以下の文章を書いたのは2013年の12月の頃である。Wordファイルの日付がそうなっているので間違いないだろう。私が大学を辞めたのが2010年3月であったので、退職後1年半ほど経った頃の文章である。この時代のブログがグチャグチャになっているため今書き直しているわけだ。まあ、この時代も今の世の中と同じく混乱しきっているところだけは共通している。
この部分を書いているいま、世の中はまだ偽装偽装と騒がしい。食品偽装なんてローマ時代から当たり前に起こってきたことである。先ず何を以て偽装と定義するかが難しい。我々の世代が幼なかった頃、バターといえばマーガリンのことであった。牛乳といわれて脱脂粉乳を飲まされていた。つい先頃までは、外国育ちのウシが生きたまま輸入され、3ヶ月以上国内で飼育されれば国産牛であったではないか。農水省によれば、鶏卵の自給率は約95%、鶏肉の自給率は約70%だそうだが、飼料の自給率は10%程度だという。さて鶏卵と鶏肉は国産と言えるのだろうか。発泡酒よりビールから遠いアルコール飲料を第三のビールと称するのは偽装ではないかなどと言い始めると、いよいよ何がなにやら分からなくなる。
では、どうでも良いかとえば、そういうわけにはいかない。やはり、やってはいけない限度があるだろう。問題は、その限度を何処に置くかということであろうが、この部分を過不足なく法に記述することは恐らく不可能である。さらに、いくら法で縛っても、ばれなければ良しとする人達が多数存在するのは間違いない。つまり、この部分は関与する人達の良心、正義感、品格に依存するのである。いつの時代になっても、取り締まりをする人と法の穴を潜る人のいたちごっこが続くだろう。ただし、高級感を唱って高い金をふんだくっているところがやってはいけない。それは高級感をウリにしている一見一見高級そうな企業の上層部の人達が、良心を亡くし、正義感をなくし、品格さえも持たない下劣な人間であるという証明になる。いまなら目立たないとばかりにアワを食らって公表し、詐欺罪での告発を恐れて、知らなかった、誤表示であったと逃げ回る社長様方の姿は、実にみっともない。さらに可哀想なのは、そんなところに出没していたグルメを自認する人々の味覚が、実に浅薄なものであったことが暴露されてしまったことである。もっと書きたいが、余りに辛辣になるので止めることにする。品格あるブログであるために!
新米農民である私にも関係ありそうなTPPに関して言えば、特定秘密保護法ががすでに機能しているらしく、何をどう交渉しているのか全く見えない。とはいえ、漏れ伝わる報道をトレースすると余り嬉しくないことばかり決まっていくようである。賛成派は時代遅れの市場原理主義、新自由主義とグローバリズムから借りてきた総論だけで事を進めようとしているようだ。一方反対派は、農業だ、医療だ、自動車だと各論に偏して(これらが大事であることは認める)、全体を見渡した理念に基づく総論がない様に感じる。次の時代を、どのような理念の下で運営するのかという議論が先に来るのではないか。
ただし、無慈悲な自由競争と自己責任を第一原理とするグローバリゼーションが、落ち着いた気品ある社会をもたらすとは思えない。セクショナリズムという言葉は良い響きを持たないが、世界の各地域が、それぞれの地域の文化と宗教と社会体制を相互に尊重しながら、緩やかな交流を目指す新たなローカリズムを提唱すべきではなかろうか。20世紀という時代は、自由主義・民主主義という強烈な光を放つ理念をもって世界を画一化しようとした時代であった。〔と思う〕 しかし、光は影を伴うことに気づかねばならない。光が明るければ明るいほど、影もまたその暗さを増すのである。21世紀になってから、世界はこの影にたじろぐ国々が増えてきたのだが、皮肉にも自由主義・民主主義を標榜する国々で自由主義と民主主義を制限する動きが甚だしい。
何で、そんな状況になったのか。考えて見れば、マスコミが身の安全と既得権の保持を報道の原点に置いたため、どうしようもないモラルの破綻と質問能力の劣化を起してしまったことが原因だと思われる。政府の偽装と隠蔽が限度を越えた感がある今日この頃だが、実はここまでの議論の中で私も隠蔽しているデータがある。
隠蔽したとはいっても、一応は「進化速度解析の段階で、これらを解析から除くと断って隠蔽している。しかし、そうしたデータを解析から除くことに関して、それなりの合理的理由を示しておくことは必要だろう。
