日々こんなもの

 久しぶりの雨、とても有り難い。だがこの雨で息を吹き返すのは作物だけではない。畑の畔で雌伏していた雑草といわれる名も知らぬ植物が、一気に伸び始める。今までもそうだがこれからも草刈りと草取りと除草剤散布の毎日が続く。

 昨日は育てているゴーヤにカメムシの幼虫がかなり発生していた。今年のカメムシは間違いなく発生が遅い。冬が寒かったのが原因かもしれない。土日の出荷に合わせて前もって採果し、仕方なく殺虫剤を散布した。ゴーヤに発生しているのであればカキにも発生しているに違いない。隣のナシ畑が収穫期に入っているので、ポジティブリストの規制に引っかからないように薬を選び、ドリフトがないように風向を考えて散布せねばならない。私のカキは半分遊び、隣のナシは専業のナシであるため、その程度の配慮は必要だろう。

 今日はナス畑、スリップス(アザミウマ)とテントウムシダマシ、そして昔日本が送り込んだ生物兵器とまで言われたマメコガネの食害が目立ち始めただけでなく、黒枯れ病(多分)も発生している。出荷用に水ナス、長ナス、白ナスを前もって収穫し、コテツとトップジンMを散布したのだが、散布後しばらくしたらかなり強い雨が降った。再散布するかどうか、様子を見ながら決めることにするつもりだが、散布回数が決められているのでそれとのバーターである。

 午後から田んぼに行くと、イノシシが畔を壊している。隣のブドウ畑では昨日電柵を設置したという。田んぼに入られると取り返しがつかなくなるため、慌てて水路脇の草刈りをし電柵を設置した。とはいえ、全面を囲うには時間が足りなかったため、侵入口となっている隣の耕作放棄水田との境に設置した所で日が暮れた。残りは次の日に回すしかない。明日出来ることを今日するなという格言を信じて終了である。田植えが終わってしばらく経つが、そろそろイネの病虫害にも目配りをする必要のある時期になった。いやいや、忙しいし考えることが多い。周りの農家の方は実に淡々と作業をこなしている。私はドタバタと、その場凌ぎの作業に追われている。経験の差だな、これは。

 ゴーヤ畑にいった時、採りそびれた巨大なヤツが良い色に熟していた。写真をお見せしよう。左が通常の出荷品、右は少しだけ過生長。この黄色い果実からジャムを作ると希少なジャムができるのだが、ジャム製造の免許がないため販売は出来ない。差し上げることなら可能なのだが・・・。

 ついでである。電柵の写真をいくつか貼っておく。左側の耕作放棄地、法面の草は切ったのだが、その上に生えている部分も切る必要がある。生長した葉っぱが電線に触れるとそこで漏電が起こり、電圧が下がり効果が亡くなるからである。この草刈りで半日以上かかるかもしれない。この薮の中に獣道がある。草の先端にはマダニがくっついて次のホストを待っていることがある。マダニ、日本紅斑熱 ライム病 ダニ媒介性脳炎 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を媒介する。コロナより怖いな、用心用心!

 電柵のコントローラーである。実に単純な機器だが、これで3万円程する。サツマイモ畑、カボチャ畑などなど、あちこちに設置するとなると結構な出費となる。さらに、単一の乾電池8個が必要であり、1ヶ月程度しか持たない。消費者からは気付いてもらえそうにもない出費だ。太陽光の発電パネルを持つものも販売されているが、通電距離を考えると5万円程度の装置が必要になる。

 上の放棄地の草刈り、考えただけでも億劫になるが、やらないと田んぼがイノシシのぬた場になってしまう。暑いけど仕方ないか。気温の予想、今日は34℃、明日は36℃だ。

 

 

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新型コロナのその後の後

 あれは団塊の世代の読み物だなどと揶揄されることがある桜井ジャーナルというサイトだが、このサイトは比較的冷静に物事を判断していると思って呼んでいる。自分の意見と違うからという理由で、世代論に矛先を転じ批判するやり方はフェアではない。先ほど田中宇氏のサイトを引用したが、桜井ジャーナルにも「RT-PCR診断パネル」のEUA(緊急使用許可)をCDCが今年末に取り下げに関する記事が出ていた。この方は慎重にコメントすることなく、事実だけを伝えるというスタンスをとっている。社会的に観点から、自らが陰謀論者と印象づけられるのはまずい、でも分かってくれよという本音が見える気がする

