、私が、一般的に流布している考え方にどのような異を唱えるのか、理解してもらえないことになる。従って、まず教科書的な意味での解糖系と、生物有機化学的に見たTCA回路について述べた後、考察に入ることにする。生物有機化学的に見たTCA回路については、有機反応論にアレルギーのある型は読み飛ばしていただいても結構である。でもね、これらの図を作るのは結構大変だったのです。読者にいくらかでも憐憫の情があるのであれば、目を通して頂きたい。

 図-2を見て欲しい。TCA 回路は通常はアセチルCoAから始まるように描いてるが、ここにはPEP即ちホスホエノールピルビン酸から描いている。前章に於いて、ミトコンドリア内に運搬されたピルビン酸を出発物質にすることを提案しておきながら、矛盾した行動のようだが、TCA 回路の意義を考える場合に青の矢印で流れ込む経路が無視できないからである。この話は後で説明するとして、ピルビン酸から先の反応をトレースすることにしよう。

 さて、ピルビン酸からアセチルCoAへの変換は図-3で示すように進行する。

図-3 ピルビン酸からアセチルCoAへの変換

 補酵素であるチアミンピロリン酸のちょっと変わった炭素アニオンが、ピルビン酸の2位のカルボニル基に求核的に付加反応を起こす。H+の処理にいくぶん問題が残るかもしれない描き方だが、そこは勘弁して欲しい。付加化合物が脱炭酸反応を起こして生成したエノール化合物は、窒素原子上の孤立電子対がN-C結合へと戻るときに、リポ酸の1位の硫黄原子を求核的に攻撃して、S-S結合の解裂を伴う付加反応を行う。付加生成物のチオアセタールの部分がカルボニル基を再生する反応に伴って、最初に反応していた補酵素(チアミンピロリン酸)の再生が起こる。

 リポ酸8位のチオールエステルのカルボニル基をコエンザイムAの末端に存在するチオール基が攻撃して、ジヒドロリポ酸が脱離すると同時にアセチルCoAへの変換への変換が完成する。(但し、このリポ酸は独立して動いているのではなく、この段階で働く酵素のリジン残基のε-アミノ基と結合した形で働いている)こう描くと初心者は難しく感じるかもしれないが、慣れればなんということはない。さらに、この部分が理解できれば、2-ケトグルタル酸からスクシニルCoAへの変換はほぼ同一の反応であるため、記憶は不要となる。最後になるが、アセチルCoAという言葉、TCA回路を炭素2単位のアセチル基を酸化する代謝系という意識で見ていると、アセチル基が主体であるかのように感じるが、アセチルCoAという分子の分子量809.6の中の43を占めているに過ぎない。言い換えれば、アセチル基を次の反応で機能させるにはCoA(コエンザイムA)という乗り物が必要だということを意味している。アセチルCoAという名詞の中で、アセチルは形容詞でありCoAが本体である。

 定義上、ここまではTCA回路には含まれない。解糖系とTCA回路を結ぶ上記の反応を経ることによって、ようやくTCA回路の入り口に辿り着いたわけである。

  TCA回路への異論 2 に続く

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田植えと草刈り

 昨年田植え機を買った。新品は田植えのやり方と、植える速度、さらに何条植えかによって変わってくるが、私が買った小さな4条植えであっても100万は優に超えてしまう。僕が買ったのはもちろん中古です。さほど末長く使うわけではないだろう。それはそうと、この田植え機にも沢山の切り替えるべきレバーとアタッチメントがあり、なかなか覚えるのが難しい。この難しさは、練習が出来ないことに起因する。たった3反の田んぼ、私は6時間ほどかかったが、慣れた人なら2時間かからずに済ませるだろう。では少し練習しようと思っても、田植えは年に1回しかない。トラクターであれば、何度か使う練習が出来るのだが、田植え機の練習は出来ないのである。乾燥した畑地で練習しようとしても間違いなく植え付けようの爪を痛める。練習できるような何も植えていないドブドブの田んぼなんてあるはずはない。記憶力の良い年代に馴染んでおかないと、歳をとってからの記憶はすぐに消失する。私、近くの農機具屋さんのTさんが気に掛けて見に来てくれるので、何とかやっている程度である。すべて人頼りの爺である。

