追記(大牟田時代の記憶)と事故追記

三井化学大牟田工場での事故についてちょっと書いたのだが、大牟田に住んでいた頃の記憶を辿って、備忘録代わりに少し書いておく。単なる個人的内容であるため、多忙なひとは読み飛ばされるのが良いだろう。

1958年、小学校の4年の9月に、島原市の島原第一小学校から大牟田市の明治小学校へと転校した。

少し話は変わるが、1991年6月3日、雲仙・普賢岳で大火砕流が起きた時、島原市の市長として災害対応にあたり「ひげの市長」と呼ばれた鐘ヶ江管一氏が、94歳で亡くなった。私が島原にいた頃、鐘ヶ江氏は私の家の近くにあった旅館(国光屋)の経営者であった。因みにこの国光屋は西鉄ライオンズのキャンプの定宿であったため、当時黄金時代にあったライオンズの選手を良く見かけたものである。

1958年という年は、西鉄ライオンズ(現・西武ライオンズ)はオールスターまでに首位南海ホークス(現ソフトバンクホークス)に11ゲーム差を付けられていたにもかかわらず、後半に奇跡とも思える巻き返しで逆転優勝を飾った年である。続く巨人との日本シリーズでは第1戦、第2戦、さらに第3戦を落として3連敗に追い込まれた。降雨による(疑惑の)順延で中一日をはさんだ第4戦、三原監督は稲尾を三度目の先発に起用してシリーズ初勝利。10月17日に行われた第5戦でも、稲尾は4回表からリリーフ登板すると、シリーズ史上初となるサヨナラ本塁打を自らのバットで放ち勝利投手となった。6戦7戦も稲尾が完投勝ちしてこのシリーズを制したのだが、神様仏様稲尾様という言葉が新聞の見出しを飾ったのは、この5戦の翌日であった。

ここまで書いてニュースを見ていたら、またもや三井化学大牟田工場で事故のニュースである。FBS福岡放送のニュースを引用する。

《液体漏れの2日前にも塩素系ガス漏れ出す 三井化学工場の同じプラントで 7月の事故後に停止→試験運転中                 配信

ことし7月に塩素系ガスが漏れ出した福岡県大牟田市の化学工場で、その後も塩素系の物質が漏れ出す事態が相次いでいます。9月8日は塩素系の液体が漏れ、6日にも塩素系ガスが漏れ出していたことが新たに分かりました。

三井化学の工場で今度は「塩素系の液体」漏れ 7月の「ガス漏れ」と同じプラント 量はわずか 福岡・大牟田市

大牟田市浅牟田町の三井化学大牟田工場ではことし7月、ウレタンの原料を作るプラントで、腐食が原因で塩素系ガスが漏れ出し、延べ234人が体調不良を訴え、医療機関を受診する事態となりました。 その後、三井化学は原因や対策についてまとめ、9月3日に福岡県に報告していましたが、6日正午すぎに再び同じプラントから塩素系ガスが漏れ出していたことが分かりました。同じプラントからは8日も塩素系の液体が漏れ出していたことが分かっています。 いずれも漏れ出した量はわずかで、敷地の外には出ておらず、ケガ人や体調不良を訴える人はいませんでした。発覚後の消防や警察への通報は速やかに行われたということです。 このプラントは、7月の事故のあと停止していましたが、生産再開に向けて9月3日から試験運転が行われていました。 事故の原因について三井化学は、製造過程に関わるため公表しないとしています。》

ニュースでは幾分時系列が分かりにくくなっているのでまとめてみる。7月に塩素系ガスが漏れ出した福岡県大牟田市の三井化学のプラントで、生産再開に向けて9月3日から試験運転を行っていた際に、9月6日正午すぎに塩素系ガスが漏れ出した。そして8日も塩素系の液体が漏れ出していた。

まず、6日の正午過ぎに漏れた塩素系ガスは文脈から判断するとやはりホスゲンだろう。ただ、このニュースを書いた記者の方は改めて《塩素系ガス》とは何ぞやという疑問を持って、少なくともグーグルで検索してみて欲しい。AIによる回答が先頭に出てきて、何とも分かり難い説明がされている。このAIはなにも分かっていない。その後の検索結果を見ても塩素ガスについての説明そして次亜塩素酸ナトリウム溶液(塩素系漂白剤や洗浄剤)に塩酸を混ぜると危険とする項目が並んでいるだけで塩素系ガスの結果はない。何とも不可解である。有機化学の分野において塩素系ガスという分類はない。いやないだろう。40年以上有機化学の分野で生きてきたが、聞いたことが無い。どうやら、法規で定められている「特殊材料ガス」、「毒性ガス」、「可燃性ガス」を全てまとめた「特殊ガス」という分類の中から、塩素を構成成分とするガスを選んで塩素系ガスと呼んでいるようだ。ホスゲンはこの特殊ガスの分類の中で毒性ガスという項目に含まれる極めて毒性の高いガスである。

もっと分からないのは8日に漏れ出した塩素系の液体である。多分前回と同じ配管から漏れたと思われる。このホスゲンを送っていた配管のどこかで水が混入すると、ホスゲン1分子はは加水分解を受け2分子の塩化水素(HCl) と1分子の二酸化炭素を生じる。塩化水素も二酸化炭素も気体である。それ以外の物質は生じない。考えられるのは配管中に水が存在した場合、つまり管内が乾燥不十分のまま試験運転に入ったため、水に塩化水素(HCl)が溶け込み塩酸となって漏れ出した場合であろう。この推論が正しいとすればまた問題が生じる。塩酸を塩素系の液体とは呼ばないからである。仕方がないので塩素系液体と入力してググってみた。塩素系液体という項目それ自体が存在せず、塩素系洗剤、塩素系漂白剤、塩素系消毒液が代わりに出現する。塩素が含まれていれば塩素系の液体であるならば食塩水も海水も血液さえも塩素系の液体になる。

ホスゲンが漏れた場合にこれを処理する有効な方法は水を霧状にして噴霧することである。従って、化学兵器としてのホスゲンは雨の日には余り有効ではない。7月のホスゲン漏れの事故に際して、現場において水を噴霧して処理したことは間違いないだろう。9月6日にもホスゲンが漏れ出している。この時も水を噴霧して処理したとおもわれる。その際に使用した水が配管内に入り残っていたのだろう。流れてきたホスゲンと水との反応で生成した塩化水素が、残った水に溶けて生成した塩酸が漏出したと考えられる。そして漏出した塩酸を、分子内(?)に塩素が存在するが故に塩素系の液体と表現したのではないか。

この状況を総合的に見ると、配管の老朽化が根底にあるのではないか。ピンホールになりそうな腐食が隠れていそうな気がする。ホスゲンのための配管だから2重配管であろうしそれなりの漏洩対策がなされているとは思うが、ちょっと心配である。2重配管のそれぞれの材質は何だろう。圧力はどのくらいかかっているのだろう。疑問は山ほどあるが、生産

プロセスに係わることなので教えてはもらえないだろうな。

以上、私の推測を交えた感想である。間違っている可能性はあると思う。そうであれば対応する部分を指摘して頂ければ、削除あるいは書き直した上で謝罪することに全く異論はない。

それにしても記者会見において、塩素系のガス塩素系の液体は具体的には何ですかとどうして聞けないのだろう。その質問に対する回答さえあればこんな憶測まみれの文章を書く必要はないのに。視聴者に情報を与えない事を是とする報道の自由が、この世を闊歩している。

追記(大牟田時代の記憶)の続きは次回に廻すことにする。

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