稲刈り・・・Part 1

  昨日、稲刈りが半分終わった。土曜日までは来週が稲刈りだと思っていたため、体力をフルに使って草刈りをした。まずは、水田周りの畦と畦に続く法面である。300 m程を刈った。その後クリ畑に移動し、春先から放置していたススキの群落を刈ったのだが、この時期の草は非常に堅い。堅いだけではなく、蔓草が上部をおおっていることが多いため、刈りにくいしとても疲れる。刈り払い機用の替刃(チップソー)を朝に交換したにもかかわらず、3時間程使ったら食いつきが悪くなった。もっとも、今回は一番安い替刃を試していたので、文句は言えない。そして経験則である。春先から7月頃まで、草や木が柔らかい時期は安い刃で良いが、草木が充実して堅くなる夏以降は少し高くても良い替え刃を使うほうが良さそうだ。

  かなり疲れてそろそろ帰ろうかと、力なく後片付けをしていたら、師匠が来られた。「上ん(の)田、明日刈ろう。」しまった、少し体力を温存しておけば良かったと頭の隅で一寸だけ思ったが、物事を教えてもらう場合、師匠は絶対である。神であり仏である。学問でも技芸でも、まず師匠を信じてまねることから始まる。出来の悪い弟子であってもそれくらいは理解している。理解はしているが、4年経ったいまもミスばかりしている。

  そして昨日、稲刈りをしたのは師匠であり、取れたモミを運んでくれたのは師匠の奥さんである。私は、隅刈りをした後はコンバインについて回って落ち穂を拾い、寝たイネを起こしただけである。でも、なんとか技術を盗もうと一生懸命見ている。4隅を刈るときのバックの距離とか、イネが立っているところと寝ているところではコンバインのスピードが違うとか、興味を持ってみていると非常に面白い。だが、観察をしていたのは私だけではなかったようだ。刈り終わると同時に、ゴイサギがやってきて、隠れる場所を失ったカエルを啄み始めた。

倒伏したイネ
倒伏したイネ
あと1列:昭和20年代の雰囲気で
あと1列:昭和20年代の雰囲気で

  そして今日、疲れている。足も腰も疲れている。だが、週末には新米が食える。写真は、明日添付する。

カテゴリー: 未分類 | 稲刈り・・・Part 1 はコメントを受け付けていません

ズッキーニで中毒

  先日、ズッキーニで中毒を起こしたというニュースを見た。中毒で死亡したヒトがいなかったのが幸いだった。野菜で中毒という記事に驚く方が多いかもしれないが、基本的には野菜であっても植物は毒成分を含むと考えるのが正しい。

  ジャガイモにはソラニンが、キャベツやアブラナにはS-メチルシステインスルフォキシドが、ダイコンにはシニグリンが、ウメ・アンズ・モモにはアミグダリンが含まれている。可食部分ではないとはいえモロヘイヤの種子にはストロファンチジンが含まれる。

スクリーンショット(2014-10-01 20.46.40)

  我々は、長い歴史の中で毒成分の少ない品種を選び改良し、野菜として利用しているに過ぎない。いつか書くことがあると思うが、通常は毒成分を殆ど持たない植物であっても、昆虫の食害や病原菌への感染に伴って、その周りにファイトアレキシンと呼ばれる毒物を作ることも知られている。このファイトアレキシンの定義も一寸以上に怪しいのだが、それはまた別の機会に。

  さて、ズッキーニはウリ科植物に属する。ウリ科植物はククルビタシンというトリテルペンに分類される毒性を持つ化合物群を含んでいる。ククルビタシンには15種近い類縁体が知られており、植物の種によって含有する成分とそれらの組成は異なっている。

スクリーンショット(2014-10-01 20.46.57)

  我々が食用にしているウリ類であっても、有毒物質を含む種は普通に存在する。ククルビタシングループ類であれば、キューリ、カボチャ、メロン、スイカ、ヒョウタン、ユウガオ、ヘチマなどが含んでいる。キュウリのへたに近い部分を齧ったときに感じる苦みはこれが原因である。要するに、毒があるかどうかではなくどれくらいの量があるかが問題である。苦い植物であるゴーヤもウリ科の植物であり少量のククルビタシンを含むが、ゴーヤの苦みの主成分はほとんど毒性のないモモルデシンである。毒性はないとは云ってもモモルデシンの構造はククルビタシンによく似ている。

