ズッキーニで中毒

  先日、ズッキーニで中毒を起こしたというニュースを見た。中毒で死亡したヒトがいなかったのが幸いだった。野菜で中毒という記事に驚く方が多いかもしれないが、基本的には野菜であっても植物は毒成分を含むと考えるのが正しい。

  ジャガイモにはソラニンが、キャベツやアブラナにはS-メチルシステインスルフォキシドが、ダイコンにはシニグリンが、ウメ・アンズ・モモにはアミグダリンが含まれている。可食部分ではないとはいえモロヘイヤの種子にはストロファンチジンが含まれる。

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  我々は、長い歴史の中で毒成分の少ない品種を選び改良し、野菜として利用しているに過ぎない。いつか書くことがあると思うが、通常は毒成分を殆ど持たない植物であっても、昆虫の食害や病原菌への感染に伴って、その周りにファイトアレキシンと呼ばれる毒物を作ることも知られている。このファイトアレキシンの定義も一寸以上に怪しいのだが、それはまた別の機会に。

  さて、ズッキーニはウリ科植物に属する。ウリ科植物はククルビタシンというトリテルペンに分類される毒性を持つ化合物群を含んでいる。ククルビタシンには15種近い類縁体が知られており、植物の種によって含有する成分とそれらの組成は異なっている。

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  我々が食用にしているウリ類であっても、有毒物質を含む種は普通に存在する。ククルビタシングループ類であれば、キューリ、カボチャ、メロン、スイカ、ヒョウタン、ユウガオ、ヘチマなどが含んでいる。キュウリのへたに近い部分を齧ったときに感じる苦みはこれが原因である。要するに、毒があるかどうかではなくどれくらいの量があるかが問題である。苦い植物であるゴーヤもウリ科の植物であり少量のククルビタシンを含むが、ゴーヤの苦みの主成分はほとんど毒性のないモモルデシンである。毒性はないとは云ってもモモルデシンの構造はククルビタシンによく似ている。

  以上の話は、ヒトに対してと云う限定付のものであり、他の生物にとってということであれば、話の筋は異なってくる。ウリハムシはククルビタシンが含まれる葉っぱを好んで食べるだけではなく、体に蓄積する。そんな苦いものを好んで食べるなど、ゲテモノ食いの昆虫だなと思われるかもしれない。しかし、イヌやネコが食べれば溶血性貧血を起こすタマネギ(ネギ、ニンニク、ニラなど)を、ヒトは喜んで食べるではないか。

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