アイガモ

  田んぼの草取りである。除草剤は使わない方が良いのではないかというアドバイスをもらうことが多い。アイガモ農法が思いの外知られているらしく、アイガモを入れたらどうかともいわれる。確かに、上手くできればいいのだろうが、2つ問題がある。一つは水田の初期に入れるアイガモは、まだ幼い鳥である。幼鳥に対しては、田んぼの周りに網を張って逃げ出すのを防ぐだけでなく、イタチやカラス、野生化したネコなど捕食性の野生動物から守ってやらねばならない。土日の週末農民では、ちょっと以上に厳しい。

  いま一つは、私個人の問題である。現行の野鳥の会はあまり好きではないが、中西悟堂氏が主催していた頃の日本野鳥の会には参加していた。要するに小鳥が好きなのである。アイガモは人為的交雑種であり、放鳥することは禁止されている。ある程度大きくなると羽を切って飛べなくしなければならない。アイガモ農法で働いてもらったアイガモは、継続して飼うのは難しいらしく、秋には殺して食用にするのが一般的である。

  理解と納得は違う。たとえ、人為的交雑種であるから殺さなければならないという理屈は理解するにしても、それを自ら行うには心理的負担が大きすぎる。鳥として生まれた彼らに、大空からの世界を見せてやりたいと、切実に思ってしまう。誤解されると困るのだが、アイガモ農法に反対しているのではない。この農法に優れた点があることは十分認めているし、アイガモ料理が出れば、私も間違いなく食べる。他の方がおやりになるのに何の異論もない。ただ、秋になれば情の移った鳥たちを殺さざるを得ないという現実の下で、私がアイガモを飼うことは納得できないようだ。実に我が儘な1愛鳥家の感傷にすぎない。

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