田植えふたたび

  今年は約6反の水田に苗を植えた。とはいっても苗はJAに育ててもらったし、代かきの仕上げはやはり師匠がやってくれた。余りに下手な仕上がりでは、師匠の沽券にかかわるのかもしれない。昨年までは、3反弱の人目につかない山あいの水田だけだったが、今年からは、ほぼ同じ広さのもう一枚の田んぼを耕作することになった。

  前にも書いたが、田んぼ銀座とよばれる場所である。下手な代かきをしていると、耕耘機の回転速度が速すぎる、耕耘深度が深すぎるとか、排水管のふたが閉まっていないとか、コース取りが不適切であるとか、周りの人達がわざわざ自分の作業を止めてアドバイスをしてくれるのである。実に有り難い。

  水路整備などで顔を合わせているとはいえ、町中では有り得ない風景であろう。こちらはまだ相手の名前も、どの田んぼの所有者であるかも全く知らない。しかし、相手は全てをご存じの様子で、もう一枚の田のやり方まで教えてくれる。情報戦で完全に敗北しているようだ。

  人によっては、ここでは稲を作るより、野菜を作った方が収益が上がると、経営指導までしてくれる。もちろん、全部の意見を無定見に受け入れるつもりはない。私には私の考えがあり、私の計画がある。しかし、私の目論見は現場を知らないが故に、机上の空論的な部分があることも否めない。近所の人々の意見は、そこを的確に指摘し、補ってくれるのである。知識と知恵の違いを感じながらの生活は適度に刺激的である。さらに、無知に起因するあほらしい作業をやってしまったとしても、飯はうまいしビールもうまい。

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