ニュースの見方

 梅雨明け宣言が出されたそうだ。まあ、早めに出しておかないと7月半ば過ぎからだらだらと降り続けられると、梅雨明け宣言する機会を逸してしまう。一旦宣言を出しておけば、後は夏の長雨とか夏の豪雨とか云って済ますことができる。1993年は最悪だった。そして、気象庁は賢くなった。ほんのしばらく前までは(熊本の地震)、地震が起こったら、「今後一週間くらいは震度○○程度(起こった本震より震度を1〜2小さくした値)の余震に気をつけて下さい」と放送していたのに、近頃は震度を小さくすることなく報道するようになった。熊本の地震で学んだらしい。気象庁は賢くなった。昔は良かった。明日、北九州では晴れ後曇り、山沿いでは雷を伴い一時強く降ることがあるでしょう。地形を考えれば、日本中どこでも山沿いだ。そうか、明日は晴れか曇りか雨のどれかだなと、にっこりしていた。出かける時は天気予報ではなく天気図を見ていた。

 気象庁を批判しているのではない。自然界で起こることを正確に予想することを求める世論を揶揄しているのが本心だ。いま頭上に在る雨雲がどちらに向かってどんな早さで流れるかなんて、正確に答えることができると思っているのだろうか。大まかな方向は天気図を見ればわかる、でもそこに在る雨雲が山の向こう側を通るかこちら側を通るかは、通ってみないと判らないのが現状だろう。昨日、バタフライ効果について話していた人が、今日は雨雲レーダーが全く当たらんと嘆いている。これを理系の学問に触れることなく成長してきた若者が云うのであれば、今後の教育で修正できるかもしれないと思う。但し、予測・予知できないことを認識していながら、如何にもそれが可能であるかのような文章を書き、研究費を取り続けてきた研究者集団に対しては、怒りを通り越して幻滅を感じている。

 地震予知は色々な意味を持つ。何時何分にこの地方にマグニチュード○○の地震が起こると云う予知が出来れば良いのだが、これはまず不可能である。昔の地震予知連絡会はこのタイプの予知を狙っていたように思う。その幻想を基に長い間研究費を貪ってきたのだが、2011年の東北大震災さえ予知できず、さすがに化けの皮が剝がれてしまった。私は、以前から余震予知連絡会と揶揄していたのだが、地震が起こった時その後に起こる余震を一寸小さめマグニチュードにして発表するだけだった。いまは一寸変わったな。余震の震度を本震に合わせるようになった。さらに、地震後知を含めて再生したようだ。

 地震予知に関しては無理であるという結論に至ったらしく、各地方で起こる地震の可能性を何年以内に何%と云う表現にしたことである。これは賢いやり方で当たっても当たらなくても当たったことになるという奇妙な予知である。今後30年間に地震が起こる確率は70%であると予知しておけば、起こった場合は「ほら起こったでしょうと言えるし、起こらなかった場合も30%の確率があったのだから間違いではない。この間、ひずみはたまり続けていますので、次の30年間の発生確率は85%になりますと言っておけば良い。それでも起こらなかったら? 昔の発生確率を出す計算式のパラメーターがムニャムニャと言えば済むだろう。何しろ、その頃には連絡会委員は全部変わっているからだ。

 地震後知、なんだそれは?聞いたことがないと思う人も沢山いるだろう。緊急地震速報を凄い進歩と考えている方を時々見かけるが、それが地震後知である。地震が起こる。大きな被害を起こす地震の起こる深さは10Km程度のものが多い。そこで地震が起こると、地震波が発生するのだが、地震波には縦波であるP波と横波であるS波があり、P波の伝達速度は6~7 Km/秒、S波の伝達速度は3~4Km /秒である。P波が初期微動を起こしS 波が主要動を起こす。震源近くに在る測定地点ごとの2つの波の到達時間の差から震源を割り出し、得られた震源の位置からの距離によって、他の地点への地震動の到達時間を計算し警報を出す。その警報が緊急地震速報である。

