ペントースリン酸経路への異論・・・6

 どうも考えることが多すぎてアピコンプレックス門のコクシジウム綱に属するトキソプラズマ(Toxoplasma gondii)を書き落としていた。この失念が本当に失念であるのか、この生物に対する私の嫌悪感が失念を引き起こしていたのかは区別がつかないが、とにかく補足することにする。ともかくToxoplasma gondii のもつペントースリン酸経路を以下に示す。

Toxoplasma gondii のもつペントースリン酸経路

 この経路は、NADPH2 生合成のみならずリボース–5−リン酸の生合成系が可能な植物のもつ経路とほぼ同じ経路であり、ここで取り立てて議論するようなものではない。ただ、寄生する生物であってもこうして完全な経路を維持するものがいるというだけである。

 このアピコンプレックス門に属する生物群は、先にも書いたように寄生性の生活史を持つ。私だけの感覚に過ぎないのかもしれないが、貴方は○○細菌感染症だと告げられた場合はああそうかと思うに過ぎない。しかし、○○と云う原生生物が寄生していますと云われたら、背中がゾクゾクしそうだ。

 さて知られているアピコンプレックス門の生物は全てが寄生性である。宿主は後生動物全般に渡るが、個々の種の宿主特異性はある程度高いと考えられている。腸管、体腔、組織、血液などに寄生し、宿主に対して病原性を示すものが多い。人に寄生するマラリア原虫を初めとして、アピコンプレックス門の原虫によって引き起こされる代表的な疾病には以下のようなものがある。

 バベシア症(Babesia): マダニの吸血の際に唾液を介してスポロゾイトが宿主内に侵入して発症する。症状は発熱と溶血性貧血を主とする。日本ではギブソン犬バベシア Babesia gibsoni 、および犬バベシア Babesia canis 感染による犬のバベシア症が存在する。

 クリプトスポリジウム症 (Cryptosporidium): 土壌や水、未調理もしくは感染者・感染動物の糞便に接触して二次的に汚染された食物などにより経口感染し、哺乳類の腸が障害を受ける寄生虫病である。免疫系が健全なヒトに対しては自然寛解性の2週間程度続く下痢が主な症状である。しかし免疫不全状態にある人では、重症化ししばしば致死的になる。クリプトスポリジウムのオーシストは塩素系漂白剤などの消毒剤に高い抵抗性を示す。

 マラリア (マラリア原虫、Plasmodium): マラリアについてはよく知られているので、説明は省くことにする。必要な情報は、大まかにはウィキペディアのマラリアの項を参照されるか、https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB のマラリアの項を見れば良い。一寸興味深いのは、マラリア原虫はアピコンプレックス門 胞子虫綱 コクシジウム目に属するのだが、分子系統解析の結果に従えばアルベオラータという系統に属する。ここには渦鞭毛藻類も属することが知られているのみならず、近年マラリア原虫からも葉緑体の痕跡が発見された。そのため、その全てが寄生生物であるアピコンプレックス類も、祖先は渦鞭毛藻類と同じ光合成生物であったと考えられ始められている。そうであれば、植物とほぼ同一のペントースリン酸経路を持っていても不思議はない。

 トキソプラズマ症 (Toxoplasma gondii): トキソプラズマ症 についても必要な情報は、大まかにはウィキペディアのトキソプラズマの項を参照されるか、https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB のトキソプラズマの項を見れば良い。そんな説明で済ますのであれば書くなといわれそうだが、幾分気になることがあるのでその部分について書くことにする。

 トキソプラズマは人を含む幅広い温血動物に寄生するが、終宿主はネコ科の動物である。人間への感染は、シスト(感染した生物の脳や筋肉の組織中に厚く丈夫な壁に包まれた球形の塊をシストと呼ぶ。シストは数千におよぶ緩増虫体(ブラディゾイト)を含み、無性生殖によりゆっくりと増殖している。)を含んだ食肉を食べること、オーシスト(終宿主であるネコ科の動物に感染すると、有性生殖を行ってオーシストを形成する。オーシストは糞便中に排出され、環境中で数日間かけて成熟後、数ヶ月以上生存する。)を含むネコの糞便に由来する経口感染が主である。

