新型コロナ・・・その後

 新型コロナ感染症、PCR検査、ワクチンモドキについて、何度か妄想論というか陰謀論とでも受け取られかねないブログを書いてきた。最後の記事を書いて少し時間が経ち、新しい情報も増えてきたので、少しばかり情報をまとめ始めていたのだが、一昨日、アメリカのCDCがコロナの診断にPCR検査を使うことを定めた昨年2月の緊急措置を今年末で解除すると発表した。その理由を読んで、天を仰いで絶句したのだが、まあ興味のある人は自分で記事を探して呼んで下さい。

 それはそうと、今朝、「田中宇の国際ニュース解説」の最新記事に「PCR検査をやめ、より巧妙な誇張へ?」と題するまとめ記事が掲載されていた。私の意見とほぼ一致している。前文をそのままコピペするのは私のポリシーに合わないと思うし、筆者への断りなしにそんなことをすべきではないと思うのだが、時期が時期であるのでそのまま掲載することにした。筆者へは、何らかの了承を求めるだけでなく、彼のサイトの購読者となることで納得してもらう予定である。


PCR検査をやめ、より巧妙な誇張へ?2021年7月29日   田中 宇
7月21日、米政府で新型コロナ対策を担当しているCDCが、コロナの診断にPCR検査を使うことを定めた昨年2月の緊急措置を今年末で解除することを発表した。PCRでなく、他の各種の検査を使ってコロナを診断するのが良いとCDCは言っており、PCRから他の検査方法に替える期間として12月末までの5か月間の猶予を設けた。昨年2月に中国発のコロナが世界に拡散して以来、PCRはコロナ感染者を判定する最重要な検査方法として日米を含む世界で使われてきた。世界を主導する米国のCDCが今回、そのPCRをコロナ判定の検査方法として使わないように変えた。 (CDC Seems To Tacitly Admit PCR Tests Can’t Differentiate Between COVID And The Flu)その理由について、CDCの発表文は明確に書いていないものの「(PCRに代わる新たな検査法として)CDCは、新型コロナとインフルエンザとを区別して検出できる多重型の検査方法を各検査所が導入することを推奨する」と書いている。これは読み方によっては、PCR検査がコロナとインフルエンザを区別して検出できず、混同してしまうことが多発するので、CDCがPCRへの推奨をやめて、コロナとインフルとを混同せずちゃんと区別して検出できる他の検査法への切り替えを進めることにした、と推測できる。そうではなく、単にコロナとインフルの両方を1回の検査で判定できる方が便利だから、両方判定できる他の検査法に切り替えるこにとした、とも読めるが、すでにこの1年半でPCR検査が世界的に普及しているのだし、インフルエンザの検査もすでに世界的に普及しているのだから、わざわざ1回で両方を判定できる新しい検査を新たに定着させる必要はない。 (Lab Alert: Changes to CDC RT-PCR for SARS-CoV-2 Testing)PCR検査が、新型コロナだけでなくインフルエンザ(やその他)のウイルスなどに対しても陽性反応を出してしまうのでないかという疑いは以前からあった。私も記事にしている。コロナ発生後の昨冬、世界的にインフルエンザの患者数が前年より99%少ない状態で、PCRにってインフルがコロナと誤診されていた可能性が高い。PCRは判定時の増幅数を上げすぎると過敏な状態になり、コロナのウイルスが存在していないのに存在しているという結論を出してしまう「偽陽性」が過半になる。米国の研究では、増幅数が25サイクルだと陽性の70%が偽陽性、35サイクルだと90%が偽陽性だった。日米などで採用されていた40サイクルだとさらに偽陽性が多く、陽性者の中に真のコロナウイルス保有者がほとんどいないことになる。偽陽性の中にインフルのウイルスを新型コロナと誤判断してしまうケースが入っている疑いがある。 (コロナ危機を長引かせる方法)CDCなど各国の政府やマスコミ・権威筋は、PCRによる判定が偽陽性満載であることや、インフルがコロナと誤診されていると疑う考え方などを無根拠な陰謀論と一蹴・攻撃し、全く真面目に考えようとしてこなかった(PCRの専門家は当初から警告していたのに無視されてきた)。新型コロナの脅威が誇張されているという考え方自体がマスコミ権威筋にとってタブーだ。CDCは今回、コロナ判定にPCRを使うことの超愚策性・インチキさについて真面目に考える姿勢をとらないまま、代わりに上で紹介した曖昧な示唆をしつつ、PCRへの奨励をやめていく。CDCがPCRをコロナ判定用に使い物にならないと半ば認めたことは確かだ。日本など他の諸国も、何も説明せずにPCR利用を縮小していきそうだ。 (Why Is The CDC Quietly Abandoning The PCR Test For COVID?)PCRの代わりにどんな検査法が主流になるのか。ひとつ興味深い展開がある。CDCがPCRへの奨励をやめると発表する2日前の7月19日、「慈善事業」で有名な大金持ちの2人、ビルゲイツとジョージソロスが合弁し、コロナなどの検査製品類を開発販売してきた英国のモロジック社を買収すると発表した。ゲイツとソロスは、モロジックの事業を拡大し、コロナやその他(コロナが終わったら蔓延させる次の感染症とか?)の検査製品を安価に全人類が使えるようにする「慈善事業体」に変身させていくのだとマスコミが称賛している。 (CDC Declares PCR Tests Must Go Immediately After George Soros, Bill Gates Buy COVID-19 Test Manufacturer) (Bill Gates and George Soros back acquisition of UK diagnostic technology group Mologic)しかし、今回CDCがコロナ判定の検査としてPCRを捨てた後、次の検査法の主流の一つとしてモロジック社の製品が普及していくのだとしたら、どうだろう。ゲイツとソロスは、CDCの決定を発表前に知り、企業価値がこれから急拡大していくとわかった上でモロジックを買収する違法なインサイダー取引をやって、これからの大儲けを確定させたことになる。慈善事業(良いこと)のふりをした極悪なぼろ儲けになる。「極悪なことこそ良いこと」。ジョージ・オーウェルの1984的な世界。実際にモロジックの検査製品の利用が急拡大するかどうかは不明だが。 (George Soros and Bill Gates are helping to turn Mologic into a social enterprise)上で「PCR検査は偽陽性99%」みたいなことを書いたが、偽陽性が99%としても、残りの1%は真の陽性、本当のコロナ感染者である。だがそもそも、最初の武漢での発祥から1年半が過ぎた今、新型コロナのウイルスが、ある程度の発症力のあるものとして世界にまだ存在していると考えること自体の妥当性を考えてみる必要がある。コロナウイルスは一般的に、ヒトからヒトに感染していくうちに、感染力は強いが病気としての重篤性が弱いものにどんどん変異していき、発祥から1年も経つころには、みんな感染(というより咽頭付着)したが誰も発症しない弱いものになる。発症しなければ病気でないので、そのコロナウイルスは事実上消滅してしまう。2003年に中国から世界に広がったSARSのコロナウイルスは、発祥から数か月後に忽然と消滅した。 (The Great Big Delta Scare)それなのに今回の新型コロナは、発祥から1年半たった今も「デルタ種」なる変異株が世界中で「猛威」をふるっていると喧伝されている。変異すると感染力は強まるが、重篤性は下がる。新型コロナが、従来のコロナウイルスと違って1年半後もある程度の病原性・発症力を本当に保っているのなら、なぜそうなるのか権威ある専門家が研究して納得できる仮説が出てくるはずだが、それもない。ないということは詐欺が疑われる。デルタ種の「猛威」は、本当のことなのか。それともPCR検査の偽陽性や、都市閉鎖やワクチンの「効果」と同様、マスコミ権威筋が猛烈に誇張して軽信させた人々の頭の中にある「妄想」なのか(「妄想こそ事実。事実こそ妄想」も1984的だ)。 (Do Not Buy the Covid Delta Variant Propaganda)私は「新型コロナはすでに病気として消滅している」と推測している。昨年夏ぐらいまでは新型コロナで本当に発症した人がいただろうが、その後は他の病気で発症した人がコロナと誤診されるだけになり、人々の症状が針小棒大に喧伝され、軽信的な人々に恐怖心を植え付け続けた。長期の味覚喪失とかだるさとか、新型コロナ特有の症状といわれているものも、実は特有でなかったりする。 (NYT says covid virus has been eradicated, now it’s “unvaccinated” people who are making others sick with their mere existence)新型コロナを世界に広げた国際勢力(WHOなどを傘下に持つ覇権運営体。欧米だけでなく、中国もこの運営体の一部)は、最初からコロナ危機を何年も続けるつもりだったので、病気として消滅しているのに猛威をふるっていると世界の人々に軽信させられたのは「大成功」である。英国で入院したコロナ感染者の大半が、コロナと診断されて入院したのでなく、他の病気で入院した後、コロナ検査したら(偽)陽性になった人だった。コロナ患者の大半は実のところ他の病気の患者である。陽性者のほぼ全員が偽陽性だ。 (Over half of Covid hospitalisations tested positive after admission) (Pseudopandemic)偽陽性満載のPCR検査がこれからコロナ判定に使われなくなると、事態が改善するのか?。たぶん違う。PCR検査は、もともと感染症の判定用に使うべきでないと専門家に警告されており、増幅度を過剰に引き上げることで意図的に偽陽性だらけにしていることが、早い段階からバレていた。これでは完全犯罪に程遠い。稚拙すぎる。もっと巧妙でブラックボックスが多い検査体制に転換し、コロナ危機の意図的な長期化を完全犯罪にしていかねばならない、と国際勢力が考えても不思議でない。モロジック社の検査製品が使われるのかどうかわからないが、次の主流の検査体制は、PCRよりも突っ込みどころの少ない、不透明なものになるのでないか。 (Three in 10 Americans Think Pandemic Is Over in U.S.) (都市閉鎖の愚策にはめられた人類)コロナワクチンの話はあらためて書きたいが、米国でも日本でも、ワクチン接種が進むほど、感染者が多く出る展開になっている。ワクチンが本当に効くのであれば、今の日本のように接種者が増えていくと集団免疫の状態になり、感染者が減っていくはずだ。しかし現実は逆で、接種者が増えている首都圏の3県に非常事態宣言が出される。ワクチンは効いていない(偽陽性者=感染者にされるので前提が不合理だが)。米国の調査では、接種者のうち一定割合の人々が接種によってむしろ新型コロナに感染しやすく、他人に感染させやすくなったことがわかってきた。早々と国民に接種を強要したイスラエルでは、ワクチンの効果が半年で急低下するので4-5か月ごとの接種が必要なこともわかっている。新型コロナという病気がもう存在していないのなら、これらの話も言葉通りに受け取れない。考えを整理し、あらためて書く。世界的に、コロナよりワクチンでの死者の方がはるかに多い。 (New Evidence Suggests COVID Vaccine May *SPREAD* the Virus: NBC News Report Deleted from USA Today Article) (California Counties See COVID Cases Rising In Most Heavily Vaccinated Counties) (Israeli Data Suggests Protection From Vaccines Drops Down to Nothing After Just 6 Months) (The Most “Vaxxed” Countries Have Highest Incidence Of Covid) (Why most people who now die with Covid in England have had a vaccination) (Covid Vaccines are killing people at a 79% higher rate than Covid-19 in the UK according to statistics
田中宇の国際ニュース解説より引用

