春の兆

 数日前、イカル(鵤)の囀りを聴いた。イカルはスズメ目アトリ科の小鳥で全長は約20cmで 体は灰褐色で,頭・顔・翼・尾は紺色と書かれている場合が多いが、野外では白黒のツートンカラーに見える。春先だから囀るというわけではなく四季を通じて声は聞ける。見かけよりはるかに声は美しい。強そうなくちばしで木の実や草の実を食べることから。マメマワシ、マメコロガシなどの地方名を持つ。この鳥の声はとても綺麗で、カタカナで書けばキーコキーと聞こえるが、これを蓑傘キー(蓑傘を着ろ)と聞きなして明日は雨だと予想したり、赤ベコ着ー、月日星と聞きなす地方もある。さて斑鳩の里と言えば奈良県、聖徳太子が住んでいたとされる土地で、七世紀初頭に法隆寺を建立し隣接した斑鳩宮に自身も起居したとされている。ところが推古天皇をはじめ主だった豪族たちは飛鳥に暮らしていた。斑鳩と飛鳥、直線距離にして20キロほど離れたふたつの都を結ぶ道路は「太子道」と呼ばれる道で結ばれていたという。聖徳太子は斑鳩宮からこの道を通って飛鳥まで通っていたように書いてある場合があるのだが、それはないだろう。あの時代、片道20Kmの通勤は遠すぎる。過酷な通勤である。なんらかの理由、あるいは歪曲があるのだろう。ここまで3月5日である。

 ここ数日、コジュケイの地鳴きを良く聴く。もう春だなと思っていたら我が家の桑の木にコゲラがきた。結構長い時間、木の幹を突いていた。その木にはクワカミキリの食痕が沢山あったから有り難い話である。日没後の向かいの林では、フクロウが大声で鳴いている。都会で聴くことは殆どないと思うが、ゴロットホーセー・コーズと野太い声で鳴く。いやいや楽しいひと時である。この春の兆、書き始めたのは2週間程前、未だ寒かった。その頃は庭に捨てた完熟の渋柿に、50羽どころではないメジロの群れが毎日訪れていたし、そのメジロを蹴散らしてヒヨドリも多数きていた。山の畑周りの雑木林では四十雀にまじって山雀の囀りも聞こえていたため、餌台を作って好物であるヒマワリの種を置く用意を始めた。とはいえ、近くの林に住むハイタカが襲うのではないかと危惧している。餌台を置く場所に工夫が必要だろう。

 などと、のんびりした春の話を書こうと思っていたら、コオロギがニュースの前面に出るようになってきた。初めの頃は興味半分の話だと無視していたのだが、実際には余程周到な根回しがされていたようで、驚いている。敷島製パンや無印良品などの大手企業のみならず、かなりな数の中小企業と大学を巻き込んだ研究・実施グループが作られていたようだ。私の住んでいる筑後川中流域は、過疎気味でそんな事とは縁が遠いと思っていたら、認識が甘かった。我が家から20分程度の所にある日田市の醤油会社「マルマタ醤油」〜創業安政六年(1859)の老舗〜がコオロギ醤油を売りだしていたのである。

 国会にはフードテック振興のための議員連盟と言う組織があるようだが、その中にコオロギ食を推し進めている議員さんがいるらしい。何しろこのフードテック議連のホームページの表紙がコオロギパウダー入りのパンである。(https://www.foodtech-giren.jp/)名簿に河野太郎が抜けているような気がする。巷には、コオロギ食用化に支援金・補助金が6兆円ほど流れているという話があるが、これはさすがに盛りすぎだと思う。金額については想像のしようもないが、コオロギ食用化を進めようとする議員連盟があり、徳島大学を始めとする大学群があり、敷島製パンや無印良品などの企業群がある事を考えると、想像以上の多額のお金が流れている可能性は否定できない。農水省や経産省あるいは厚労省の予算に潜り込ませてあるのかな?近頃、異常に膨れ上がっている予備費の可能性も捨て難い。

 これらの国会議員が何を食べようと気にはしないが、人の食い物にまで介入するのはやめてくれ。気持がち悪いのは、フードテック振興議員連盟の構成員が与党だけでなく、野党議員にも広がっていることだ。まさかと思われる人の名前まで上がっている。

 と書いてアップしようとしていたら、SVC(シリコンバレーバンク)破綻の話が飛び込んできた。続いてすぐにシグネチャー銀行、そして名前は忘れたがもう一行が破綻したという。その理由については沢山の報道があるので、皆さんご存知の事だと思う。この騒動が収まるかどうか、米政府が預金者への払い戻しを迅速に決めて発表したので、しばらく注意して見ておくことにする。何しろ預金者保護を発表した米政府には、保護に必要なお金の裏付けがない。さらにだが、シリコンバレーバンクは数年前まではトランプと良好な関係を保っていたのだが、数年前から民主党へと支持を変えた経歴がある。政府が借金をしようとしても、共和党優位の下院を説得できるかどうか?

 その後すぐスイスのクレディスイス銀行が危ないというニュースが流れてきた。今回の危機には関係ない話だが、クレディスイス銀行にはあまり良い印象を持っていない。クレディスイス銀行を使うほどの大金を持ったことはないので個人的な話ではない。以前勤めていた大学の理事長?か理事会?が、38億円だったと記憶しているが、大学の金をある証券会社を通して何かに投資をしたという。この投資資金が、あれやこれや訳のわからないルートを通ってクレディスイス銀行へと流れ込んだ後、タックスヘイブンの国へと送金され、その足跡が消えたと聞いた。我々が聞かされた説明が事実であったかどうかはわからない。金額だって正しいかどうか自信はないが、とにかくこのお金の失踪事件にクレディスイス銀行が噛んでいることは事実だったと思われる。だからクレディスイス銀行にはあまり良い印象を持っていないというわけである。極々私的な、意味のない感想である。

 リーマンショックの時、我が国の政府は我が国への影響は軽微であると表明したが、振り返ってみれば我が国が最も酷い影響を受けたことを記憶している。今回の危機について、現政府は影響は少ないとの見解を発表しているが、何が起こるかわからないというのが現実だ。少し以上に身構えてショックに備える必要を感じている。でも、何をすれば良いのか、それが全くわからない。銀行から預金を下ろしておけと言う人がいるが、我々が慌ててそういう行動をとったら、その時点で取り付け騒ぎが起こるだろう。備蓄を勧める人もいるが、そんなに沢山できるものではない。一週間程度の災害用の備蓄なら何とかなるにしても、一年分とか言われたら夢のまた夢である。山の栗畑の周囲に野菜の種をばらまいておこうという程度である。

 でもね、クリは葉っぱから何か分泌しているらしく、この木の下には殆ど草が生えない。たとえ生えても、小さくひょろひょろとしている。クログルミという植物がいる。この木の回りには雑草が少ない事実が知られている。クログルミは葉からジュグロンというナフトキノン系の物質を分泌する。雨が降るとジュグロンを溶かした水が樹冠の下に降り注ぐ。ジュグロンは他の植物の発芽と生育を阻害する。いわゆるアレロパシーと呼ばれる現象である。クリもそうであるならば、栗林の周りに野菜の種を蒔いても無駄かもしれないな。

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