近頃、悟ったというか開眼したというか、新聞の正しい読み方を身につけたような気がする。昨日はドラフト会議が行われた。新型コロナウイルス感染症の感染を防ぐために、各球団に別室が割り当てられ、抽選の時だけ抽選会場に現れるシステムだったという。結果として各球団が育成ドラフトを含め123人との交渉権を得たわけだ。幾つかの球団が競合したドラフト1位の選手がいれば、密やかに育成の12位で入った選手もいる。
新聞を読めば、これらの選手は来シーズンから直ぐにレギュラーのの座を勝ち取るが如く書いている。育成で獲得した選手であっても、類い希な能力を持ち数年後はレギュラーをとる素材であるそうだ。私だってこのドラフトで選抜される選手達が、希に見る天才である事はよく分かっている。年に120人あまりしか選抜されないとすれば、東大より遥かに狭き門である。(因みに東大の定員は約3000人である。)そして、ドラフトで選抜された選手達にたいして、スポーツ新聞のみならず大きな発行部数を誇る新聞までが、ただただ持ち上げる提灯記事を書くのだが、実際に一軍に定着できるのは少数にすぎない。厳しい世界である。
そんなことは知っているよと思われる方が殆どだと思う。そんなものだと私も気付いてはいた。何部売ったかが勝負の世界では、たくさん売った新聞社が勝ちである。変に批判的な記事を書いて球団から取材拒否でもされたら、担当記者は懲罰ものだろう。これは野球だけではなく、テニスだろうとゴルフだろうとスポーツ界に共通する馴れ合いのシステムであるようだ。来年のオリンピックは中止で間違いなさそうだが、今までのオリンピックにおける直前の提灯記事を信じるとすれば、毎回金メダルは100個くらい取れそうであった。
スポーツ界や芸能界について少々の提灯持ち的な記事が氾濫するのは、またかとは思うものの、娯楽であるが故に許容範囲にあるのかなと思っている。私も丸くなったな!!だが、しかしである。このシステムが、長い間政治の世界でも通用していることには辟易している。どの内閣でもよい、就任した各大臣について、マスコミはいろいろな情報を持っているはずである。その取材を元に、この方は△△大臣に任命されたが△△分野に通暁しているとは思えないとか、○○関連の政策で××企業との癒着が噂されており、任期途中での辞任の可能性があると書いても良いだろう。その予想が当たればスクープではないのか。しかし、認証式の次の朝、新聞紙面は高下駄を履かせて神輿に乗せたような記事で埋め尽くされる。そんな記事を、貴方なら読みたいと思いますかと記者諸氏に聞いてみたい。
新聞は読者のために字を大きくし、漢字を減らした。スポーツ関連のスペースを増やし、外国記事を減らした。広告のスポンサーに不利なことは書かない。国内の記事は自ら取材したものではなく公式発表に合わせた忖度記事にする。どうも読者のレベルを低く見て馬鹿にしているのではないかと感じている。このままではネット記事に押されて、新聞自体が消滅の危機に陥るだろう。今後、娯楽的なお気楽記事を書く新聞が生き延びるのか、それとも真摯に事実を伝える新聞が生き延びるのか、それを予想するのは難しい。とはいえ、言論人としての矜持は持ち続けて欲しいと願っている。
午前一時を過ぎているのだが、アメリカで株が急落しています。新型コロナ感染症への不安、あるいは大統領選に対するデモンストレーションかな。売っているのは誰だろう。