昔、筑紫野市二日市に10年ほど住んでいた。すぐ近くというわけではないが、徒歩で20分余りの場所に大丸別荘があった。温泉に行くような身分ではなかったし、温泉自体をあまり好きではないので、訪れたことはない。従って、この旅館に対して別段の愛憎はない。先日以来、風呂の水の交換をほとんどしていなかったため、水中のレジオネラ菌が基準値の3700倍にも上ったとの報道に接し、フーンと思っただけである。
二日市に住んでいた頃(1976年)、アメリカの在郷軍人の集会で謎の肺炎が集団発生した。健康な男性の集まりであったにもかかわらず、225人が発症し 34人が死亡した事件であった。原因は、会場となったホテルの空調設備内にレジオネラ菌が大量に繁殖しており、そこからの感染であったと伝えられた。 在郷軍人は英語でレジオンlegionnaireであることから、病原となった菌はLegionella pneumophilaと名付けられた。当時、在郷軍人以外ーつまりホテルの従業員やこの会の前後にホテルを利用した客ーに患者が出たという報道はなかったと記憶している。そこに幾分かの疑問を感じていた。
この菌についての説明を読むと、感染力は弱く、健康な人にほとんど感染しない。人から人への感染もほとんどない。 ただ、幼児、高齢者、免疫低下者、男性喫煙者、飲酒家などは感染しやすくなると書いてある。但し、空調用冷却水塔、循環式浴槽(いわゆる24時間風呂)、循環式給湯器、加湿器、噴水など、水を取り替えず消毒していない環境では大量に増殖することがあり、 これらが感染源となるという。困ったな。先のフレーズ、健康な男性の集まりであった在郷軍人の集会で謎の肺炎を引き起こし34人の死者を出した原因であるレジオネラ菌と、感染力は弱く、健康な人にほとんど感染しなのみならず人から人への感染もほとんどないと言う記述が微妙に矛盾しておりそこはかとない違和感を感じるのである。
基準の3700倍もの細菌数が検出されたというが、それは測定した時点での数値であってそれ以前の数値はわからない。もっと多かったかもしれないし少なかったかもしれない。とはいえ、宿泊客に肺炎患者が出たという報告はないようだ。この経緯を見ると、上にかいた違和感が一層強くなるのである。
と書いていたら、大丸別荘の前社長が自殺したというニュースが飛び込んできた。今後も決して行かないであろう場所であり、個人的に繋がりのある人でもないため特段の感慨はない。とはいえ、少し唐突に感じた。少なくとも周囲から批判・非難・中傷を受けた経験が少ない人のようにみえた。
それはそうと、少しだけ疑問に思ったのは、かっての在郷軍人病の病原菌は本当にLegionella pneumophila だったのかという疑問である。会場となったホテルの空調設備から飛散したLegionella pneumophila の菌量と、ホテルの浴場でシャワーを浴びた時の菌量はどちらが多いのだろう。ここのお湯の検査で見いだされたLegionella pneumophilaは、同じ種であったとしても極めて感染力が低いか感染しても発症しない変種であったのだろうか。もしそうであれば、この菌は理想的な生ワクチンの候補になり得るだろう。でも、一般的なレジオネラ菌自体が、感染力は弱く、健康な人にほとんど感染しないのみならず人から人への感染もほとんどないというのであれば、そんなワクチンは不要だな。とはいえアメリカの在郷軍人の集会でおこった謎の肺炎ー新型コロナウィルスよりはるかに高い死亡率を示した謎の病原体ーが、 Legionella pneumophila であったとする結論が誤っていた可能性があるのではないかと感じている。これ以上は書かない。またもや陰謀論者と言われるから。
多くの方が暫くの間このホテルの利用を控えるだろう。だが、営業停止が終わった直後など、ホテル側は信頼回復のため最大限の注意を払うことは間違いない。利用客にとっては最も安全な期間とも言えるし、サービスも良いだろう。いやいや、とりとめのない駄文でした。