H. A. Krebsにより提唱された、糖、脂肪酸、ケト原性アミノ酸の炭素骨格を酸化する代謝経路。好気的な条件下でエネルギー獲得に中心的な役割を果たす。真核生物ではミトコンドリア内(マトリクス)で行われる。すなわち、クエン酸回路に関与する酵素はマトリクスに存在する。唯一、コハク酸デヒドロゲナーゼはミトコンドリア内膜に存在する。炭素骨格を酸化する過程で、補酵素NAD+やFADを還元して、NADH+H+、FADH2を生成する。生成した還元型補酵素は、電子伝達系での酸化的リン酸化によりATPの産生に利用される。糖、脂肪酸、ケト原性アミノ酸由来のアセチルCoAは、クエン酸シンターゼの作用で、オキサロ酢酸と縮合しクエン酸を生じる。クエン酸は、順次、(cis-アコニット酸)、イソクエン酸になったのち、脱水素的脱炭酸を受け、2-オキソグルタル酸になる。さらに、脱水素的脱炭酸、CoA の脱離、脱水素、加水、脱水素などの反応を順次受けて、スクシニルCoA、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸を経て、オキサロ酢酸に変換される。回路が1回転するあいだに、クエン酸を酸化し2分子の二酸化炭素を生じるので、アセチルCoA由来の炭素骨格は完全に酸化されることになる。脱水素反応により補酵素を還元して、NADH+H+を3分子、FADH2を1分子産生する。また、エネルギー的にATPと等価のGTPを1分子産生する。(2005.10.25 掲載)(2009.1.16 改訂)
KEGGによる定義
The citrate cycle (TCA cycle、 Krebs cycle) is an important aerobic pathway for the final steps of the oxidation of carbohydrates and fatty acids. The cycle starts with acetyl-CoA、 the activated form of acetate、 derived from glycolysis and pyruvate oxidation for carbohydrates and from beta oxidation of fatty acids. The two-carbon acetyl group in acetyl-CoA is transferred to the four-carbon compound of oxaloacetate to form the six-carbon compound of citrate. In a series of reactions two carbons in citrate are oxidized to CO2 and the reaction pathway supplies NADH for use in the oxidative phosphorylation and other metabolic processes. The pathway also supplies important precursor metabolites including 2-oxoglutarate. At the end of the cycle the remaining four-carbon part is transformed back to oxaloacetate.
しかし、大きな問題が二つあると考える。一つは、TCA 回路が好気的であるのかどうかという問題である。薬学会の定義に於いては、「糖、脂肪酸、ケト原性アミノ酸の炭素骨格を酸化する代謝経路であり、好気的な条件下でエネルギー獲得に中心的な役割を果たす。」と明確に書いてある。KEGGにおいても「Krebs cycle is an important aerobic pathway for the final steps of the oxidation of carbohydrates and fatty acids. クレッブスサイクルは炭水化物や脂肪酸を酸化する最終段階の重要な好気的経路である。」と述べている。その他にも色々な書籍を参照してみたのだが、すべて好気的過程であると書いてあった。どうやら、TCA回路が好気的代謝系であるという位置づけに対して違和感を感じる人はいないらしい。