 ということで、一昨に日田植えが終わった。トラクターと田植え機を洗い余った苗と苗箱を片づけて一段落と思っていたら、そうは問屋が卸さない。次の朝田んぼを見に行くと、ジャンボタニシがイネの苗に取りついて食い散らかしている。違法な堆肥を使うわけには行かない。慌てて農薬を買いに行く。ジャンボタニシ、別名スクミリンゴガイはなかなか判断の難しい生物である。確かにイネの幼苗を食べるので困った存在なのだが、大きくなったイネは食べない。イネが生長した後は、そこに生えてくる雑草の芽を食べる。つまり生きた除草剤になるのである。イネが少し大きくなるまでしばらく眠ってくれると有り難い。

 ということで開発された薬剤、スクミハンター(チオシクラム粒剤)という農薬が存在する。                          http://www.env.go.jp/water/sui-kaitei/kijun/rv/t06_thiocyclam.pdf https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000656918.pdf                本来はアセチルコリンエステラーゼを阻害する殺虫剤として開発された薬剤だが、これがジャンボタニシを殺しはしないが、その摂食動を抑制するという。もちろん殺す農薬があるのだが、ここは共存共栄でいくことにした。3反の田んぼで、イネが水に浸かっている部分にだけこれを散布した。エスカルゴの代用品にしようと狙った業者がこの貝を輸入し、養殖を始めたもののうまく行かず、養殖場を放棄したのが原因で西日本の31府県に広がったという。原産地は南米、日本には台湾の養殖業者を経由して入ったらしい。塩ゆでした後、白ワインで煮込んで臭みをとりニンニクなどの香辛料を加えてバター焼すると、結構いけるという話は聞いているが、寄生虫がいるという話もあり食料難になるまでは食べる気にはならない。

 今日はゴーヤ畑の草刈り、乗用草刈り機で約1500坪を刈った。とはいえ、畑として使っているのは300坪くらいかな。残りは草だけでも切ってくれという地主さんの要望で切っている。半分は元がブドウ畑だったので番線が張ってありコンクリート製の支柱が立っていのだが、老朽化しておりいつ倒れてくるか分からない。恐怖である。残り800坪程はナシ畑だったためかなり大きなナシの木が生えている。ナシをまともに作れば3〜400万くらいの収入になるとは言われているが、私に作る気はない。冬場の剪定と整枝、春先から続く農薬散布、受粉、摘果、収穫を考えれば体力的に無理であるだけでなく、農薬散布用のSSつまりスピードスプレイヤーが必要になる。スピードスプレイヤー、自分が農薬のミストを浴びないようにしようと思えばキャビン付きの物を買わねばいけない。そうするとレクサスRXくらいの価格になる。

 支柱や木が生えていると、乗用草刈り機での作業はすごく難しくなる。1500坪、何にもなければ2時間もかからずに終わると思うが、今日いや昨日は5時間くらいかかった。でもまだ終わったわけではない。支柱や木の周り、さらには外周に残っている草刈りに同じくらいの時間がかかるだろう。その部分の草刈りはエンジン式刈り払い機を使っての作業となる。帰ったら、1.5Kg程体重が落ちていた。草刈りはここだけではない、あと2000坪ほど残っている。年寄りの冷や水、そう言われても反論は出来ない。ああまた夜更かしをしてしまった。もう寝よう。

掘り上げたジャンボタニシならぬジャンボニンニク 大きいものは1本で1キロを超えます。今年は、葉枯れ病が蔓延したため一寸小振りなものが多くなっている。左側の草の中で育った、野性味満点の品なのだが、通販で売ろうとすると重たくて送料ばかりかかります。葉っぱの部分はなかなか乾かないため焼却は無理、処分が大変。
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代掻き終了

