ハチミツ中毒

2014/1/6

  しばらく書くのが空いてしまった。一昨日だが、東南アジアで購入した蜂蜜を食べた事によるグラヤノトキシン中毒のニュースがあった。呼吸困難、視覚異常、歩行困難の症状が報道されていたが、原因はグラヤノトキシンⅠ(アセボトキシン)と呼ばれるツツジ科の植物によく含まれる化合物という。中近東においてはかなりよく見られる中毒のようで、アザレア、キョウチクトウの花蜜から得られたハチ蜜を食べて、中毒する例が良く知られている。

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  と書くと外国の話だと思われるかもしれないが、グラヤノトキシンⅠ即ちアセボトキシンは、奈良公園に沢山ある馬酔木(アセビ or アシビ)の毒性分である。アシビはツツジ科に属する植物で、アシビ以外にもホツツジ、イソツツジ、ハナヒリノキ、レンゲツツジ、ネジキなどが、グラヤノトキシン類を含む有毒植物として知られている。

  鹿はアシビに毒があることを知っているのかどうか判らないが、とにかく馬酔木を食べない。馬やヒツジは、これを食べて中毒を起こす。中毒を起こすと歩行が困難となる。これが語源となって「馬酔木」という命名がされたらしい。

  さて、ツツジは「躑躅」と書く。そういえば戦国時代、武田氏の居城も「躑躅ヶ崎館」であった。絶対書けない字の代表みたいな字であるが、蓮華躑躅、灯台躑躅と書いてあれば、レンゲツツジ、ドウダンツツジと読めないことはない。では躑躅とはどういう意味か。両方の字に足偏がついていることを見ると、歩行に関係があるかもしれないと思い、漢和辞典を覗いてみた。読みは「テキチョク」、意味は「足踏みをすること、ためらう、躊躇すること」であった。動物がこれを食べ、うまく足を運べなくなった状況を意味するらしい。馬酔木の命名と同源で納得である。

  昨年の春、わが家の庭にも馬酔木の花が咲いていた。研究者として一度は味わっておきたいと思っていたので、数枚の葉をちぎり味わってみた。口に入れただけでは、全く味も香りもしない。ひんやりしただけである。そこで、少しずつ葉っぱを噛んでみたのだが、すぐにかなり強い苦みを感じた。通常、苦みは舌の奥の上面部分で感じるとされているが、この苦みはそこだけではなく、舌の全面、特に側面の部分でも強く感じたと記憶している。数分ほど噛んで吐きだしたのだが、思ったよりも爽やかな苦みであった。苦みの持続時間は、センブリ(苦さで有名なリンドウ科の植物)より短いようだ。次は、満天星(ドウダンツツジ)を味わってみるつもりである。

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