A 氏 死す

 政治にかかわるのは嫌いなので、本音では書きたくないのだが、ほんの最近まで首相をしていたA 氏が銃撃されて死んだとなっては一寸だけコメントしておいても良いだろう。

 著者も、日本人として亡くなった方を罵倒するようなことは書きたくない。ましてや、死んで良かった良かったなどという言説とは一線を画しておきたい。また、状況がわからないのに、想像であれこれと書くことも控えたいと思う。まず、政治信条においては、A 氏とは遠いところにいたとはいえ、ここに哀悼の意を表しておく。

 そこでである。基本的には警察からの発表を認めるところから始めるしかないだろう。加害者であるI 氏の供述について、捜査関係者に以下のように発表している。

 「母親は熱心な統一教会の信者で、今も現役のようだ。山上容疑者は母親と統一教会の関係が家庭崩壊につながったと憎悪を募らせ、犯行に及んだと供述している。母親については調べを進めているが、かなり熱心な信者であったとみられる。犯行前日には、安倍氏が岡山県で演説をすると知り、追いかけて行っている。パソコンやスマホには拳銃、爆発物を検索した履歴がかなりある。計画的な銃撃とみられるが、意味が通じない供述もある。」

 「統一教会と安倍が親しいので狙った。殺してやると銃を持ち出した。ネットで毎日、参院選の予定を調べていて、奈良にきたのでチャンスだと思った」

「政治的な意味合いで狙ったのではない」

「自宅でこれまで、拳銃、爆発物など複数作っていた。インターネットなどから、調べて作った」

 その他にも色々と詳細な話が出てはいるが、少なくとも上の話を補強する内容のものが多い。これを前提に考えれば、これはテロではなく怨恨による殺人事件として捉えるべきだろう。マスコミでは、この事件を民主主義への挑戦でありテロであったかのように扱い始めているが、彼の供述の中にテロ的色合いは全くない。

 上記の警察関係者の発表で統一教会とでているので、統一教会と書くが、この宗教団体を日本に引き入れたのは安倍首相の祖父である岸信介氏である。岸氏は、韓国において広がり始めていた統一教会が強い反共的性格を持っていたことから、この団体を日本に囲い込み左翼的色合いの強かった日本の学生運動・労働運動と対峙させる道を選んだのである。我々が大学生だった頃、学内には原理研究会というクラブ活動擬のグループが跋扈していたし、国際勝共連合という団体の活動も活発だった。ただ、狂信的なところがあり霊感商法で信者に高価な壺や書籍など売り付けるという批判は存在していた。普通の方々であれば、数百人を集めての合同結婚式を行う団体といったほうが通りがいいかもしれない。

 要するにこの統一教会が入信した母親に多額の金銭を払わせたため、家庭の崩壊を招いた。その恨みを、統一教会の広告塔的動きをしてきたA 氏にぶっつけたというストーリーである。であるとすれば、単なる怨恨による殺人事件ということになる。

 とはいえ、少しだけ疑問は残る。犯行現場における警固のあり方、犯行時のSPの動き、犯行現場の血液の量、倒れているA 氏の顔色、クライシスアクターらしき人の存在、犯行の時期、A 氏の演説場所の変更を何時知ったのか、背景を推理するいくつかのサイトが接続できない等々を基に、ジックリ考えれば様々な仮説を語ることは可能だが、どうだろう。

 問題はマスコミの過剰反応だろう。単なる怨恨による殺人事件であれば、この犯行を言論の自由への攻撃と騒ぎ立てる方が異常である。この犯人が言論の自由への攻撃と意識して犯行を行ったのであれば、その報道は必要だと思うが、本人ははじめから政治的な意図はないと供述している。現在、統一教会は3つのグループによる内紛が起こっていると聞く。彼の母親はその一つに属しているのだが、彼も別の会派に所属しているらしい。統一教会が反共的な組織であり、さらに彼自身が一時的にしろ海上自衛隊に属していたことを考慮すれば、左翼的心情でこの犯行を行うことは考え難い。

 この犯行をもたらしたものは、マスコミの強いものには巻かれ続け、報道しない自由に浸りきってきた報道にあると考えている。そうか、マスコミへは自身への批判が起こるのを防ぐために、この事件を政治的テロ、言論の自由への攻撃として煽っているのか。でもね、言論の自由の名を借りた報道しない自由を悪用し続けてきたマスコミこそが、この事件の原因であろう。

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