  情報源を日本のマスコミだけに頼ってきた方々には、飲み込みにくい点がいくつもあると思う。ビル・ゲイツやジョージ・ソロスの持つ世界観についての記述が欲しいなと思うが、それを書くと妄想論として切り捨てられる危険性を考え、安全な所で筆を置いたのだろう。この一文は、大筋として正しい視座に立っていると考える。今後、少し時間をかけて私のコメントを追記して行く予定である。

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TCA回路への異論 5,5

 まず図10をよく見て欲しい。ピルビン酸からオギザロ酢酸の4位に取り込まれたC13からなる二酸化炭素は、TCA回路を回るにつれα-ケトグルタル酸の1位のカルボキシル基となり、コハク酸へと脱炭酸される際にCO2として再放出されることになる。

図10 ピルビン酸に取り込まれた二酸化炭素は2-Oxoglutarate(α-ケトグルタル酸)からコハク酸への段階で系外に放出される

 ところが、図の内側に示したように農業生物資源研究所のサイトに掲載されている図によれば、ピルビン酸に取り込まれたC13はα-ケトグルタル酸の1位と5位に分布し、TCA回路を流れるように描いてある。ラベルされた5位のカルボキシル基はコハク酸の段階で位置情報を失い、リンゴ酸からオギザロ酢酸の二つのカルボキシル基に再配分されたあと、アスパラギン酸へ、あるいはホスホエノールピルビン酸を通ってセリンやグリシンへ、ピルビン酸を経由してアラニンへと変換されることになっている。

図-9 大気中の二酸化炭素をカイコが繭糸を構成するアミノ酸の中へ取り込む代謝回路のモデル図

 どこか、何かがおかしいのである。問題はアセチルCoAのオギザロ酢酸への付加反応を触媒する酵素が面選択制を持つかどうか、今ひとつの問題はクエン酸からシスアコニット酸への脱水反応を触媒する酵素がプロキラルな位置にある二つのメチレン基を区別できるかどうかの問題である。前回書いたように、最初のアセチルCoAのオギザロ酢酸の2位のカルボニル基への付加反応はsi面側から選択的に起こることが知られている《Biochemistry, 29, 2213-2219(1990)》。