「RT-PCR診断パネル」のEUA(緊急使用許可)をCDCが今年末に取り下げへ
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202107270001/
2021.07.27 櫻井ジャーナル

 アメリカのCDC(疾病予防管理センター)は昨年2月にFDA(食品医薬品局)へ「2019年新型コロナウイルス(2019-nCoV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」のEUA(緊急使用許可)を求め、それ以降、使われてきた。そのEUAを今年12月31日に取り下げるとCDCは7月21日に発表した。

 「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」と同じように診断テストもFDAから認可されていないのだが、「緊急」ということで使用が許可されてきたのだ。

 診断法はどの程度有効か分からないが緊急事態だから使用可、でもアビガンとイベルメクチンについては治験での正確なデータがないから使用不可、イベルメクチンについては緊急事態であるので承認をしたのはしたのだが、マスコミへの発表ナシ、医師への通達ナシ、ワクチンは緊急事態だから治験が終わっていなくても緊急使用許可、もし副作用が合った場合、メーカーに責任は求めない、でも国はワクチンの副作用を認めない、大臣は前のめりになってワクチン推奨、どこかおかしいと思わないのかな。安全性の試験は危険性の試験の言い換えであり、安全対策は危険対策の誤用である。安全であるなら対策はいらない。安心は各個人が勝手に感じるものであって、国のトップが記者会見を通して一律に与えるものではない。近頃鹿を連れてくると、これはなんだと聞かれる前から馬だ馬だと宣う忖度野郎が世にはびこっている。

 上の記事、コロナウイルス感染症の根本に関わる問題を提起している。このブログを読んでいる人であれば、ある程度の知識と判断力を持っていると信じている。少しで良いのでそれを社会に向かって発信されたらどうでしょう。、

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新型コロナ・・・その後

 新型コロナ感染症、PCR検査、ワクチンモドキについて、何度か妄想論というか陰謀論とでも受け取られかねないブログを書いてきた。最後の記事を書いて少し時間が経ち、新しい情報も増えてきたので、少しばかり情報をまとめ始めていたのだが、一昨日、アメリカのCDCがコロナの診断にPCR検査を使うことを定めた昨年2月の緊急措置を今年末で解除すると発表した。その理由を読んで、天を仰いで絶句したのだが、まあ興味のある人は自分で記事を探して呼んで下さい。

 それはそうと、今朝、「田中宇の国際ニュース解説」の最新記事に「PCR検査をやめ、より巧妙な誇張へ?」と題するまとめ記事が掲載されていた。私の意見とほぼ一致している。前文をそのままコピペするのは私のポリシーに合わないと思うし、筆者への断りなしにそんなことをすべきではないと思うのだが、時期が時期であるのでそのまま掲載することにした。筆者へは、何らかの了承を求めるだけでなく、彼のサイトの購読者となることで納得してもらう予定である。


