偽装

偽装

  いま、アブシジン酸のブログは「沈思黙考」という章名で書いている。もう少しこの章が続く予定だが、次の章のタイトルは「偽装隠蔽」とするつもりであった。ところが、偽装隠蔽は世の流行語になってしまい、何となく使いにくい状況になってしまった。食品偽装については、阪急阪神ホテルズ、R四国系のホテルクレメントグループ、ホテルコンコルド浜松、ルネサンスサッポロホテルなど数多くあって、話題には事欠かない。嘘がいけないことは当然である。だが、この報道の中には私に理解できない問題が含まれている。食品偽装なんて、世界中で昔からあったことで別に驚くことではないし、いまの鮮魚店では、似た魚に日本古来の名前を付けて売るのは当たり前のことである。さらに、ミシュランの星などというものがどうせその程度のものであり、あれを有り難がる風潮も全く理解できない。他人と私は、生きてきた歴史が違う。食べてきたものが違う。旨いと感じるものも違う。私が旨いと感じるものが旨い。それで良いではないか。

  それは横に置いて、私が理解できないのは結婚式の料理で偽装があったと、結婚式を強調したような報道である。大学に勤めていたため、卒業生の結婚式には数多く出席した。かなりの割合が、ホテルに設置されたチャペルでの結婚式である。本人達はクリスチャンでもプロテスタントでもないのに何でと思わぬではなかったが、宗教抜きであのスタイルに憧れただけのことだろう。日本人特有の無宗教という割り切りで、スタイルだけを取り入れる。クリスマスと同じである。個人的には疑問を感じないでもないが、私の意見で他人の行動を縛るわけにはいくまい。

  問題はホテル側にある。式を仕切る神父(司祭といった方が正しいのかな)あるいは牧師の中に、かなりな割合で偽物がいるという。日本人の中でキリスト教徒は1%前後である。教会の数はいくつあるのだろう。結婚シーズンの日曜日、分刻みで並んだ結婚式を本物が捌いていけるとは思えない。そもそも日曜日は礼拝の日ではないか。結婚式を成立させる最低限の条件は、(神と)神父あるいは牧師と結婚する二人であろう。料理なんて二の次以下でよい。二人の結婚を神の名において認めるその神父あるいは牧師として、真っ赤な偽物を出演させていることの方が、よほど悪質な偽装だと考えるのだが。まあ、結婚する方もニセキリスト教徒であれば、痛み分けか。ちなみに、聞いたところによると、アルバイト代金は時間給としては悪くない。

  少しだけ時代に先行したミートホープや船場吉兆は倒産してしまったが、赤福と石屋製菓は生き延びた。今回はどういう結末になるのだろう。

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