 トキソプラズマ症 は世界でも広く存在する感染症で、世界人口の3分の1が感染していると推測されている。健康な成人では感染しても無症状に留まるか、数週間のあいだ軽い風邪様の症状が出る程度である。しかし免疫不全状態にある人においては、重篤な日和見感染を引起こして死に至らせることもある。ということから、二つほど暗い未来が予測できる。

 私はコロナワクチンに関して陰謀論者に属している。このワクチンに関して明るく前向きに考える至極まともな人は、以下の議論を無視して欲しい。陰謀論者の界隈では、このワクチンによって免疫のレベルが下がり、種々の病気を誘発していると考える。よく知られているのは帯状疱疹だが、ターボ癌と呼ばれる急速な癌細胞の増殖も免疫レベルの低下が原因であると考えられている。この二つ以外にも色々とあるのだが、それらを列挙して人を脅すのは本意ではない。

 問題はトキソプラズマである。世界の3分の一の人が感染しているとされるこの原虫、いままでの普通の生活においては人の免疫系によって無害なレベルに制御されていたのだが、ワクチン接種者の免疫レベルが低下した時どんなことが起こるのだろう。免疫抑制状態の人が罹患すると、中枢神経系障害や肺炎・心筋炎、さらに重篤なトキソプラズマ脳症を発症するとされている。我が国のマンションでもネコの飼育が増えている状況であるため、一寸気になるな。屋外で飼えばネコが感染する可能性が高くなるし近所への迷惑が気になる。室内に閉じこめて飼ったほうが安全だとは思うが、室内で飼うとネコとの距離が近づいてしまう。さらに、ネコと云う生き物は必ず脱走する生き物である。油断はできない。これが一つである。

 さて、ロバート・A・ハインラインの作品に「人形つかい」という寄生生物を扱ったSFがある。具体的な詳しい内容は忘れたが、宇宙から侵入した寄生性の異生物についての物語で、その異生物はナメクジのような形状をしており、それが人の背中に張り付いて人間の脳を乗っ取ってしまう。服を着れば通常の人間と見分けがつかないという状況の中で、この異生物と戦うと云う内容だった。読んだのが 50 年以上前なのでディテールは記憶していないが、気色の悪い小説だなと記憶に残っている。

 じつはトキソプラズマの慢性感染が、宿主の精神や行動に影響を与えるという研究報告がいくつも存在する。例えばトキソプラズマに感染したマウスは、ネコを恐れなくなるという。これはネコを終宿主とする原虫にとっては都合がいい。ネズミだけではなくトキソプラズマの慢性感染によりヒトの行動や人格にも変化が出るとする研究報告も存在する。男性はリスクを恐れなくなる、集中力が散漫となり、規則を破り、独断的、反社会的になるという。女性は社交的で男性に媚びをうるなどと云う傾向が出るそうだ。こうなるとまるで人形遣いの世界である。これが私のトキソプラズマに対する嫌悪感の原因である。勿論、真偽についてはわからない。とは言え近年の研究によって、アルツハイマー病、パーキンソン病だけでなく、統合失調症、双極性障害、パーソナリティ障害、間欠性爆発性障害など多くの精神疾患との関連が指摘されるようになってきた。いわゆる切れる人が近年増えているように感じているが、免疫レベルの低下でトキソプラズマの活動が高まっている可能性はないのだろうか?これが2つ目。

 ニュースを辿りながら、社会が荒れているな、何かおかしいな、まさかと思わせられる事件や事故が多発している様に感じている。ワクチンを打ったであろう約一億人のうち三千万人位の人がトキソプラズマの慢性感染者であるとする。免疫低下に伴うトキソプラズマの活性化によりパーソナリティ障害を起こす割合など全くわからないが、0.1%の人が影響を受けるとしても三万人が異常を示すことになる。そんなことはあり得ないと否定する方がおられると思うが、ワクチンを打った後、性格が変わったと云う話は時々耳にする。偽相関であれば良い、私の推論が間違っていれば良いなと願っている。

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