PCR検査をやめ、より巧妙な誇張へ?2021年7月29日   田中 宇
7月21日、米政府で新型コロナ対策を担当しているCDCが、コロナの診断にPCR検査を使うことを定めた昨年2月の緊急措置を今年末で解除することを発表した。PCRでなく、他の各種の検査を使ってコロナを診断するのが良いとCDCは言っており、PCRから他の検査方法に替える期間として12月末までの5か月間の猶予を設けた。昨年2月に中国発のコロナが世界に拡散して以来、PCRはコロナ感染者を判定する最重要な検査方法として日米を含む世界で使われてきた。世界を主導する米国のCDCが今回、そのPCRをコロナ判定の検査方法として使わないように変えた。 (CDC Seems To Tacitly Admit PCR Tests Can’t Differentiate Between COVID And The Flu)その理由について、CDCの発表文は明確に書いていないものの「(PCRに代わる新たな検査法として)CDCは、新型コロナとインフルエンザとを区別して検出できる多重型の検査方法を各検査所が導入することを推奨する」と書いている。これは読み方によっては、PCR検査がコロナとインフルエンザを区別して検出できず、混同してしまうことが多発するので、CDCがPCRへの推奨をやめて、コロナとインフルとを混同せずちゃんと区別して検出できる他の検査法への切り替えを進めることにした、と推測できる。そうではなく、単にコロナとインフルの両方を1回の検査で判定できる方が便利だから、両方判定できる他の検査法に切り替えるこにとした、とも読めるが、すでにこの1年半でPCR検査が世界的に普及しているのだし、インフルエンザの検査もすでに世界的に普及しているのだから、わざわざ1回で両方を判定できる新しい検査を新たに定着させる必要はない。 (Lab Alert: Changes to CDC RT-PCR for SARS-CoV-2 Testing)PCR検査が、新型コロナだけでなくインフルエンザ(やその他)のウイルスなどに対しても陽性反応を出してしまうのでないかという疑いは以前からあった。私も記事にしている。コロナ発生後の昨冬、世界的にインフルエンザの患者数が前年より99%少ない状態で、PCRにってインフルがコロナと誤診されていた可能性が高い。PCRは判定時の増幅数を上げすぎると過敏な状態になり、コロナのウイルスが存在していないのに存在しているという結論を出してしまう「偽陽性」が過半になる。米国の研究では、増幅数が25サイクルだと陽性の70%が偽陽性、35サイクルだと90%が偽陽性だった。日米などで採用されていた40サイクルだとさらに偽陽性が多く、陽性者の中に真のコロナウイルス保有者がほとんどいないことになる。偽陽性の中にインフルのウイルスを新型コロナと誤判断してしまうケースが入っている疑いがある。 (コロナ危機を長引かせる方法)CDCなど各国の政府やマスコミ・権威筋は、PCRによる判定が偽陽性満載であることや、インフルがコロナと誤診されていると疑う考え方などを無根拠な陰謀論と一蹴・攻撃し、全く真面目に考えようとしてこなかった(PCRの専門家は当初から警告していたのに無視されてきた)。新型コロナの脅威が誇張されているという考え方自体がマスコミ権威筋にとってタブーだ。CDCは今回、コロナ判定にPCRを使うことの超愚策性・インチキさについて真面目に考える姿勢をとらないまま、代わりに上で紹介した曖昧な示唆をしつつ、PCRへの奨励をやめていく。CDCがPCRをコロナ判定用に使い物にならないと半ば認めたことは確かだ。日本など他の諸国も、何も説明せずにPCR利用を縮小していきそうだ。 (Why Is The CDC Quietly Abandoning The PCR Test For COVID?)PCRの代わりにどんな検査法が主流になるのか。ひとつ興味深い展開がある。CDCがPCRへの奨励をやめると発表する2日前の7月19日、「慈善事業」で有名な大金持ちの2人、ビルゲイツとジョージソロスが合弁し、コロナなどの検査製品類を開発販売してきた英国のモロジック社を買収すると発表した。ゲイツとソロスは、モロジックの事業を拡大し、コロナやその他(コロナが終わったら蔓延させる次の感染症とか?)の検査製品を安価に全人類が使えるようにする「慈善事業体」に変身させていくのだとマスコミが称賛している。 (CDC Declares PCR Tests Must Go Immediately After George Soros, Bill Gates Buy COVID-19 Test Manufacturer) (Bill Gates and George Soros back acquisition of UK diagnostic technology group Mologic)しかし、今回CDCがコロナ判定の検査としてPCRを捨てた後、次の検査法の主流の一つとしてモロジック社の製品が普及していくのだとしたら、どうだろう。ゲイツとソロスは、CDCの決定を発表前に知り、企業価値がこれから急拡大していくとわかった上でモロジックを買収する違法なインサイダー取引をやって、これからの大儲けを確定させたことになる。慈善事業(良いこと)のふりをした極悪なぼろ儲けになる。「極悪なことこそ良いこと」。ジョージ・オーウェルの1984的な世界。実際にモロジックの検査製品の利用が急拡大するかどうかは不明だが。 (George Soros and Bill Gates are helping to turn Mologic into a social enterprise)上で「PCR検査は偽陽性99%」みたいなことを書いたが、偽陽性が99%としても、残りの1%は真の陽性、本当のコロナ感染者である。だがそもそも、最初の武漢での発祥から1年半が過ぎた今、新型コロナのウイルスが、ある程度の発症力のあるものとして世界にまだ存在していると考えること自体の妥当性を考えてみる必要がある。