  以上の話は、ヒトに対してと云う限定付のものであり、他の生物にとってということであれば、話の筋は異なってくる。ウリハムシはククルビタシンが含まれる葉っぱを好んで食べるだけではなく、体に蓄積する。そんな苦いものを好んで食べるなど、ゲテモノ食いの昆虫だなと思われるかもしれない。しかし、イヌやネコが食べれば溶血性貧血を起こすタマネギ(ネギ、ニンニク、ニラなど)を、ヒトは喜んで食べるではないか。

カテゴリー: 未分類 | ズッキーニで中毒 はコメントを受け付けていません

南瓜の吊り栽培

  山道の途中に栽培を止めたナシ畑がある。栽培を止めると一気に荒廃するのが常なのだが、ここの畑は違った。日々消費するような野菜や根菜類が継続して植えられている。あの場所では、最も問題となるのはイノシシであろう。通る度にどんな工夫がされているのか気になっていたのだが、今年はカボチャが植えられていた。カボチャも食べられるのではと観察していたら、カボチャの蔓はナシ用の植栽棚にスクスクと登ってゆき、高いところで実を付けた。

スクリーンショット(2014-09-27 22.46.29)

  成る程と納得していたのだが、しばらくするとカボチャの重量が増えてだんだんと蔓が垂れてくるのである。今では写真のように地表から40㎝くらいの所まで垂れ下がってきた。こうなると、人による収穫とイノシシによる収穫のどちらが早いかということになるのだろう。面白いことだが、地表でなったカボチャに比べいくぶん縦長になっているようだ。重力のせいだろう。無重力の状態でカボチャを作ると真ん丸のカボチャが採れるのかもしれない。このスリムカボチャ、1つ購入して食べてみたい気分である。

カテゴリー: 未分類 | 南瓜の吊り栽培 はコメントを受け付けていません

彼岸花

スクリーンショット(2014-09-27 22.25.36)
図1 白花曼珠沙華

  彼岸になるとヒガンバナが咲く。今年は8月末頃からフライング気味に狂い咲きをする株を散見していたが、花がいくぶん小さい気がしていた。この季節になっての花は、やはり一段ときれいである。農舎の庭にも白花のヒガンバナがある。新築工事に伴って、今年はずっと踏みつけられてきたはずだが、季節を違えることなく花を付けた。ヒガンバナは4月下旬には花芽分化を終っていると聞く。いま咲いている花は、春先には開花用意が終わっていたものである。とすれば、これから出てくる葉っぱを大事にしてやれば来年も楽しめるということであろう。

  一般的に、ヒガンバナは有毒植物に分類される。しかし、救荒植物として、あるいは薬用植物として分類されることもある。ヒガンバナにはリコリン、ガランタミンを初めとしてシキミ酸経路に由来するノルベラジンアルカロイド類が含まれている。(図2)

スクリーンショット(2014-09-27 22.30.22)
図2 彼岸花に含まれるアルカロイド

  リコリン(Ⅰ)はヒガンバナ科の植物が含有するアルカロイドで,ヒガンバナだけでなくスイセンやアマリリスなどにも含まれている。リコリンの毒性はマウス経口で10,000㎎/㎏以上と大したことはない。このリコリンはかなり水溶性があるため、すりつぶした球根を大量の水で晒すことによって残ったデンプンは食べることができる。従って救荒植物として分類することもできるわけだ。このリコリンには他の植物、特にキク科の植物に対する発芽阻害活性があると同時に抗菌性も認められている。(http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result15/result15_16.html)

  さて、田の畦にはよくヒガンバナが植えてある。本当かどうかは確認していないが、ヒガンバナの分泌するリコリンをミミズが嫌うという。ヒガンバナを植えておくとミミズがよってこない。すると、捕食者であるモグラが来なくなる。モグラが来なくなると畦が壊わされないということらしい。私も植えてみることにしよう。なお、同時に含まれるクリニンもレタスの発芽を阻害することが知られている。