 この二つの反応は酵素反応における立体化学的制御という視座から見るととても面白いし、うまく伝えることが出来れば教育的にも有効な題材になる。図11のアセトン、酸素原子を下に置き少しだけ回転させた形で書いている。このカルボニル炭素をNADHに由来する水素化物イオンが攻撃する場合、アセトンの二つのメチル基と酸素原子が作る平面の右側から攻撃する場合と(A系路)と左側から攻撃する場合(B系路)が存在する。生成物はいずれも2-プロパノ−ルであり、2-プロパノールには不斉中心は存在しないのでA系路を通ろうとB系路を通ろうと生成物は同じものである。こういう場合、アセトンにはプロキラリティ−が存在しないという表現をする。

図11 オギザロ酢酸に対するアセチルCoAアニオンの付加反応

 ところが、アセチルCoAがオギザロ酢酸へ付加反応を行いクエン酸を与える反応においては、そんなに簡単には行かないのである。右側の上部に書いた二つのオギザロ酢酸、一応鏡像体になるように描いているが、この分子には不斉炭素は存在しないので(I)と(II)は同じものである。しかしながら、この二つの式のカルボニル炭素に結合する原子につきCahn-Ingold-Prelogの順位則に従って順番を付けると、左側の図においては右回りになり左側の図においては右回りとなってしまう。このようにある面から見ると結合する原子群の順位が右回りになる場合、その面をre-面、反対になる場合をsi-面と定義する。そこでだが、次に描いた式(II’)は立体化学の表記法から余り褒められたものではないが、カルボニル基の炭素原子と酸素原子の結合軸を中心にして60度程度向こう向きに回転させた図であるとしてみて欲しい。この分子のカルボニル基に対して、アセチルCoAのアニオンが付加するのだが、この反応はsi-面側から起こる。

 そうするとクエン酸(III)が得られるのだが、困ったことがある。いや別に困るわけではないのだが、クエン酸は不斉炭素を持たないのである。従って、元からあるカルボキシメチル基と、アセチルCoAに由来するカルボキシメチル基は通常化学的には区別できない。(こういって良いかどうか一寸不安です。カルボキシメチレン基という言い方があるのだろうか?)そのため農業生物資源研究所のサイトの図が成立しそうに思えるのだが、自然界は少々意地悪である。その話に行く前に、カーン・インゴルド・プレローグ順位則において、同位体については質量数の大きいものが小さいものより順位が高い。現実の話をすれば、ピルビン酸へ取り込まれた13CO2はオギザロ酢酸の4位に入るのだが、そのほとんどは12CO2に由来する炭素原子である。つまりここで生成するクエン酸は(III)は(IV)の混合物であるということになる。そして、12CO2に由来するカルボキシル基を持つクエン酸(IV)においては不斉炭素は存在しないが、13CO2に由来する由来するカルボキシル基を持つクエン酸(III)の3位の炭素は不斉炭素となり、その立体配置はRであるということになる。尤も、同位体効果という現象があるとはいえ、この13Cを持つカルボキシル基が、次の脱水反応の起こる位置に影響することはないと考えてよいだろう。

 そこでだが、不斉中心を持たないクエン酸 (IV) において、二つのカルボキシメチル基を(A)(B)と区別して考えることにする。何をしようとしているかといえばプロキラリティ−の概念を導入しようとしているわけである。プロキラリティ−にも色々な種類があるのだが、ここで述べるのはsp3混成軌道を持つ炭素上の 4個の置換基が、CX2YZ というように、2つの同じ置換基 X と、異なる 2つの置換基 Y、Z からなる場合、その炭素は光学活性中心ではない。しかし、X が新しい別の置換基 W に置き換われば CWXYZ の形となり光学活性中心となる。そこでCX2YZ 上にある 2個の X について、それらをどう区別するかが問題となるわけである。

 大したことではない。2個の置換基 X のうちどちらかをもう一個のXよりも高いものと仮定したあと CIP則を適用し、優先順位を決める。仮の優先順位に基づき、RS表記法にしたがって中心炭素のキラリティが R か S かを決めるのだが、仮のキラリティーがR体だった場合は、そのときに優先させた X を pro-R の置換基と、S体だった場合はpro-S の置換基と称する。クエン酸においては二つのカルボキシメチル基がこのXに当たるわけである。そうしてpro-Rpro-Sに対応するカルボキシメチル基を決めると図11も右下のようになる。つまり、オギザロ酢酸の4位にあったカルボキシル基はpro-Rのカルボキシメチル基となりアセチルCoAに由来するカルボキシル基はpro-Sのカルボキシメチル基になっているのである。これと反対の配置の化合物を作る酵素もあるのはあるのだが、嫌気性の微生物に存在しているもので、カイコには存在しない。