カルコンシンターゼ・スチルベンシンターゼ(CHS/STS)についてだが、ホップ、ペチュニア、シロイヌナズナ、ブドウだけでなく、かなり多くの植物に異常と思える配列が存在する。この異常な配列を除くという操作を正当化しないと、CHS/SSの進化速度に関する考察の正当性が失われてしまう。ではどうするか。ゲノム解析の終わっているシロイヌナズナと西洋ブドウを例にして、それらの配列を排除した妥当性を示すことにしよう。
シロイヌナズナにしても西洋ブドウ(Vitis vinifera)にしても、彼らのゲノムの中にはかなりな数のCHS/STSと分類される配列が存在する。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)であれば、CHSあるいはPupative CHSとして36本の配列データが存在するし、西洋ブドウ(Vitis vinifera)であれば、CHS, SS, Resveratrol synthaseあるいは Putative uncharacterized proteinという名称で73本のアミノ酸配列が存在する。先にCHSの進化速度を求めた際に、シロイヌナズナにおいては3分の2の配列を恣意的に捨てていた。少なくとも転写レベルでの確認がされているアラビドプシスのカルコンシンターゼ類は19種存在するが解析に使ったのはタンパク質としての発現が認められているP13114を含む12種で、残りの24種については捨ててしまっている。西洋ブドウにおいては、73本のアミノ酸配列の中で少なくとも転写レベルで発現していること、かつタンパク質レベルで発現している配列と同じクラスターに属していることを条件に68本の配列を捨て5本のみを解析に用いている。
この捨てた処置が妥当であるという論証をしておかないと、データの恣意的隠蔽に基づいて算出した偽の結果であると、後で糾弾されることになりかねない。品格ある仮説の提示と節度ある定説の批判を心がけている筆者としては、偽装・隠蔽・暴露・糾弾という連鎖に陥ることはあってはなるまい。
まずアラビドプシスについてだが、これら36種のアミノ酸配列からフラグメントと表示してある15本を除いた21本について系統樹を描くと、下に示す系統樹が得られる。
系統樹は、それぞれ12本からなるA群と8本の配列を含むB群のクラスターに分かれる。タンパク質レベルでの発現が確認されている P13114は正常群に含まれる。解析に用いた配列は全てこのAのクラスターに属している。ここで、A群から3本の配列(P13114を含む3本)、B群から4本(trの023674を含む)配列を選び、再度系統樹を作成した。
上にこの段階での樹形図を示す。上図から6本の配列を抽出しただけの下図は上の図の簡略版みたいなもので、なんの問題もないように見える。だが、ここには大きな問題が潜んでいるようだ。この問題を顕在化させるためには、アウトグループを入れた解析をすればよい。この7本の集合の中に、タンパク質レベルで発現し機能していることが知られている4本のCHS(アルファルファ、アサ、オトギリソウ、クズ)と5本のSTS(ブドウ、ピーナッツ、ストローブマツ、ヨーロッパアカマツ、およびミカズキゼニゴケ)を加えて解析し、UPGMA法で描いた樹形図を下に示したが、ここにおいてその問題が現出している。まず、何度も云うようだがP13114はアラビドプシス体内での発現が確認されているCHSである。
正常なと言い切るのは幾分気がひけるが、正常と思われるA群の隣にオトギリソウとアサの作るグループとマメ科植物であるアルファルファとクズからなるグループがカルコンシンターゼのクラスターを形成している。その外側にピーナッツ、ブドウ、そしてマツ科のストローブマツとヨーロッパアカマツからなるスチルベンシンターゼの配列が存在し、その外側にミカズキゼニゴケのスチルベンシンターゼQ51Y1 MARPOが位置する。ここまでは問題はないが、それから先がいけない。いわゆる正常と思われるCHS/STSからなる大きなクラスターの外側に、アラビドプシスの4本のCHSグループが位置しているのである。
先に述べたが、少なくともスチルベンシンターゼQ51Y1 MARPOと4本のCHS(アルファルファ、アサ、オトギリソウ、クズ)の分岐は4.7億年ほど前に起こった事件である。枝の長さから判断すると、一番外側に位置しているアラビドプシスの4本のCHSグループは、その他の配列群に対して4.7億年の2倍近い昔に分岐したことになる。論証の現時点でこれら4本のCHSについて合理的説明を加えようとすれば、偽遺伝子の概念を取り入れるしかないだろう。