 つまり、緊急地震速報は地震が起こった後にしか出せない地震後知警報であると言うことだ。困ったことに、最も被害が大きいであろう震源の真上では警報より揺れが先にやってくる。安全な遠距離の地点では、対応する余裕時間をもった警報がやって来るのである。どこか矛盾しているように感じるが、現実はそうである。このシステムは首都直下型地震には対応出来ないだろうし、東南海地震で最も被害が大きいと推定されている高知県でも間に合うかどうか疑問である。ミサイル防衛システムは近距離で撃たれたミサイルには対応できないが、遠くから打たれたミサイルであれば機能する余裕があるかもしれないと言うことと同じである。

 批判ばかりしているようだが、色々な地震対策システムがあるとは言え、それらに頼り過ぎるのはいけないと言っているだけである。自らの経験と知識と漠然とした予知能力(第六感)を使って生き延びるしか方法はない。ニュースをニュースの中に入って読むのではなく、ニュースの外から眺めると言う読み方が必要だろう。例えば、昨日のヤフーニュースを引用する。

「10センチほど隆起で車4台が損傷 中央道韮崎IC‐須玉IC間に段差 道路のアスファルトのつなぎ目部分

山梨県北杜市の中央道で道路の一部が10センチほど隆起して段差になり、走行した車4台が損傷していたことが分かりました。

10センチほど隆起で車4台が損傷 中央道韮崎IC‐須玉IC間に段差 道路のアスファルトのつなぎ目部分

6月29日午後3時ごろ、北杜市明野町の中央道下り線で道路のアスファルトのつなぎ目部分が隆起し段差になっているのが見つかりました。

中日本高速によりますと段差は高さおよそ10センチ、長さ7メートルほどで走行車線と追い越し車線にまたがっていたということです。

この段差により走行した車少なくとも4台が損傷しました。

けが人は、いませんでした。

段差が見つかったのは須玉インターからおよそ2.4キロの場所です。

中日本高速では29日に韮崎インターから須玉インターまでの下り線を およそ8時間通行止めにして段差を取り除く作業をしました。

現在は復旧しています。        テレビ山梨」

 何とも生硬な日本語でAIが書いたのかななどと邪推したのだが、それはそうとして記事には何故と言う問いかけがない。午後3時頃であれば、暑さのために熱膨張した路盤が両側から押され継ぎ目部分が隆起するという可能性は認める。もしそうなら他の部分にも何らかの異常が起こっていても不思議ではない。だが、そうした報告はないようだ。路面部分だけの問題なのか、それとも橋脚自体が隆起したのかで、かなり判断に差が出そうに感じたのである。後に続くニュースがその内容を伝えてくれればいいのだが、多分この程度の事件であれば、原因についての報道はないだろう。

 さて、この隆起が起こったのが北杜市明野町の中央道下り線で韮崎IC‐須玉ICの間である。ここはフォッサマグナ(大地溝帯)のど真ん中に位置する。ここから北に向かって日本海に入れば、先日震度5弱を記録した地震の発生地、その北側には近頃地震活動が活発な珠洲市周辺が存在する。南に下がると何となく異常な駿河湾、それに続いて活発な火山活動が続いている小笠原列島が存在する。千葉県辺りもスロースリップ現象が起こっている。それらの活動を眺めながら今回の異常を見ると、地盤そのものの隆起もあり得るかなと感じる。だからといって、危ない危ないとは叫ばない。その程度の異常は常にどこかで起こっている。

 ではどう考えるか。私が現地付近に住んでいるとすれば、一寸気になるな。水だけは一週間分くらい買っとこうか。保存食と家族の連絡方法のチェックもしとこうかと言う程度である。年中、来るか来るかと緊張して暮らすのでは身が持たない。でも、突然の地震で驚かされるのはいやだから、起こった時は、来たか、さてどの選択肢を採用して動こうかと、その行動の選択肢だけはインプットしておく。それだけである。時々起こる地震ごとに、備蓄品(大した量ではない)をチェックし、賞味期限が近いものから消費して補充しておく。相手は天変地異、こちらの都合に合わせてくれる筈はない。起これば驚くかもしれないが、驚かされるのは避けたい。驚かされた場合は、適切な行動が取れない可能性が高いからである。国や地方自治体には、報道に乗せることのできない限界があるため、全面的に依存することは危険である。緊急時の心の用意のためにニュースを使いたいと思っている。

 

 

 

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