コロナウイルスは一般的に、ヒトからヒトに感染していくうちに、感染力は強いが病気としての重篤性が弱いものにどんどん変異していき、発祥から1年も経つころには、みんな感染(というより咽頭付着)したが誰も発症しない弱いものになる。発症しなければ病気でないので、そのコロナウイルスは事実上消滅してしまう。2003年に中国から世界に広がったSARSのコロナウイルスは、発祥から数か月後に忽然と消滅した。 (The Great Big Delta Scare)それなのに今回の新型コロナは、発祥から1年半たった今も「デルタ種」なる変異株が世界中で「猛威」をふるっていると喧伝されている。変異すると感染力は強まるが、重篤性は下がる。新型コロナが、従来のコロナウイルスと違って1年半後もある程度の病原性・発症力を本当に保っているのなら、なぜそうなるのか権威ある専門家が研究して納得できる仮説が出てくるはずだが、それもない。ないということは詐欺が疑われる。デルタ種の「猛威」は、本当のことなのか。それともPCR検査の偽陽性や、都市閉鎖やワクチンの「効果」と同様、マスコミ権威筋が猛烈に誇張して軽信させた人々の頭の中にある「妄想」なのか(「妄想こそ事実。事実こそ妄想」も1984的だ)。 (Do Not Buy the Covid Delta Variant Propaganda)私は「新型コロナはすでに病気として消滅している」と推測している。昨年夏ぐらいまでは新型コロナで本当に発症した人がいただろうが、その後は他の病気で発症した人がコロナと誤診されるだけになり、人々の症状が針小棒大に喧伝され、軽信的な人々に恐怖心を植え付け続けた。長期の味覚喪失とかだるさとか、新型コロナ特有の症状といわれているものも、実は特有でなかったりする。 (NYT says covid virus has been eradicated, now it’s “unvaccinated” people who are making others sick with their mere existence)新型コロナを世界に広げた国際勢力(WHOなどを傘下に持つ覇権運営体。欧米だけでなく、中国もこの運営体の一部)は、最初からコロナ危機を何年も続けるつもりだったので、病気として消滅しているのに猛威をふるっていると世界の人々に軽信させられたのは「大成功」である。英国で入院したコロナ感染者の大半が、コロナと診断されて入院したのでなく、他の病気で入院した後、コロナ検査したら(偽)陽性になった人だった。コロナ患者の大半は実のところ他の病気の患者である。陽性者のほぼ全員が偽陽性だ。 (Over half of Covid hospitalisations tested positive after admission) (Pseudopandemic)偽陽性満載のPCR検査がこれからコロナ判定に使われなくなると、事態が改善するのか?。たぶん違う。PCR検査は、もともと感染症の判定用に使うべきでないと専門家に警告されており、増幅度を過剰に引き上げることで意図的に偽陽性だらけにしていることが、早い段階からバレていた。これでは完全犯罪に程遠い。稚拙すぎる。もっと巧妙でブラックボックスが多い検査体制に転換し、コロナ危機の意図的な長期化を完全犯罪にしていかねばならない、と国際勢力が考えても不思議でない。モロジック社の検査製品が使われるのかどうかわからないが、次の主流の検査体制は、PCRよりも突っ込みどころの少ない、不透明なものになるのでないか。 (Three in 10 Americans Think Pandemic Is Over in U.S.) (都市閉鎖の愚策にはめられた人類)コロナワクチンの話はあらためて書きたいが、米国でも日本でも、ワクチン接種が進むほど、感染者が多く出る展開になっている。ワクチンが本当に効くのであれば、今の日本のように接種者が増えていくと集団免疫の状態になり、感染者が減っていくはずだ。しかし現実は逆で、接種者が増えている首都圏の3県に非常事態宣言が出される。ワクチンは効いていない(偽陽性者=感染者にされるので前提が不合理だが)。米国の調査では、接種者のうち一定割合の人々が接種によってむしろ新型コロナに感染しやすく、他人に感染させやすくなったことがわかってきた。早々と国民に接種を強要したイスラエルでは、ワクチンの効果が半年で急低下するので4-5か月ごとの接種が必要なこともわかっている。新型コロナという病気がもう存在していないのなら、これらの話も言葉通りに受け取れない。考えを整理し、あらためて書く。世界的に、コロナよりワクチンでの死者の方がはるかに多い。 (New Evidence Suggests COVID Vaccine May *SPREAD* the Virus: NBC News Report Deleted from USA Today Article) (California Counties See COVID Cases Rising In Most Heavily Vaccinated Counties) (Israeli Data Suggests Protection From Vaccines Drops Down to Nothing After Just 6 Months) (The Most “Vaxxed” Countries Have Highest Incidence Of Covid) (Why most people who now die with Covid in England have had a vaccination) (Covid Vaccines are killing people at a 79% higher rate than Covid-19 in the UK according to statistics
田中宇の国際ニュース解説より引用

