体内と体外

   世の中の多くのヒトが、胃の中や腸の中は身体の中だと誤解している。私自身、全く同じ誤解ではないとは云え、似たような感覚を持っていた。細菌(古細菌を含む)や酵母が、酵素を体外に分泌して栄養分を分解し分解産物を吸収する生き方は、ロスが多いなと感じていたのである。それに比べ、「真核生物になると、ゾウリムシやアメーバであっても体内に取り込んで消化・吸収するという効率的な方法を編み出している」と脳天気に考えていたのである。

  しかし、ゾウリムシは体内に食物を取り込んではいないのである。彼らは、食胞という形で体内に体外を作り、そこで消化を行っているのであって、食物を体内に取り込んでいるのではない。食胞とは入り口と出口の閉じた胃袋である。その内部は外部であって、必要時には外界に向かって開口しモノの出入りを行うのである。

  よくよく考えてみると、細胞外に酵素を分泌して食物を分解するという行動は、高等動物でも細菌でも変わらない。高等動物は、一見食物を独り占めして有利であるように見えるが、使える酵素は自分の持つ酵素のみである。細菌の場合、周囲にいる仲間の酵素が働いた産物も吸収できる。異種のバクテリアやカビと生態系をつくって共存している場合、他種の分泌する酵素類の助けにより、一種では利用できない化合物でも利用可能となる可能性が出てくる。共存という現象により利用できる食物の多様化が起こると、生存域の拡大が可能になるに違いない。このような現象を定義するとすれば、共存ではなく協存(Cooperative survival)という用語が適切かもしれない。もちろん勝手につくった用語です。

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