十日ほど前、ナスとトウガラシに農薬を撒いた。農薬は可能であれば使いたくないので極力使わないようにしているのだが、どうしようも無い場合もある。使用量は少なめに、撒いた後の時間はは長めにと考えている。この暑さの中では、日中に薬剤散布は植物にも過酷なので、5時過ぎからの散布となった。予定通りナスとトウガラシへの散布が終わった時、50L程の薬液が残った。薬剤の適用植物を考慮して別の畑の柑橘に散布することにした。
この畑は斜面になっている。いつもなら、平坦な部分に動噴と薬液タンクを積んだ運搬車を止め、そこからホースを引っ張って散布するのだが、時間が遅かったため細い犬走りにそのまま乗り込んだ。八朔とダイダイの5本に散布して帰ろうとしたが、その先にはUターンする場所が無い、少し上に次の犬走りの出口がある。ここに頭を突っ込んで回ろうとギリギリまで右に寄せて曲がろうとした時、右後輪ががけ側に滑り落ちた、ハンドルにすがりついて重心が左側に来るようにして力一杯ブレーキを踏んだ。数日前に切っていた枯れ草の上を50cm程滑って辛うじて止まった。危なかった。同じ日に近くの人がSS(スピードスプレーヤー)で転倒したと聴いた。鎖骨と肋骨と腰骨を折って入院したそうだ。あの滑りが止まらなければ、私も同じ運命に陥っていただろう。
落ちたとすれば、そこは私の土地ではなく他の人の土地である。昨日、近所の人の通夜の席でその土地の持ち主と会った。いやいや危うく貴方にも迷惑をかける所だった。もし死んでいたら事故物件になり、土地の価格が暴落したかもしれませんね、などと話していたら、怪我はなかったのですかと気づかって頂いた。無傷です、でも落ちていたら、私の葬式の方が早かったでしょうねと演技でもないことを言いながら、今後は気をつけます挨拶して分かれた。
もう年だし白内障があって遠近感に不安があるので注意しなければと自戒してはいたのだが、それから7日後、またやってしまった。夕方、田の畦草刈りを終えて帰る時のことである。設置している電柵の発信機をチェックしたら、電池残量の警告灯が点いていた。暗くなる直前だったので、急ぎ気味に堤防の細い道路に入ったら、前方に軽トラが止まっている。離合はできない細い道である。仕方ないかとバックを始めたら右の前輪が道路から落ちた。窓を開けてみると3m程下に水面が見える。右側に重心をかけるのが怖いため、助手席側から何とか外に出た。右の前輪だけでなく後輪も1/3程道路からはみ出している。
知り合いの農機具屋さんに電話をして、ロープで引き上げようとしていたら、この事故を見かけた3人の知人が集まってきた。先ず皆で車の後部を抱えて後輪を道の上に移動させ、それからロープで引っぱり上げて事無きをえた。とはいえこの事故も危なかった。
10日ほどの間に、2回も危ない目にあった。九死に一生を得る経験を二度も繰り返した。タイトルを十八死に二生を得るとしたのはそういう訳である。それにしても、この地区には助け合いの精神が溢れている。手伝って頂いた皆様に感謝感謝である。死に損なったという気持ちもある。神様か仏様かわからないが、お前は現世でもう少し働けと助けて下さったのかもしれない。この我がままな因業爺は何をすればいいのだろう。