  情報源を日本のマスコミだけに頼ってきた方々には、飲み込みにくい点がいくつもあると思う。ビル・ゲイツやジョージ・ソロスの持つ世界観についての記述が欲しいなと思うが、それを書くと妄想論として切り捨てられる危険性を考え、安全な所で筆を置いたのだろう。この一文は、大筋として正しい視座に立っていると考える。今後、少し時間をかけて私のコメントを追記して行く予定である。

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TCA回路への異論 5,5

 まず図10をよく見て欲しい。ピルビン酸からオギザロ酢酸の4位に取り込まれたC13からなる二酸化炭素は、TCA回路を回るにつれα-ケトグルタル酸の1位のカルボキシル基となり、コハク酸へと脱炭酸される際にCO2として再放出されることになる。

図10 ピルビン酸に取り込まれた二酸化炭素は2-Oxoglutarate(α-ケトグルタル酸)からコハク酸への段階で系外に放出される

 ところが、図の内側に示したように農業生物資源研究所のサイトに掲載されている図によれば、ピルビン酸に取り込まれたC13はα-ケトグルタル酸の1位と5位に分布し、TCA回路を流れるように描いてある。ラベルされた5位のカルボキシル基はコハク酸の段階で位置情報を失い、リンゴ酸からオギザロ酢酸の二つのカルボキシル基に再配分されたあと、アスパラギン酸へ、あるいはホスホエノールピルビン酸を通ってセリンやグリシンへ、ピルビン酸を経由してアラニンへと変換されることになっている。

図-9 大気中の二酸化炭素をカイコが繭糸を構成するアミノ酸の中へ取り込む代謝回路のモデル図

 どこか、何かがおかしいのである。問題はアセチルCoAのオギザロ酢酸への付加反応を触媒する酵素が面選択制を持つかどうか、今ひとつの問題はクエン酸からシスアコニット酸への脱水反応を触媒する酵素がプロキラルな位置にある二つのメチレン基を区別できるかどうかの問題である。前回書いたように、最初のアセチルCoAのオギザロ酢酸の2位のカルボニル基への付加反応はsi面側から選択的に起こることが知られている《Biochemistry, 29, 2213-2219(1990)》。

 この二つの反応は酵素反応における立体化学的制御という視座から見るととても面白いし、うまく伝えることが出来れば教育的にも有効な題材になる。図11のアセトン、酸素原子を下に置き少しだけ回転させた形で書いている。このカルボニル炭素をNADHに由来する水素化物イオンが攻撃する場合、アセトンの二つのメチル基と酸素原子が作る平面の右側から攻撃する場合と(A系路)と左側から攻撃する場合(B系路)が存在する。生成物はいずれも2-プロパノ−ルであり、2-プロパノールには不斉中心は存在しないのでA系路を通ろうとB系路を通ろうと生成物は同じものである。こういう場合、アセトンにはプロキラリティ−が存在しないという表現をする。