 pro-Sとかpro-Rとか鬱陶しいな、それがどうしたという声が聞こえてきそうなのだが、ここは重要なステップとなる。アキラルなクエン酸からcis-アコニット酸への変換は、トランス脱離反応で脱水が起こり pro-R側のカルボキシメチル基側に二重結合が形成される《Proc. Natl. Acad. Sci., 93, 13699-13703 (1996)》。そこではたと困ってしまうのである。pro-R側の側鎖はオギザロ酢酸の4位のカルボキシル基を含む。そのカルボキシル基のαβ位に2重結合が導入されるのであれば、逆向きの水付加に続く基質レベルでの酸化、さらに続いて起こる2度の脱炭酸反応によって、オギザロ酢酸由来のカルボキシル基は二酸化炭素として放出されてしまうではないか。つまりせっかく固定された13Cはこの段階で失われてしまうことを意味している。

 実は脱水反応がトランス脱離で起こる、続く反対方向での水の付加反応とこの時生成する2位の水酸基と3位の炭素の立体化学、2位の水酸基の基質レベルでの酸化に伴う2位の炭素とこれに続く脱炭酸の伴う3位の炭素の不斉の消失、さらにもう一段階、αケト酸の脱炭酸と、興味深い反応が続くのだが、余りこの手の話を続けても私だけでなく読者も疲れるだけだと思うので、興味のある方は自分で文献をあさって欲しい。

 つまりここまでの議論で何が言いたいかといえば、、ピルビン酸と13CO2との反応で形成されたオギザロ酢酸からTCA回路を回して、アラニン、セリン、グリシン、アスパラギン酸を姓合成するとした場合、これらのアミノ酸のカルボキシル基に、13Cが含まれるとする論証には無理があるのではないかというのが私の意見である。しかしながら、13CNMRのデータは、これらのアミノ酸のに13Cが含まれていることを示している。どう考えればこの矛盾を解決できるのだろうか。

 久しぶりに立体化学的に反応を考えたのだが、昔は構造式を見ると頭の中で立体構造が浮かび、これを回転させたり反転させたり自由にできていた。ところが今回、ChemDrawで描こうと思ったら、一度紙に描いてからでないと間違うのである。しばらくやっていなかったからなのか老いたのが原因なのか分からない。一日中草刈りと草取りしかやっていないのだから、仕方がないだろう。例年なら少し奥山に移動しているはずのホトトギスが降るように鳴いている。日中の温度は35℃を超え目がくらむような毎日だが、その中で聞くクマゼミとアブラゼミは3℃くらい気温を上げそうだ。7時近くになると遠くでヒグラシが鳴き始める。これはそれなりに風情があっていいものだ。

 とはいえ世情は囂しい。ヒグラシではなくその日暮らしの人が増えているようだ。何か出来ないかと考えてはいるが、個人で出来ることは高がしれている。新聞は暑苦しいスポーツ新聞に変身した。いや、スポーツ新聞の方がまともな記事を書いている。一日中、土に触れているので精神状態は安定しているが、町中に住んでいたら毎日山にでも行っていただろう。ハーモニカをいくつかバインドして縦向きにしたようはマンションには決して適応できない私がいるわけだ。何とかして、ヒグラシがカネカネカネと悲しく鳴かずに済む社会をと願っている。

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今日からオリンピックだそうだ

 伝聞の形で書いているが、その通りである。不祥事の連鎖で、見る気をなくしてしまっていた。スポーツは嫌いなわけではない。下手であっても見るよりするほうが楽しいと思っていたのだが、「おもてなし」、「アンダーコントロール」、「晴れる日が多く温暖でアスリート に最適な気候」、あと色々あるが、余りにも醜く騒がしい招致合戦、それに続く不祥事の連続で、賛成とか反対とかいう以前に、目を背けたい気分になっていたわけだ。

 それにしても、協賛企業の社長が次々に欠席を表明、招致の中心人物である前首相まで欠席だそうだ。何だかいやな気配である。その場にいるべき人がいない、そして何か起こる、見慣れた図式である。いや陰謀論です。国立競技場の前に立つエンブレム、デザインが良いとか悪いとか専門的なことは分からない。だが、明るさに欠けるのである。最初に見た時、葬儀場の入り口を連想した。全く興味のないオリンピックだが、事故やテロや傷病者を出さずに、静かに終わってくれることを願っている。新聞社もスポーツ新聞社に衣替えすることなく、本来の報道機関としての仕事をして欲しいな。

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タマホーム

 タマホーム(株)の玉木伸弥社長(42)が、社内に事実上の“ワクチン禁止令”を出しているという記事が週刊文春に出たことで、結構大きなニュースになっている。ヤフーニュースから引用したい。

