雪で困っている地方の人を揶揄するつもりは欠片もない。高齢化が進んでいる地方において、雪かきや雪下ろしが重労働というだけでなく危険な作業に変貌している事も理解している。その上での話である。7日にJR北海道が札幌発着便を全面運休した。思い掛けない大雪であったことが原因だとされている。札幌市中央区の積雪量のデータを見てみると、確かに昨年の2倍程度の値を示している。その割にはマスコミが騒がない。台風や豪雨の時は、30年に一度、50年に一度、未曾有のなどという形容詞を付けて騒ぐのに、何で騒がないのかと考えていた。
24時間の降雪量が60センチで統計開始以来最多と報じているTV局もあるが、札幌の過去30年間の平年値と比べれば3〜4割おおいとはいえ、突出した値ではない。https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/nml_sfc_3m.php?prec_no=14&block_no=47412&year=&month=01&day=&view=p1 では何が起こっているのかと考えたのだが、思い当たるのは行き過ぎた合理化ではないだろうか。2020年11月におけるJR北海道の無人化駅比率は71.3%で365駅に上る。赤字路線の廃止、乗降客の少ない駅の廃止と無人化を続けてきた結果である。だからといってJR北海道を責めても改善する話ではない。偏に人口密度、つまり利用者数の問題である。無人の368駅であっても1駅あたり3人が勤務していたとすれば1,000人以上の人が減っている事になる。
何の問題もない温暖な季節であれば人減らしは収支の改善に有効だとは思うが、一旦大雨が降ったり大雪が降ったりした場合、残った人員ではやり繰りができなくなっているのではないか。社会性昆虫であるミツバチやアリにおいて、働きバチや働きアリの2割しか働いていない、残りはサボっていると云われるが、一旦事ある時は残りの8割が働き始めるのである。豪雪に見舞われた時、廃止された駅に勤めていたであろ職員は駅周辺の除雪やポイントの凍結防止、乗降客への連絡など、大事な役目を果たしていたはずである。こうした予備の労働力を削ぎ落とした付けが回ってきているように見える。つまり、この現象は今年だけの問題ではなくこれからも続いて行く、いやもっと酷くなると推測する。同じ現象はJR四国やJR九州でも起こるに違いない。
人口が減り始めただけでな、大都市への集中が止まらない状況をみると、国鉄への再統合をしない限り地方線の衰退と廃止は止めようがないだろう。ここ2年はコロナのに問題で状況が変わっている云え、JR東海、JR東日本、JR西日本、JR貨物が黒字で、JR四国、JR北海道、JR九州は常に赤字と云う構造を変えないと国の形がおかしくなってしまう。国鉄の分割論議がなされていた頃、私は懐疑派であった。動労と国労による労働争議が度を過ぎていただけでなく、処理できないほどの累積赤字が膨れ上がっていたことには同意するにしても、その問題への対策が国鉄の分割民営化であるとは思えなかった。権力を失いつつあったとはいえ、田中角栄は非分割民営化の道を探っていたと記憶している。1987年に中曽根内閣の下で行われた分社化によって、鉄道線路は繋がったまま分断された訳である。この時10万人近い人が余剰人員として解雇されている。私見だが、新自由主義の目指す所とは異なるが社会インフラの維持と管理については、リダンダンシー(冗長性)の確保が必要だと考えている。さらに、分割民営化の結果として、地方では災害による被害の復旧に必要なほんの数億円お金が捻出できず、赤字路線が次々と廃止され続けている。原油の急騰をみるまでもなく、過度に物流をトラックやバスに依存するのは危険だなと感じる今日この頃である。老人の繰り言だと言われるかもしれないが、コストと収益を無視した結果が現実化しているのだろう。