図11 オギザロ酢酸に対するアセチルCoAアニオンの付加反応

 ところが、アセチルCoAがオギザロ酢酸へ付加反応を行いクエン酸を与える反応においては、そんなに簡単には行かないのである。右側の上部に書いた二つのオギザロ酢酸、一応鏡像体になるように描いているが、この分子には不斉炭素は存在しないので(I)と(II)は同じものである。しかしながら、この二つの式のカルボニル炭素に結合する原子につきCahn-Ingold-Prelogの順位則に従って順番を付けると、左側の図においては右回りになり左側の図においては右回りとなってしまう。このようにある面から見ると結合する原子群の順位が右回りになる場合、その面をre-面、反対になる場合をsi-面と定義する。そこでだが、次に描いた式(II’)は立体化学の表記法から余り褒められたものではないが、カルボニル基の炭素原子と酸素原子の結合軸を中心にして60度程度向こう向きに回転させた図であるとしてみて欲しい。この分子のカルボニル基に対して、アセチルCoAのアニオンが付加するのだが、この反応はsi-面側から起こる。

 そうするとクエン酸(III)が得られるのだが、困ったことがある。いや別に困るわけではないのだが、クエン酸は不斉炭素を持たないのである。従って、元からあるカルボキシメチル基と、アセチルCoAに由来するカルボキシメチル基は通常化学的には区別できない。(こういって良いかどうか一寸不安です。カルボキシメチレン基という言い方があるのだろうか?)そのため農業生物資源研究所のサイトの図が成立しそうに思えるのだが、自然界は少々意地悪である。その話に行く前に、カーン・インゴルド・プレローグ順位則において、同位体については質量数の大きいものが小さいものより順位が高い。現実の話をすれば、ピルビン酸へ取り込まれた13CO2はオギザロ酢酸の4位に入るのだが、そのほとんどは12CO2に由来する炭素原子である。つまりここで生成するクエン酸は(III)は(IV)の混合物であるということになる。そして、12CO2に由来するカルボキシル基を持つクエン酸(IV)においては不斉炭素は存在しないが、13CO2に由来する由来するカルボキシル基を持つクエン酸(III)の3位の炭素は不斉炭素となり、その立体配置はRであるということになる。尤も、同位体効果という現象があるとはいえ、この13Cを持つカルボキシル基が、次の脱水反応の起こる位置に影響することはないと考えてよいだろう。

 そこでだが、不斉中心を持たないクエン酸 (IV) において、二つのカルボキシメチル基を(A)(B)と区別して考えることにする。何をしようとしているかといえばプロキラリティ−の概念を導入しようとしているわけである。プロキラリティ−にも色々な種類があるのだが、ここで述べるのはsp3混成軌道を持つ炭素上の 4個の置換基が、CX2YZ というように、2つの同じ置換基 X と、異なる 2つの置換基 Y、Z からなる場合、その炭素は光学活性中心ではない。しかし、X が新しい別の置換基 W に置き換われば CWXYZ の形となり光学活性中心となる。そこでCX2YZ 上にある 2個の X について、それらをどう区別するかが問題となるわけである。

 大したことではない。2個の置換基 X のうちどちらかをもう一個のXよりも高いものと仮定したあと CIP則を適用し、優先順位を決める。仮の優先順位に基づき、RS表記法にしたがって中心炭素のキラリティが R か S かを決めるのだが、仮のキラリティーがR体だった場合は、そのときに優先させた X を pro-R の置換基と、S体だった場合はpro-S の置換基と称する。クエン酸においては二つのカルボキシメチル基がこのXに当たるわけである。そうしてpro-Rpro-Sに対応するカルボキシメチル基を決めると図11も右下のようになる。つまり、オギザロ酢酸の4位にあったカルボキシル基はpro-Rのカルボキシメチル基となりアセチルCoAに由来するカルボキシル基はpro-Sのカルボキシメチル基になっているのである。これと反対の配置の化合物を作る酵素もあるのはあるのだが、嫌気性の微生物に存在しているもので、カイコには存在しない。

 pro-Sとかpro-Rとか鬱陶しいな、それがどうしたという声が聞こえてきそうなのだが、ここは重要なステップとなる。アキラルなクエン酸からcis-アコニット酸への変換は、トランス脱離反応で脱水が起こり pro-R側のカルボキシメチル基側に二重結合が形成される《Proc. Natl. Acad. Sci., 93, 13699-13703 (1996)》。そこではたと困ってしまうのである。pro-R側の側鎖はオギザロ酢酸の4位のカルボキシル基を含む。そのカルボキシル基のαβ位に2重結合が導入されるのであれば、逆向きの水付加に続く基質レベルでの酸化、さらに続いて起こる2度の脱炭酸反応によって、オギザロ酢酸由来のカルボキシル基は二酸化炭素として放出されてしまうではないか。つまりせっかく固定された13Cはこの段階で失われてしまうことを意味している。