 「接種したら無期限の自宅待機」タマホーム社長が社員に“ワクチン禁止令”

大手住宅メーカーのタマホーム(本社・東京都港区)で、玉木伸弥社長(42)が社内に事実上の“ワクチン禁止令”を出していることが「週刊文春」の取材で判明した。複数の現役社員らが社内資料やメールを基に証言した。

 今年7月上旬、玉木社長は、幹部らが参加するオンライン会議でこう訴えた。

「世の中がなんと言おうとも、ワクチン接種に反対です!」

 約1カ月前の6月初旬、ほぼ全社員がオンラインで視聴した「経営方針発表会」ではこんな一幕があった。玉木氏が突然、「ワクチンを接種したら5年後に死にますからね」と口走ったというのだ。社員のA氏が明かす。

「ギョッとしました。その後『5Gがコロナ感染を引き寄せる』という意味のことも言いました。まったく理解できず、不穏な予感がしました」

 6月中旬には、玉木氏は幹部に対し「ワクチンを接種した場合は無期限の自宅待機」

「(自宅からの社用)PCへのログインは禁止」などのルールを伝えたという。

 ある支店に勤務する社員の親族・B氏が語る。

「ワクチンを打てば出社を拒まれ、それでも働きたければ『モデルルーム周辺の草むしり』や『配置転換』と言われ、閑職への異動がほのめかされるそうです。表向きは『打つか打たないかは個人の判断』とも言っているようですが、実質は『打つな』に等しい。持病があって早めに打ちたい人もいるのに、理不尽です」

 その後に配布された、7月6日付の社内資料にはこう記されている。

「感染拡大防止対策に関する社内ルールに違反した場合、自宅待機を命じる」

「自宅待機期間中は欠勤(無給)扱いとする」

 社員のC氏が語る。

「この資料自体はワクチンに関する記述を避けて作られています。ただ、普段からワクチンを打てば自宅待機と言われているため、『自宅待機=無給』はワクチンを打った際にも適用されると多くの社員は理解しています」

労働基準法違反、パワハラ行為に当たる可能性
 労働問題に詳しい旬報法律事務所の佐々木亮弁護士が解説する。

「会社側の都合で社員に自宅待機を命じた場合、基本的に賃金は100%支払わなければいけません。本当に無給にした場合、労働基準法24条に違反する可能性があります。また、ワクチン接種をしたらペナルティーを与えるというのはパワハラの類型の一つである『個の侵害』にあたります。個人携帯の5Gオフを強制したとすれば、それも社員のプライバシーに立ち入って嫌がらせをするパワハラ行為と言えます」

 タマホームの広報担当は、「私どもは7月15日に(ワクチン対応に関する誤った書き込みについて、と題した)リリースを出しており、今お答えできるのはそれがすべてです」と答えた。

 そのリリースには、

「当社の新型コロナワクチン対応に関する誤った内容を記載した、匿名での書き込みがTwitterや掲示板上にてなされております。当該一連の書き込みでは、当社が社員に対し『新型コロナワクチンを接種しないよう強要している』『新型コロナワクチンを接種した場合、懲戒解雇にすると発言している』といった内容が書かれておりますが、そのような事実は一切ございません。新型コロナワクチンの接種につきましては、個人の判断に委ねております」と書かれている。

 だが、接種した際に自宅待機となることや、社用PCにもログインできず業務が事実上できなくなることなどには一切言及していない。

 コロナ感染が拡大する中、東証1部上場で年間売上高2000億円を誇り、3400人超の社員を抱える大手企業の“ワクチン禁止令”は、議論を呼びそうだ。

 7月20日(火)16時配信の「週刊文春 電子版」および7月21日(水)発売の「週刊文春」では、タマホームの社内の様子を伝えるさらに詳細な証言や、玉木社長の人柄、米大統領に絡む驚きの指示などを報じている。

「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年7月29日号

 ヤフーニュースも週刊文春電子版と週刊文春からの引用なのだが、このニュースに対して14,000件近いコメントが寄せられているし、いろんな所で物議を醸していると聞く。そこで、この社長の言い分についてだが、私もあれこれと情報をあさっている人間であるから彼の発言のネタが何処にあるのかは知っている。信憑性の高い部分もあれば、何となくまだ腑に落ちていない部分もある。さて、タマホーム(株)、従業員数は3,500人弱である。常識的に考えれば、ワクチンを信頼している多くの社員がいることは容易に推測できる。とすれば、彼の発言がこうした騒ぎになることは容易に予想できたはずで、余りにも不用意であったことは間違いない。この記事が出たことが原因で同社の株価は314円(ほぼ10%)急落した。

