お得は嫌い

 先日、新居に対する電話回線の新設とネット回線の工事申し込みを行ったのだが、その異常とも思える“お得な”という形容詞付きのオプション群とその複雑さに感動した。こちとら、ネットで映画を見るつもりはない。料理のレシピなどいらない。なんとかサービスも不要である。基本的なネットの利用とメールができれば用は済む。日本と云う国の住民は、いつからこんなに“お得”が好きになったのだろう。他社と比べてお得です。契約すると、5年間はお得な料金で使用できます。これとこれを組み合わせると、もっとお得です。聞いているうちに、嫌になってきた。私はポイントカードが嫌いである。ここで買い物をすると、後でこんなにお得です。だからうちに来て下さいねというわけだ。しかし私は、いま買い物をしている客にサービスしろよと思うのである。ポイントカードで客を囲い込んでいると思っているかもしれないが、全部の会社がポイントカードを発行して似たサービスを実施すれば、ポイントカード発行の手間だけが残るだろう。それよりも今ここで買い物をする客を大事にすべきではないかと思うのだが、そう考える経営者はいないのだろうか。

 昔の事を思い出した。大学に在籍していた頃の話だが、年中行事の中でもオープンキャンパスは重要な行事として位置づけられていた。18歳人口の急減を見越した学生募集の手段として、この行事を否定するつもりはなかったのだが、しばらく経った頃からだんだんと異常さが目につくようになってきた。大学が矜持をかなぐり捨てて、高校生に媚びはじめただけでなく、参加者に対する土産物の豪華さを競うようになってきたのである。大学を見に来るのではなく土産をもらいにくる高校生が目に付くようになった。母親の運転する車に2〜3人の高校生が乗り、近隣の大学を回るのである。物貰いご一行様の車内には、各大学のロゴが入ったお土産袋が乱雑に積んである。近くのコンビニのゴミ箱に、大学案内がまとめて捨ててあった。まるでスーパーの安売り会場周りと同じである。こんな時にこそ、各大学が品格ある談合をしてお土産競争を控えるべきだと思うのだがなかなかそうはいかないようだ。

 ここで使われるお金は、現在在学している学生が納めた学費であり、私学助成という名目で文科省から配分される国民の税金である。それを来るかどうかわからない高校生にばらまくのは筋の違う話であろう。いまいる在学生のために使うのが筋だと思うのだが・・・。

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