 実は脱水反応がトランス脱離で起こる、続く反対方向での水の付加反応とこの時生成する2位の水酸基と3位の炭素の立体化学、2位の水酸基の基質レベルでの酸化に伴う2位の炭素とこれに続く脱炭酸の伴う3位の炭素の不斉の消失、さらにもう一段階、αケト酸の脱炭酸と、興味深い反応が続くのだが、余りこの手の話を続けても私だけでなく読者も疲れるだけだと思うので、興味のある方は自分で文献をあさって欲しい。

 つまりここまでの議論で何が言いたいかといえば、、ピルビン酸と13CO2との反応で形成されたオギザロ酢酸からTCA回路を回して、アラニン、セリン、グリシン、アスパラギン酸を姓合成するとした場合、これらのアミノ酸のカルボキシル基に、13Cが含まれるとする論証には無理があるのではないかというのが私の意見である。しかしながら、13CNMRのデータは、これらのアミノ酸のに13Cが含まれていることを示している。どう考えればこの矛盾を解決できるのだろうか。

 久しぶりに立体化学的に反応を考えたのだが、昔は構造式を見ると頭の中で立体構造が浮かび、これを回転させたり反転させたり自由にできていた。ところが今回、ChemDrawで描こうと思ったら、一度紙に描いてからでないと間違うのである。しばらくやっていなかったからなのか老いたのが原因なのか分からない。一日中草刈りと草取りしかやっていないのだから、仕方がないだろう。例年なら少し奥山に移動しているはずのホトトギスが降るように鳴いている。日中の温度は35℃を超え目がくらむような毎日だが、その中で聞くクマゼミとアブラゼミは3℃くらい気温を上げそうだ。7時近くになると遠くでヒグラシが鳴き始める。これはそれなりに風情があっていいものだ。

 とはいえ世情は囂しい。ヒグラシではなくその日暮らしの人が増えているようだ。何か出来ないかと考えてはいるが、個人で出来ることは高がしれている。新聞は暑苦しいスポーツ新聞に変身した。いや、スポーツ新聞の方がまともな記事を書いている。一日中、土に触れているので精神状態は安定しているが、町中に住んでいたら毎日山にでも行っていただろう。ハーモニカをいくつかバインドして縦向きにしたようはマンションには決して適応できない私がいるわけだ。何とかして、ヒグラシがカネカネカネと悲しく鳴かずに済む社会をと願っている。

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今日からオリンピックだそうだ

 伝聞の形で書いているが、その通りである。不祥事の連鎖で、見る気をなくしてしまっていた。スポーツは嫌いなわけではない。下手であっても見るよりするほうが楽しいと思っていたのだが、「おもてなし」、「アンダーコントロール」、「晴れる日が多く温暖でアスリート に最適な気候」、あと色々あるが、余りにも醜く騒がしい招致合戦、それに続く不祥事の連続で、賛成とか反対とかいう以前に、目を背けたい気分になっていたわけだ。

 それにしても、協賛企業の社長が次々に欠席を表明、招致の中心人物である前首相まで欠席だそうだ。何だかいやな気配である。その場にいるべき人がいない、そして何か起こる、見慣れた図式である。いや陰謀論です。国立競技場の前に立つエンブレム、デザインが良いとか悪いとか専門的なことは分からない。だが、明るさに欠けるのである。最初に見た時、葬儀場の入り口を連想した。全く興味のないオリンピックだが、事故やテロや傷病者を出さずに、静かに終わってくれることを願っている。新聞社もスポーツ新聞社に衣替えすることなく、本来の報道機関としての仕事をして欲しいな。

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