  生薬学的な観点から見るとリコリンを含む鱗茎は石蒜という名称で利尿・去痰薬とされるが、個人の判断で飲むのは止めた方がよい。いわゆる漢方薬においては、植物が生えていた場所、気候、採取時期、採取年度、採取後の処理などに伴って生薬成分の量が大きく変化するからである。

  リコリンに比べれば少量しか含まれていないガランタミンは、有機リン系殺虫剤やカーバメート系殺虫剤のようにアセチルコリンエステラーゼを阻害することが知られている。阻害様式は可逆阻害である。私もそのうちにお世話になるかもしれないが、このガランタミンはアセチルコリンエステラーゼを阻害することで、脳内のアセチルコリンの濃度を上昇させるため、アルツハイマー病の症状改善に有効だそうだ。さらに余り嬉しくない話だが、アメリカではガランタミンがコリン作動性スマートドラッグとして記憶増強用サプリメント化され、販売されているときく。

  話は変わるがリコリン、クリニン、ガランタミンの構造式を見ると、大して似ていないと感じる人が多いと思う。しかし生合成系を見てみるとこれら3種の物質はよく似た兄弟と云って良い。図3に生合成系を描いてみた。

スクリーンショット(2014-09-27 22.34.58)

  多分間違ってはいないと思うが、絶対正しいかどうかは分からない。とにかく、3種の化合物は1分子のフェニルアラニンと1分子のチロシンから生合成される。フェニルアラニンがPALによって桂皮酸になった後、オキシゲナーゼによって2回の水酸化を受け、3,4-Dihydroxycinnnamic acidに、さらに側鎖の2重結合が酸化的に切断されて3,4-Dihydroxybenzaldehydeまで酸化される。チロシン分子は脱炭酸を受けてチラミンとなった後、3,4-Dihydroxybenzaldehydeと反応してSchiff baseを形成するが、生成したC=N結合は還元されてN-(3, 4-Dihydroxyphenylmethyl)tyramine (IV)となる。このIVが共通の中間体として、ここから各化合物へと分岐していくわけである。N-メチル化とO-メチル化が酸化的に起こるラジカルカップリング反応より早期に起こった場合はガランタミンへの代謝が進み、このメチル化が起こらない場合はIVの立体配置の違いによりクリニンあるいはリコリンへの代謝が進むわけである。図中の黒い矢印は電子2個の移動、赤い矢印は電子1個の移動を意味している。

カテゴリー: 未分類 | 彼岸花 はコメントを受け付けていません

栗 雑感

  クリが不作である。1つは台風による落果が原因だが、あと2つほど理由がある。クリ園の奧、ことさら森の中というわけではないが冬には鹿がが出没するらしい。そうしたことを余り気にせずに、この部分にぽろたんという品種を植えた。この品種、加熱するとぽろっと渋皮がとれるのが売りの品種なのだが、樹勢が余り強くない。さらに、鹿がこの品種の樹皮を剥がして食べてしまうのである。栗園内部で品種による植栽位置の見直しをしなければならないらしい。

  もう一つは、カミキリムシの害である。今年、6本の木が折れた。福岡ではシロスジカミキリの害が多いと聞くが、私のクリ園ではゴマダラカミキリをよく見かける。いずれにしても木から幼虫の出す木屑を見つけ、そこに殺虫剤を注入すれば防げるのだが、週二日の週末農業ではいま一つ手が回らない。来年以降の宿題にしておこう。

  真脇遺跡やチカモリ遺跡では環状木柱列としてクリの大木が使われていたし、三内丸山遺跡でも直径1メートルを超すようなクリの大木が使われていたという。私のクリ園のクリには、一本残らずカミキリムシが寄生している。シロスジカミキリの分布は本州以南、ゴマダラカミキリの分布は日本全土である。縄文海進は終わっていたとはいえ、三内丸山遺跡が栄えた時代は現在より暖かかったらしい。そうであれば、これらのカミキリも間違いなく分布していたと思うのだが、虫害を受けずにそこまで大きくなった木が何本もあったと言うことだろう。そんな神々しい木を見てみたいものである。

カテゴリー: 未分類 | 栗 雑感 はコメントを受け付けていません