花それぞれ

 畑では町中では見る事が少ない花が咲き始めた。私は大きく艶やかな花は余り好みではない。道端で思いがけず咲いている花の方に共感を感じる。イヌフグリの仲間やキュウリグサ、スミレも好きだな。スミレの仲間は変種が多くて、名も知らぬスミレとしておいたほうが無難だろう。カタクリの花も山の畑で見る事がある。家の庭には、仏壇に供えるために何種かの植物を植えている。この時期であれば金盞花、矢車草、撫子など、変化をつけたい時はそのあたりから野生化した水仙とか菜の花をつけ加える事にしている。近頃販売されている花苗は、花は豪華だが花茎が伸びないためお供えに向かないものが多い気がしている。従って、古い品種で価格の安いものを買って植える場合が多い。

 数日前からクワ、柿、甘夏、レモンなどに薬剤の散布をしているのだが、今日の時点でクワとブルーベリーが満開である。ブルーベリーはツツジ科の植物で、同じくツツジ科に属する馬酔木とよく似た花を咲かせる。

ブルーベリー 満開です

 一方、クワの花は全く花らしくない。

クワの花 長径が1cm程度

 いや花ではあるのだが白く小さな雄しべが一寸覘いているだけで、目立たない事この上ない。そこにクワの木がある事を知っており、かつ今ごろが花期である事を知っていたとしても、間違いなく見落とすに違いない。まあ多くの人が言うだろう。ブルーベリーは虫媒花だから虫に見つけてもらい効率的に受粉ができるように進化した。クワは風媒花だからきれいな花は必要ではなく、みすぼらしいとは言わないまでも目立たない花を作ったと。でもそこには統一した基準がない。次の世代のために効率的は受粉を達成する事が重要な事であれば、いやそれがもっとも重要な事と考えるが、そうであればこの2種類の植物は絶滅する事もなく世代をつないできたという意味において同じであろう。花が目立つか目立たないかで受粉効率を速断し、それを進化と結びつけるのは論理の飛躍が大き過ぎる。

 ブルーベリーにはブルーベリーの生き方があり、クワにはクワの生き方があったに過ぎない。虫媒花の方が受粉効率が高いという判断に、確とした根拠があるのだろうか。

風媒で受粉を行う裸子植物として、針葉樹類に分類されるマツ、カラマツ、スギ、ヒノキ、トウヒ、セコイア、メタセコイア、アスナロ、モミ、イチイ、カヤ、ナギなど、イチョウ類のオハツキイチョウ、ラッパイチョウ、キレハイチョウ、シダレイチョウ、ソテツ類のソテツ、オニソテツ、シダソテツ、ディオーンなどがあるのだが、一部の植物は胞子を飛ばして花粉症を引き起こすほどに繁栄している。

 一方、風媒で受粉を行う被子植物としては、ブナ科のブナ、カシ、ナラ、クヌギ、ヤナギ科のシダレヤナギ、ネコヤナギ、ポプラ、クワ科に分類されるクワ、イチジク、カバノキ科のシラカバ、ハンノキに加え、イネ科のイネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、イグサ科のクサイ、スズメノヤリ、カヤツリグサ科のカヤツリグサ、パピルスなどが知られている。それ以外にも、ヨモギ、ブタクサ、クルミ、ヤマモモ、イラクサ、アシ、ガマなどが存在する。

 イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシは我々の食糧として不可欠な植物群である。それ以外のイネ科やカヤツリグサ科、あるいはキク科植物なども水田や畑の雑草として除草剤で殺され続けているが、減るような気配もなければ受粉効率が悪いなどという評価が当てはまりそうもない。

 ブルーベリーは実が熟すまで食べられないが、クワの若い葉っぱは天麩羅にするととても美味しい。タラの芽と似た味である。1−デオキシノジリマイシンが含まれているそうなので、食後の急激な血糖値の上昇を抑えるだろう。

ブドウ糖と形が似ているので、グルコシダーゼの活性部位にはまりこみ多糖類の分解を抑えるといわれている。
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