ヒユナという野菜がある。別名ジャワホウレン草、バイアムともいう。暑さに強く乾燥に強い。他の青物野菜が切れるこの時期に収穫期を迎える野菜である。癖のない味で小松菜の代わりに使え。汁物に入れてもいいが、豚肉と一緒に炒めると結構いける。このヒユナを道の駅で売ろうと考え、昨年試験栽培を行った。5月中旬に播種したヒユナは、病虫害を受けることなく2メートルを超えるまでに生長した。産直販売をやっている近所の方が、少し分けてくれと持って行くほどの収穫であった。
そこで今年、5月から200本あまりのヒユナを植えていたのだが、どうしたわけか早々に薹立ちを始めた。薹立ちが始まると栄養生長から生殖生長に切り替わるため、葉が固く小さくなって食味が落ちてしまう。そういえば、スイートバジルの薹立ちもとても早かった。去年のこぼれ種から遅れて発芽したものにはこの現象は見られなかったため、6月の日照不足が原因だったのかもしれない。薹の部分を切り落として出てきた小ぶりの新葉を集め細々と出荷を続けていたのだが、7月に入ると小さな蛾が飛び交うようになった。これはコナガ(小菜蛾、Plutella xylostella)ではないかと考えたのだが、コナガは広食性とはいえ基本的にアブラナ科の植物を食害する。しかし、コナガはヒユナを食害すると書いてあるサイトもあった。
困ったことになったと頭を抱えた。何しろ、コナガはほんの小さい蛾にもかかわらず、多くの農薬に対して抵抗性を発達させた、もっとも防除が難しい虫の一つである。ただ飛び方に幾分違和感があったので、昨日飛んでいる親を捕まえてみたところコナガではない。シロオビノメイガのようである。シロオビノメイガなら納得がいく。この蛾はホウレンソウ、フダンソウ、アカザ、などのアカザ科植物、ハゲイトウ、ケイトウ、アオビユ、イヌビユなどヒユ科植物を食害するガであり、ヒユナについてもおかしくはない。
ヒユナはさほど一般的ではない野菜であるため、登録農薬が少ない。これをコナガが食害するのであれば、手の打ちようがなさそうだ。しかし、シロオビノメイガであればBT剤が使えるかもしれない。来年、もう一度ヒユナの栽培にトライしよう。