台風8号

台風8号

  気象予報士は、防災情報と密接な関係を持つ気象情報が、不適切に流されることにより、社会に混乱を引き起こすことのないよう、気象庁から提供される数値予報資料等高度な予測データを、適切に利用できる技術者と定義されている。簡単にいえば、天気予報を出すことができる資格と考えてよい。TV局も天気予報を担当する職員に気象予報士の資格をとらせているようだが、発表した予報に対して責任が伴うため「気象庁の発表によれば」という枕詞をつけて広報しているだけのようである。

  従って天気予報に出没するお姉さん方に大きな期待はしていないが、今回の台風8号に対しての報道はなんとも理解し難いものであった。万一の場合の責任回避を前提にした、横並びの煽り報道であったように見える。沖縄と宮古島の間を抜けていった時(7月8日00時)は、中心気圧930 hPa、最大風速50 m/sec、暴風域の半径が250 Kmであり確かに大型で強い台風であったことは認める。ところが、30時間経った9日の午前6時の記録を見ると、暴風域の半径は変わらないものの中心気圧は950 hPa、最大風速は35 m/secに低下している。9日の15時では970 hPa、30 m/sec、10日の午前零時は975hPa、25 m/secまで衰弱している。この時点で、太平洋岸あるいは梅雨前線沿いの大雨に対する警戒が必要であることは当然だが、風の被害はそれほど気にしなくて良いと判断した。ところが、この後の台風のデータが面白い。天草の南端に上陸した10日の6時のデータを見ると、980 hPa、25 m/sec、強風域半径(暴風域は消滅)が450 Km、九州を横断して西都市の近くに達した10日の9時のデータを見ると、985 hPa、25 m/sec、強風域半径が450 Kmとほとんど弱くなっていない。

  通常、九州を横断するとかなり勢力は落ちるはずである。この台風の場合、気圧が少し落ちているだけで残りのデータが同じとは何だか信じられない。さらに、この暴風圏なしの台風が太平洋岸を進むのだが、7月11日の6時まで全く同じデータが続くのである。まあ、日本近海の海面温度が高かったかのかもしれないが、7月10日の福岡市においては、小学校、中学校、高校は休校で、町にはたくさんの児童生徒が溢れていた。

  ここに示した図は台風8号の中心気圧を経時的に見たものである。時間軸がUTC (協定世界時) であるため日本標準時にするには9時間を足さなければならないが、7月9日の段階で勢力の低下が明らかである。人工衛星から見た赤外線写真を見ても、10日の午前6時にはもはや目の判別ができなくなっている。気象予報士の中で、異論を呈する人はいなかったのだろうか?

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台風の中心気圧の経時変化

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人工衛星から見た10日の午前6時の赤外線写真

  思うに、最初に「今世紀最強の」とか「最大瞬間風速は75 m/secに達する」とか、余りに煽りすぎて、手じまいに困ったのではないかと「ちょっとだけ」疑ってしまった。気象予報士が広報担当者になってしまっている現実が、浮き彫りにされたように感じている。結論は、気象予報士制度が本来の目的においては機能していないということだろう。

  なぜ天気図を、そんなにしつこく見るのかって?農民にとっては、普通の農作業だけでなく、田んぼの水管理、薬を撒くタイミングなど、どの程度の風が吹くか、雨が何時、どれくらい降るかが考える始点になるのです。

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