 今後、ワクチン接種に賛成の社員と反対の社員、ワクチン接種に賛成の顧客と反対の顧客、さらには様子見の中間派の社員と顧客が、「ワクチン打ちましたか」と、腹の探り合いのような挨拶から商談に入るわけで、事態がどう推移して行くのか予想は難しい。この騒ぎを契機として、社内ではワクチン不接種を強制する動きは抑制され自己判断を尊重するという形で落ち着くことは間違いないだろう。従って、株価はじきに戻るのではないかと予想している。ただ、相手は「週間文春」である。まだ隠し球があるかもしれない。

 さて、加藤勝信官房長官は21日の記者会見で、大手住宅メーカー社長が社内に事実上のワクチン禁止令を出しているとの週刊文春報道に関し、「国民が自らの判断で接種してもらうことが大前提となっているわけで、そうした環境をつくることが重要だ」と強調したそうだ。迅速な対応でありかつ正論である。余りにも正論過ぎて、ケチをつける所がない。こんな書き方をすると何かありそうだと勘ぐる人がいそうだが、その通りである。世の中、ワクチンを打ちたくないにも関わらずワクチンを打たないと仕事を続けられないという悩みを持つ人の方がはるかに多い。今回の事件、一部上場企業の社長発言に端を発したものでニュースバリューが大きかったため、政府の反応が速かったと理解しているが、接種するかどうかは国民自らの判断に基づくという観点から、逆のケースに対する言及も必要であったのではないか。

   

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歴史生物学 TCA回路への異論 5

 要するに、大したことを云っているわけではない。TCA回路と電子伝達系は分けて考えるべきであり、その場合のTCA回路は嫌気的回路と考えないと、解糖系の定義のやり方と矛盾するではないかという指摘をしているだけである。ただし、これを認めると今まで続いてきたTCA回路もしくは解糖系について、どちらかの定義の修正が必要となる。過去に出版されてきた多くの書籍や報告の修正は、JRの駅名の変更のようにとてつもなく大変な作業を伴うのでそんなことは出来ないに違いない。万一認められたとしても、「まあそういう理解もあるよね」というなんとも生温い判断の下で、そっと放置される蓋然性が高い。現段階において私の意見はかなり高い確率で没になる少数意見であることは自認している。とはいえ、こうした異なる視座からTCAサイクルを見たらどうなるのか、もう少し議論を進めてみることにする。

 いまひとつの問題は、細胞内でのTCA回路の存在意義に関する定義の部分にある。前章において、人は自らが従属栄養生物であるという実感(一定の時間ごとに空腹感に襲われること)を持つが故に、EM経路という経路をグルコース或いはグリコーゲン(デンプン)を出発物質、ピルビン酸を生成物として流れるATP生産系として捉える考え方に親和性が高いのだろうと述べた。しかしながら、独立栄養生物には流れのベクトルが異なるEM経路が存在する。例えば、植物においてのEM経路は 3-ホスホグリセリン酸が流入点であり、ここから多糖類の生合成へ向かうEM系路とピルビン酸に向かうEM系路が始まっていると考えるべきであると「解糖系への異論」の中で述べた。同じように系を解釈するに当たって、依拠するパラダイムの違いが、TCA回路の意義付けに大きく影響する可能性が存在するのではないだろうか。

 TCA回路の存在意義はどこにあるのかという問題に対して、日本薬学会は「好気的な条件下でエネルギー獲得に中心的な役割を果たす」という一文で片付けている。最後の部分で「また、エネルギー的にATPと等価のGTPを1分子産生する」という説明を付しているところを見ると、エネルギー獲得という観点からの判断しか示していない。

  一方、KGEEにおいては「In a series of reactions two carbons in citrate are oxidized to CO2 and the reaction pathway supplies NADH for use in the oxidative phosphorylation and other metabolic processes. The pathway also supplies important precursor metabolites including 2-oxoglutarate. (アセチルCoA に由来する)クエン酸中の2つの炭素原子は、一連の反応の中で二酸化炭素へと酸化され、酸化的リン酸化、そしてその他の代謝過程で使用されるNADHを供給する。TCA回路はまた、2-オクソグルタル酸を含む重要な代謝物を供給する。」とのべており、この回路から派生していく他の代謝-特にアミノ酸代謝を意識したような記述となっている。但し、前半でこの回路を好気的過程であるとした記述があるために、TCA回路が好気的回路であるという枠組みは生きているようだ。その点に問題ありと思うものの、KEGGの定義の方に幾分かの柔軟性が認められる。

