漏れ

  近頃、マスコミにおける言葉の使い方が気になってしかたがない。一番酷いのは“安全”と“対策”という言葉だが、これについては別に書く機会があるかもしれない。今回は、近頃目に付くあまりにも酷い“漏れ”という言葉の使い方について述べてみよう。2チャンネルには独特の“漏れ”の用法があるようだし、“漏れ”すなわち汚染水漏れのことを思い出されるかもしれないが、その話ではない。

  JR北海道の、ポイント2,100カ所の調査漏れという記事を見た。しかし、これはおかしい。JR北海道は、「ポイント調査は対象外であると判断して調査しなかった」と言っているのだから、調査漏れではなく未調査あるいは未点検と書くべきであろう。

  “漏れ”とは、沢山やった上でそのいくつかに見落としがあったことを意味するのではなかったか。点検項目が沢山あって、その1項目であるポイント調査漏れていたともれたということであれば、ポイントの調査が漏れていたとして、記事内容に2100カ所という内容を書くべきではなかったか。

  この言葉遣いの予兆というか前触れは、高速増殖炉“もんじゅ”に関する報道で感じていた。昔のことで詳しい日時は憶えてないが、日本原子力研究開発機構は2012年の11月に、2010年の7月以降、延べ9679件の設備点検を怠っていたという発表をした。マスコミの多くが9679件の点検漏れと報道した。現在では“点検漏れ”の件数はまだ増えて、14,000件を越えていると報道されている。

  1万件を遙かに超える「点検漏れ」という発想は、なかなか大胆なものである。記者会見で、全体の点検箇所が何カ所あるのか、あるいは14,000件は全体の何パーセントに当たるのかという質問はなかったのだろうか。なかったとすれば、出席した記者の脳みそは腐っている。

  10月31日のM新聞で、「原子力規制庁は30日、日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅ(敦賀市)で、安全上最も重要な「クラス1」の機器14個を含む15個が今年2月から約半年間、必要な点検がされていない状況にあったと発表した」という記事があった。ところが記事の見出しは「もんじゅ:15機器、半年点検漏れ 時期を誤る、保安規定違反」となっている。危機感において、見出しと内容にかなりな落差が存在する。さらにここでも、全体数が示されていない。

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