 数日前荒代掻きをした。キャビン付きのトラクターを使って3時間弱、まあ少しはトラクターの取り回しに慣れてきたという所である。還暦を過ぎて初めてトラクターに乗った。世の中の殆どの人と同じように、トラクターとは乗って耕せばいいと思っていた。ところが、ノンビリと耕しているように見えるトラクター、見た目とは違って細やかな気配りと高度な技術そして数学的才能を必要とする。私のトラクターヤンマー製の23馬力のキャビン付きのもので、一応エアコン付きである。主変速は前進3速後進1速、その各ギアに4段階のギアがある。ハンドアクセルもついている。簡単に言えば前進12速後進4速で足と手に合わせたスロットルがあるいうことになる。そこに、ロータリーの回転速度が1〜3速と逆転1速がつく。これに加えてローターに上げ下げと位置調整、前部バスケットの上げ下げとすくいと持ち上げ、ローターの水平調節、倍速ターン、バック時の自動ロータ上昇スイッチ、などなど、もちろん車と同じく前照灯のスイッチ、ワイパースイッチ、戻りのない方向指示器、ラジオのスイッチなどもついている。まだ使い方の分からないものがいくつかある。

 私も自分が乗るまでは全く知らなかったのだが、トラクターで作業をする場合曲がってはいけないというのが基本である。もちろん曲がらないと往復できないのだから、曲がるには曲がるのだが、その際ロータリーを下ろしていたら土をえぐって凄まじいことになる。慣れない時にこれをやって、土を元に戻すのにスコップとクワで奮闘した記憶がある。さらに、耕耘の初めにロータリーを下ろす時は後ろに土の山が出来るし、上げる時には溝が出来る。ロータリーの上げ下げをうまくできるようになるにはかなりな経験が必要なのである。こうして出来た土の山を元に戻すには、ローターを順回転にしてバックするとか、逆回転にして前に引っ張るとか色々な技術があるのだが、まずローターを目的とする土の上に置きながら動作をさせる必要がある。なんとも奥が深い。近所にトラクター乗りがすごく巧いというという人がいる。彼が耕しているのを見つけたら、必ず軽トラを止めて観察することにしているのだが、なかなか上達しない。

 前荒代掻きから3日目に代掻きをした。私の田は粘土質で一つ間違うとトラクターが動かなくなる。今年は、安全な部分を先に述べたトラクターを使い、周辺のやりにくい部分は小型のトラクターを使った。それでも悪戦苦闘したのだが、やっていると田んぼの中にスッポンがいた。これは困る。トラクターで走ればまず間違いなく殺してしまいそうだ。何も知らずにそうなったのなら諦めが付くが、知った上で殺したスッポンの死体を見ながら田植えなんてやりたくない。ドブドブの泥の中を潜って逃げるヤツを孟宗竹を使って掘り起こし、少しずつ誘導しながら畔に追い上げ、横を流れている川に逃がしてやった。一時間くらいかかった。スッポンも疲れたと思うが、ドロドロの土の中をサイズの合わない長靴を履いて奮闘したこっちも疲労困憊である。夕刻7時頃に代掻き終了、1〜2日置いて土が落ち着いたら田植えである。暑くならなければいいのだが、数日晴れが続きそうである。

 新型コロナとワクチン擬の話ばかり書いてきたが、イギリスの英国航空ではワクチンを打ったパイロットが5人亡くなったと聞く。デルタ航空でも3人が亡くなったそうだ。アメリカン航空でも従業員の病欠で土曜日は123便、日曜日は178便が欠航し、6月中は少なくとも毎日50〜60便、7月も50〜80便がキャンセルし続ける可能性があるという。大丈夫かね。

 そんなことばかり考えていると気分が暗くなる。鬱々とした気分で生活すると、罹らなくても良い病気に罹りそうだ。少しリラックスしよう。懐かしいハーモニカの音でも聞くかな。

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