百姓きついか楽しいか? 2

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 さて、そうして始めた百姓である。最初、農業者の資格を得るために標高200mほどの山ーここには果樹園が沢山分布しているーの中腹に7反(約2000坪)の土地を買った。前の地主さんはこの場所に庭木として販売用の槙の木を植えていた。運良く、北京オリンピックと上海万博があり、庭木としてはとても売れないほど大きくなっていた槙の木は全部良い値段で売れたそうだ。何も生えていないその跡地を買ったわけである。農業をしていないと農家ではない。農家ではないと、農地が買えない。当時いや今でもだが、農家ではない人が水田を買うには、農業者でないと駄目である。農業者と認定されるには5反以上だったかな、農地を持っていないと駄目という農地法3条の縛りがある。どこか不合理だが、それなりに合理的な法律である。岩盤規制というモノは壊さなければならない、壊すのが正義であると無条件に進めるのが現代の風潮だが、岩盤規制があったのにはそれなりの合理性があったからである。大事ではあるが鬱陶しい話はここでは止めよう。

 そうして農家として基盤となる2000坪の農地を手に入れた後は、住宅の購入(農地付きだったので農地法で縛られる)も水田の購入もスムーズに進んだ。とはいえ自分一人でできたわけではない。全て、師匠が話を付けてくれた。持つべきものは師匠である。水田を持ち、畑を持ち、果樹園を持てばもう農家である。

 それで楽しいか。これが問題となる。答えは楽しい。好きな品種の作物を自由に植えられる土地がある。植えると芽が出る。生長する。但し、冬の作業はひたすら寒いし、夏は過酷なほど暑い。ちょうど良い季節はほんのちょっとである。それでも楽しい。トラクターとユンボは思ったように動かない、管理機と畝立て機でさえ自由にならない。イメージ通りに動くのは草刈り車と刈り払い機だけである。つまり畑の草刈りをしておけという風情である。機械に遊ばれて四苦八苦していると、近所の人がニコニコ笑って通る。こちらも照れ笑いをするしかない。それで良いと感じることができれば楽しいもんです。時には、ここはどうすれば良いのと聞けば良い。なまじ私の前職が大学の教授であったため、教授から聞かれて嬉しいという人もいる。そんなことも知らんのかという人もいる。そうなんですよ、是非教えて下さいと言えば、例外なく実技付きで教えてくれる。料金は只である。そうして仲良くなると、カキや梨やブドウを持ってきてくれる。最高です。

 注意すべき事は、地元の人達の畑、果樹園は生活の基盤で有ると云うこと。私の畑は、採れた作物を出荷するとは云え、年金への上積みを目的としたもので、そこだけに依存しているわけではない。仕方なく農薬を使う場合、その農薬のドリフトで、隣の畑の作物が出荷できなるなるような事は避けねばならない。例えば、私は柿の木を7本育てている。隣にナシ畑がある。梨の出荷はお盆の前後である。とすれば、その時期に梨に登録のない農薬は決して使わないし、例え登録があるにしても使用時期に対する規制にかかるような使い方はしないことにしている。今年はちょっとばかり柿への散布時期を逃してしまった。梨の出荷時期に被りそうになったわけだ。だから、8月前半の柿への防除は取りやめた。そのせいで炭疽病が頻発しているが、それは仕方がないと割り切っている。何と云おうと、私は新参者である。地域に根付いて生活してきた人々の邪魔をしてはいけない。

 その程度の気遣いを忘れなければ、百姓は楽しい。マスクが要らない。毎日外出して、深呼吸して歩き回れる。身体を動かせばお腹がすく、そうすれば飯がうまいしよく眠れる。退職した後、都会にとどまらなくて良かった。本当に農業で食べるのであれば辛い場面が多々あると思う。退職後の10年程度の間、日本の農地を荒らさずに維持するという立場で入植し、健康に良さそうな生活をするという老後も一つの選択肢であると思っている。

 それはそうと、アメリカの株が下がっています。英国の問題が原因かなとも思ったのだが、ドイツ株の方がイギリス株より値下がり率が大きい。ドイツ銀行の問題でも再燃したのかな。明後日の東京市場が心配ですね。私は一株も持っていないので直ぐにどうだということはないとはいえ、このコロナ不況下での暴落が何を引き起こすかを考えると怖いですね。

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