 以下、書くべきか書かざるべきか少々迷った。本筋から幾分離れた内容になるからである。とはいえ、TCA回路を使って動物が二酸化炭素を固定すると書いてあるからには少々コメントせざるを得ない。二酸化炭素を固定するということは、還元するということと同義であり、TCA回路を還元系として捉えることを意味するからである。総合的に見れば、流れる物質量としては少量であり、炭素循環においては無視できると考えて良いかもしれないが、少々気になったので書くことにした。

 いまから18年ほど前になる。カイコやクモの糸を構成するアミノ酸中に、空気中の二酸化炭素が取り込まれるという報告が出た。質量数13の炭素を含む二酸化炭素を用いたトレーサー実験の結果であった。13Cを取り込んだ主なアミノ酸はアラニン、アスパラギン酸、グリシン、セリンであるとされていた。13CNMRの積分値を取り込みの証明に使った実験である。13CNMRは、定量性については幾分不確実な(特に完全デカップリング条件での測定)測定法である。感度は低くなるが定量性を重視した測定法もあるためコメントしにくいが、そういうことは織り込み済みでの結果であり結論であると思う。この結論によれば、動物である昆虫が、空気中の二酸化炭素を固定するという結果になり、真核生物である動物は炭素固定を行わないと思っていた私にとって、結構興味を引く報告であった。

  ただ、いくらかの疑問は残った。図-9に農業生物資源研究所のサイトに乗っている図を示す。

図-9 大気中の二酸化炭素をカイコが繭糸を構成するアミノ酸の中へ取り込む代謝回路のモデル図

 この図に於いては、ピルビン酸が pyrvate carboxylase [EC 6.4.1.1]の触媒下に二酸化炭素を取り込んでオギザロ酢酸になるのだが、この段階で炭素固定が起こっていることになる。オギザロ酢酸は通常通りアセチルCoAと反応してクエン酸を与える。クエン酸から脱水反応が起こってシスアコニット酸に、シスアコニット酸に反対向きの水付加が起こってイソクエン酸となった後、α-ケトグルタル酸に変換されるのだが、カイコには二通りの経路が存在する。一つはisocitrate dehydrogenase (EC 1.1.1.41)によって一気にα-ケトグルタル酸になる経路、いま一つはisocitrate dehydrogenase [EC:1.1.1.42]の触媒下にオギザロコハク酸を経由してα-ケトグルタル酸になる経路の二つである。ここでα-ケトグルタル酸の2つのカルボキシル基がともに、多分1/2の確率で取り込まれた二酸化炭素に由来するように描いてある。そうすると、このような分布の原因となる段階は2つに絞られる。

 1つの可能性はアセチルCoAのオギザロ酢酸のカルボニル基への付加がresi面を区別せずに起こる場合であり、いまひとつの可能性はクエン酸からcis-アコニット酸への変換がプロキラリティーを無視して起こる場合である。ところが、最初の付加反応はカルボニル基のsi面側から起こることが知られているし《Biochemistry, 29, 2213-2219(1990)》、クエン酸からcis-アコニット酸への変換は ProR側の側鎖に二重結合が形成されることが分かっている《Proc. Natl. Acad. Sci., 93, 13699-13703 (1996)》。そうなるとα-ケトグルタル酸の2つのカルボキシル基がともに取り込まれた二酸化炭素に由来すると描いてあるこの図はどこかおかしい。さらに、最初に固定された二酸化炭素に由来する、α-ケトグルタル酸のα-ケト酸側のカルボキシル基は脱炭酸で除かれるため、図9のように回路を右回りしてオキサロ酢酸に戻った後アミノ酸への変換が行われるとすれば、そこで生成するアミノ酸には取り込まれないはずである。(図-10参照)

図10 ピルビン酸に取り込まれた二酸化炭素は2-Oxoglutarate(α-ケトグルタル酸)からコハク酸への段階で系外に放出される

 どう考えればよいか?1つの可能性はカイコの持つpyrvate carboxylase [EC: 6.4.1.1]やisocitrate dehydrogenase (EC:1.1.1.41) 、isocitrate dehydrogenase [EC:1.1.1.42]が、プロキラリティを区別する特異性を持っていないと考えることである。そうであれば問題はないが、そんなことはないと思う。この取り込みを説明できる合理的な考え方があり得ると考えている。

 公開の予告をしておきながら図-10の描画で戸惑っています。ここをうまく描いておかないと立体化学に精通した人でないと何を言っているのか理解が難しいと思う。プロキラリティの定義を含め、この部分については数日中にアップする予定です。あまり時間が空いても少々寂しいので、取り急ぎ、ここまでをアップしておきます。

歴史生物学 TCA回路への異論 6 に続く

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